平成29年 No.6 週間火山概況 (2月3日~2月9日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

7日に阿蘇山に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 2月9日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、浅間山、御嶽山、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、新潟焼山、焼岳、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(2月9日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 監視カメラによる観測では、引き続き湯釜北側噴気地帯の噴気孔から噴気が認められており、湯釜火口及び水釜火口周辺の熱活動が高まった状態は継続していると推定されます。全磁力観測1)によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示唆する変化は、2014年7月に停滞したものの、温度低下を示唆する変化には転じていません。また、東京工業大学によると、2014年以降、火山ガス成分や湯釜湖水の化学組成は火山活動の活発化を示す状態が確認されています。
 なお、東京工業大学の監視カメラ(湯釜火口内)では、火口内に特段の変化は認められません。火山性地震は少なく、地殻変動観測に特段の変化は認められません。
 小規模な噴火が発生する可能性があるため、湯釜火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。また、ところどころで火山ガスの噴出がみられ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で経過しています。7日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量3)は1日あたり1,500トン(前回1月31日2,200トン)と多い状態が継続しています。山頂火口では、高感度の監視カメラで確認できる程度の微弱な火映4)が5日に観測されました。
 山頂直下のごく浅い所を震源とする火山性地震は、多い状態で経過しています(図2)。火山性微動は観測されていません。
 GNSS5)連続観測では、特段の変化は認められていません。2015年6月上旬頃から12月にかけて、山頂の南南西にある塩野山の傾斜計6)でみられていた北または北西上がりの緩やかな変化が、2016年12月頃から再びみられています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年2月9日)
(矢印はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年2月9日) (矢印はごく小規模な噴火を示す)


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね200m以下で経過しています。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。
 GNSS連続観測によると、2014年10月以降、山体付近の収縮によると考えられる縮みの傾向がみられています。
 2014年10月以降噴火の発生はなく、火山活動は緩やかな低下傾向が続いていますが、山頂火口の噴煙活動や地震活動は続いているため、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るため注意してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 これまでの海上保安庁や気象庁などの観測によると、2015年11月下旬以降、噴石等を放出する噴火や溶岩の流出はいずれも確認されていませんが、一方で、火口付近には高温領域が引き続き確認されています。火道域に海水が浸入した際には小規模な噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね500mの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また、これまでの噴火で流れ出た溶岩は、内部が高温になっていると考えられるほか、海岸部では崩れやすくなっていますので、火口から概ね500mを超える範囲でも注意が必要です。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は、1月31日から2月2日まで増加していましたが、今期間はやや少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 監視カメラでは特段の変化は認められません。
 GNSS連続観測によると、地殻変動は隆起及び停滞を繰り返しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 3日に海上自衛隊第1航空群の協力により実施した上空からの観測では、火口内で消散する程度の噴煙が認められ、西側斜面の割れ目付近でも引き続き弱い噴気が認められました。
 8日に実施した現地調査では、前回(2016年12月24日、25日)と同様に、火口内で消散する程度の噴煙と西側斜面の割れ目付近で弱い噴気を確認しました。また、赤外熱映像装置による観測では、火口内に蓄積された溶岩、火口壁及び西側斜面の割れ目付近で熱異常域7)を確認しました。傾斜計では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 GNSS連続観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2015年1月頃から停滞しています。また、新燃岳周辺の一部の基線では、わずかな伸びの傾向が認められていましたが、2015年10月頃から停滞しています。
 新燃岳ではこれまでにも火山性地震が時々発生しており、火口内及び西側斜面では弱い噴気や熱異常域が確認されていることから、今後の火山活動の推移に注意してください。
 新燃岳では火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性がありますので、新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき8))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火は観測されていません。
 南岳山頂火口では、白色の噴煙が最高で火口縁上300mまで上がりました。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過しています。
 3日に海上自衛隊第1航空群の協力により実施した上空からの観測では、昭和火口及び南岳山頂火口が閉塞していることを確認しました。昭和火口の火口壁からは、火口内で留まる程度の噴気を観測しました。
 6日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1日あたり200トン(前回2月1日300トン)と少ない状態でした。
 GNSS連続観測によると、姶良カルデラの膨張を示す基線の伸びの傾向は、2016年11月頃から一部の基線で鈍化が認められるものの、継続しています。
 桜島の噴火活動は2016年8月以降低下していますが、姶良カルデラへのマグマの供給が継続していることから、火山活動が再び活発化する可能性があります。引き続き火山活動の推移に注意が必要です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき8))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 薩摩硫黄島では、噴火は観測されていません。
 白色の噴煙は最高で火口縁上400mまで上がりました。
 8日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり600トンと、前回(1月12日800トン)と同程度で、やや少ない状態でした。また、赤外熱映像装置による観測では、前回(1月10日)と比べ熱異常域の拡大や温度の高まりは認められませんでした。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 火山性地震が1月3日からやや多い状態で経過していたことから、火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があります。
 硫黄岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では降灰、風の影響を受ける小さな噴石及び火山ガスに注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、噴火は観測されていません。
 白色の噴煙は最高で火口縁上300mまで上がりました。
 7日に実施した現地調査では、前回(1月26日)と比べて噴煙及び熱異常域の状況に変化は認められませんでした。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低くなっていますが、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、引き続き噴火の可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、9日14時57分に爆発的噴火が発生し、灰白色の噴煙が最高で火口縁上700mまで上がりました。
 同火口では、期間を通して夜間に高感度の監視カメラで火映が観測されました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)]←7日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 阿蘇山の中岳第一火口では、2016年10月8日に噴火が発生して以降、噴火は発生していません。今期間、白色の噴煙は最高で火口縁上600mまで上がり、夜間に高感度の監視カメラで火映が時々観測されました。
 火山性微動の振幅は、概ね小さな状態で経過しています。火山性地震と孤立型微動9)は、少ない状態で経過しています。
 傾斜計では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。また、GNSS連続観測では、2016年7月頃から認められていた、草千里深部にあると考えられているマグマだまりの膨張を示す基線の伸びは、11月中旬以降は停滞しています。
 火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1月に入り減少し、一日当たり1,000トン以下となっています。3日と6日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたりそれぞれ900トン、1,000トンで、前回(1月26日800トン)と同程度でした。
 3日に実施した現地調査では、中岳第一火口内に緑色の湯だまりを確認し、湯だまりの量は中岳第一火口底の約8割でした。2016年10月12日の観測に比べると量は増加していました。赤外熱映像装置による観測では、湯だまり表面の最高温度は約40度で、前回(1月18日約40度)と同程度でした。
 以上のように、阿蘇山の火山活動は低下しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断したことから、7日14時00分に火口周辺警報を解除し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げました。
 活火山であることから、火口内では土砂や火山灰が噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。なお、地元自治体等が実施している立入規制等に留意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火山体の南側で全磁力を観測した場合、全磁力値が減少すると火山体内部で温度上昇が、全磁力値が増加すると火山体内部で温度低下が生じていると推定されます。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
4) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
5) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
6) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
7) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置とは、物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。
8) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
9) 阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0 秒、継続時間10 秒程度で、中岳西山腹観測点の南北動の振幅が5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (2月3日~2月9日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
2月7日 14時00分 阿蘇山 噴火予報 噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)に引下げ
毎日 02時から3時間毎に8回 阿蘇山
桜島
薩摩硫黄島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想
※ 阿蘇山における降灰予報(定時)は2月7日11時の発表で終了

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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