平成29年 No.42 週間火山概況 (10月13日~10月19日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

15日に霧島山(新燃岳)の火口周辺警報を切替え、大きな噴石及び火砕流に対する警戒範囲をこれまでの2kmから3kmに拡大しました(噴火警戒レベル3(入山規制)は継続)。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 10月19日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山*
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。
*2017年6月20日に活火山として選定された男体山については、準備が整い次第噴火予報(活火山であることに留意)を発表する予定です。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(10月19日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね100m以下で推移しています。また山頂火口では、高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映1)が観測されました。18日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量2)は1日あたり500トン(前回10月12日、2,000トン)とやや多い状態でした。
 山頂付近直下の火山性地震は、やや少ない状態で経過しました(図2)。火山性微動は少ない状態で経過しました。
 山頂の南南西にある塩野山の傾斜計3)では、西または北西上がりのわずかな変化が続いています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石4)に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石4)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年10月19日)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年10月19日)


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 7日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、変色水や海水面の低温部、浮遊物等は認められませんでした。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測で、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 7日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、観測中に噴火は確認されず、火口東側内壁から白色噴気が数m上がっていました。火口東側内壁の噴気帯周辺には、硫黄の析出と思われる黄色く変色した箇所が認められました。溶岩流先端の白色蒸気及び海岸線の顕著な高温部は認められなかったことから、溶岩流の海への流入は止まっているものと考えられます。また、西之島北岸から南東岸にかけて、幅100~150mの薄い黄緑色の変色水域が分布していました。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、8月11日以降火口からの火山灰や噴石の噴出は認められず、8月24日には溶岩流の海への流入も止まっていたとみられます。しかし、約1年半の休止期間の後、4月に噴火した経緯を踏まえると、今後も噴火が再開する可能性が考えられますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね50m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや多い状態で経過しました。火山性微動は少ない状態で経過しました。
 GNSS5)連続観測によると、島の隆起が継続しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 えびの高原(硫黄山)周辺では、硫黄山火口付近を震源とする火山性地震は少ない状態で経過していますが、火山ガスや熱水が関与していると考えられる浅い低周波地震が時々観測されています。火山性微動は観測されていません。
 監視カメラによる観測では、噴気が稜線上100mまで上がりました。
 硫黄山南西観測点の傾斜計で、4月25日から続いていた硫黄山方向が隆起する傾斜変動は、8月中旬から概ね停滞しており、特段の変化は認められません。
 えびの岳付近(硫黄山の南西3km付近)では、火山性地震が13日16時から22時にかけて一時的に増加し、その後も時々発生しています。この付近は2011年の新燃岳の噴火でマグマを供給したと推定される領域です。
 GNSS連続観測によると、7月頃から霧島山を挟む基線で、霧島山の深い場所での膨張を示すと考えられる伸びの変化が続いています。
 えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき6))に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←15日に火口周辺警報を切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)

 新燃岳では、活発な火山活動が続いています。
 11日から13日にかけて、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり800トンから1,400トンでしたが、15日には1日あたり11,000トンと急増しました。火山ガスの放出量が1日あたり10,000トンを超えたのは、2011年1月の本格的なマグマ噴火時以来です。また、火山性微動の振幅も15日午後から大きくなりました。これらのことから、今後更に火山活動が活発になる可能性があると判断し、15日19時00分に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を切替え、警戒範囲をこれまでの2㎞から3㎞に拡大しました。
 11日に発生した噴火は概ね連続的に17日未明まで続きました。この間の噴煙の高さの最高は、14日の火口縁上2,300mでした。噴火に伴う大きな噴石の火口外への放出や火砕流7)は確認されていません。また、新燃岳周辺では噴火に伴う鳴動が聞こえているとの情報がありました。
 火山性微動は、9日から概ね連続的に16日18時52分まで継続し、12日と14日の噴煙の活発化や15日の火山ガスの急増の前後では、振幅が大きくなりました。その後、19日06時00分以降も継続しています。新燃岳付近の火山性地震は、16日及び18日に多い状態となりました。
 傾斜計で9日の微動発生以降にみられた緩やかな変化は、新燃岳北西数kmの地下深くのマグマだまりの収縮と新燃岳付近のわずかな膨張を捉えていた可能性がありますが、17日以降は明瞭ではありません。
 火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、15日には1日あたり11,000トンでしたが、16日には1日あたり500トンと急減しました。
 13日に、宮崎県の協力により実施した上空からの観測では、火口内の東側から、白色の噴煙が火口縁上500mまで上がり東へ流れていました。火口内東側の火孔には特段の変化は認められませんでした。弾道を描いて飛散する大きな噴石は確認されませんでした。明らかに感じる程度の火山ガスの臭気が認められました。
 14日に実施した聞き取りによる降灰調査では、新燃岳周辺から北東側の宮崎県日向市(新燃岳火口から北東約90km)までの広い範囲で降灰を確認しました。
 えびの岳付近(新燃岳の北西6km付近)では、火山性地震が13日16時から22時にかけて一時的に増加し、その後も時々発生しています。この付近は2011年の新燃岳の噴火でマグマを供給したと推定される領域です。
 GNSS連続観測によると、7月頃から霧島山を挟む基線で、霧島山の深い場所での膨張を示すと考えられる伸びの変化が続いています。
 新燃岳火口から概ね3kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。風下側では、火山ガスにも注意して下さい。また、地元自治体等が発表している火山ガスの情報にも留意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火活動が続いています。
 昭和火口では、噴火が5回発生しました。爆発的噴火は発生していません。噴煙は最高で火口縁上1,800mまで上がりました。
 南岳山頂火口では、噴火は観測されていません。
 16日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり800トン(前回9月19日、300トン)と、やや少ない状態でした。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。噴火に伴う火山性微動が発生しました。
 姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、火山性地震は概ね少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 新岳火口では、白色の噴煙が火口縁上100mまで上がりました。
 GNSS連続観測では、火口を挟む基線で収縮が認められています。
 2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低いものの、噴煙量や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、引き続き噴火が発生する可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では、噴火活動が続いています。
 御岳(おたけ)火口では、監視カメラによる観測では噴火が観測されていませんが、十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、13日に火口から南南西4kmの集落で降灰が確認されました。また、夜間に高感度の監視カメラで火映を時々観測しました。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
2) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
3) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
4) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
5) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
6) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
7) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (10月13日~10月19日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
10月15日 19時00分 霧島山(新燃岳) 火口周辺警報 火口周辺警報切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
10月14日 08時36分
10月14日 15時17分
霧島山(新燃岳) 降灰予報(速報) 噴火発生から1時間以内に予想される降灰量分布や小さな噴石の落下範囲を予想
10月14日 08時48分
10月14日 09時15分
10月14日 15時34分
10月14日 16時06分
10月14日 21時30分
10月15日 03時15分
10月15日 09時15分
10月15日 15時16分
10月15日 21時44分
霧島山(新燃岳) 降灰予報(詳細) 噴火発生から6時間先までに予想される降灰量分布や降灰開始時刻を予想
毎日 02時から3時間毎に8回 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)
霧島山(新燃岳)
桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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