地殻変動に関する用語

地殻変動に関する用語
分類 用語 区分 説明

地殻変動
地殻に力が加わり、その力に応じて地殻が変形する現象のこと。
火山体では、地下のマグマの活動等に伴って、地殻に力が加わって生じる地盤の傾斜変化や山体の膨張・収縮のこと。
地殻の動きを連続的に観測することで、地下のマグマや熱水等の供給・移動によって生じる地殻変動を知り、噴火の前兆等の火山活動の推移を予想(評価)している。「地盤変動」ともいう。

傾斜計
地盤の傾斜を精密に計測する装置のこと。
火山体直下へのマグマの貫入等により山体の傾斜変化が観測されることがある。

radラジアン
角度を表す単位で、火山の観測では傾斜の単位に用いられる。
μradマイクロラジアンは1radの100万分の1で、1km先が1mm上下するような傾斜変化量である。

GNSS
全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite Systems)の略称。
GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称。
火山の地表の動き(地殻変動)を測定して、火山内部のマグマの動きを推定するために利用される。GNSS受信機を用いて地殻変動を観測する方法として、GNSS連続観測とGNSS繰り返し観測がある。
備考
  1. GNSS連続観測とは、観測点においてGNSS受信機を用いて連続的に観測することをいう。国土地理院では、全国約1,300ヶ所に観測点(電子基準点)を設置し、GNSS連続観測を行うことで、広域の地殻変動の監視を行っている。また、気象庁や国立研究開発法人防災科学技術研究所等は、火山周辺の地殻変動を監視するため、火山周辺でGNSS連続観測を行っている。
  2. GNSS繰り返し観測とは、マーカー、鋲(びょう)などを設置した観測点にGNSS受信機を再設置し、同一点での観測を断続的に繰り返すことをいう。GNSS連続観測は、地殻変動の推移を常時監視することを目的とし、安定した地盤にある構造物(ピラーなど)に常設したGNSSアンテナを用いて連続観測を行うのに対し、GNSS繰り返し観測は、火口付近などの狭い範囲におこる比較的大きな地殻変動を空間的により細かく明らかにすることを目的とし、火山活動の変化等に対応して、随時実施している。

伸縮計
地中の2点間の伸び縮みを観測する装置のこと。
複数点間の伸び縮みで山体の膨張・収縮を観測する。
2点間の距離が長いほど、ひずみの測定感度は高くなるが、通常20~30mの長さの計器が用いられる。

ひずみ計
地下の岩盤の伸び・縮みを観測する装置のこと。地下数百メートル程度の深さに円筒形のセンサーを埋設し、周囲の岩盤から受ける力によって火山体が変形する様子を極めて高い精度で計測し、ひずみを観測している。
備考
  1. ひずみは物体に力を加えた時に生じる形状変化(変形)のこと。地殻のひずみは、大きさを表す物理量(長さ又は面積、体積)について、単位量当たりの変化量の単位量に対する割合として測定される。無次元量であるが、ひずみであることを示すために単位にstrainを使用する。
  2. ひずみ計には、変形による体積の変化を測定する体積ひずみ計と、水平面内の方位ごとの変形の量を測定する多成分ひずみ計がある。

山体膨張さんたいぼうちょう
山体中におけるマグマや熱水の集積、揮発性成分の発泡などによって山体が膨張すること。

SAR
Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)の略。人工衛星や航空機などに搭載されたアンテナから電波を地表に向けて照射し、地表からの反射波を捉えることで、地形の形状及び性質を画像化することができる。

干渉かんしょうSAR
同じ場所を計測した時期の異なる2回のSARデータの差をとる(電波を干渉させる)ことにより、地表の変動を詳細に捉える手法のこと。InSAR(Interferometric SAR,InSAR)ともいう。
干渉SARではアンテナ-地表間の距離変化量が観測地域で面的に得られる。

基線長きせんちょう
GNSSなどの測地観測で用いられる基準点間を結ぶ基線の距離のこと。
特段ことわりのない限りは斜距離を指す。

光波距離計こうはきょりけい
光波を利用して反射鏡までの距離を測定する機器のこと。
山体の膨張や収縮による距離の変化を観測している。「光波測距儀こうはそっきょぎ」ともいう。

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