平成27年 No.18 週間火山概況 (平成27年4月24日~4月30日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 5月1日(期間外)に霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)に噴火予報を発表し、火口周辺危険から平常へ引き下げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 5月1日(14時)現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 御嶽山、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 吾妻山、草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 蔵王山、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(5月1日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


蔵王山 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 火山活動はやや活発な状態で推移しています。
 火山性地震は18回発生しました(前期間81回:図2)。火山性微動は観測されていません。
 地殻変動観測では、特段の変化はみられませんでした。
 想定火口域(馬の背カルデラ)から概ね1.2km の範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、風下側では火山灰や小さな噴石1)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。

火山性地震の発生状況

図2 蔵王山 火山性地震の発生状況(2013年1月1日~2015年4月30日)

吾妻山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山活動はやや活発な状態で推移しています。
 今期間、火山性地震は8回発生しました(前期間は4回:図3)。火山性微動は観測されていません。
 大穴火口からの噴気はやや活発な状態が続いています。また、2015年1月以降に確認された、一切経山(いっさいきょうざん)南山腹の大穴火口外の噴気は引き続きみられています。
 浄土平の傾斜計2)では、2014年4月頃からの長期的な西(火口方向)上がりの変動が継続しています(図4)。
 GNSS3)連続観測では、2014年9月頃から一切経山南山腹観測点が関係する基線で変化がみられており、一切経山付近の膨張を示唆すると考えられます。
 大穴火口付近では小規模な噴火が発生する可能性がありますので、大穴火口周辺(火口から概ね500mの範囲)では弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、大穴火口の風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)、火山ガスに注意してください。

火山性地震の発生状況

図3 吾妻山 火山性地震の発生状況(2014年1月1日~2015年4月30日)


浄土平観測点での傾斜変動

図4 吾妻山 浄土平観測点での傾斜変動(2014年1月1日~2015年4月30日)

  青矢印は、傾斜変動傾向(東西成分)を示します。赤円で囲んだ部分は、融雪の影響。

草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山活動はやや活発な状態で推移しています。
 湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が2014年3月上旬から増加し、8月20日以降はやや少ない状態で経過しています。2015年1月以降は一時的な火山性地震の増加もみられています。
 GNSS3)観測によると、湯釜を挟む基線で2014年4月頃からわずかな伸びの変化が継続しています。また、湯釜周辺に東京工業大学が設置した傾斜計2)によると、2014年3月から湯釜付近浅部での膨張を示す変動が継続しています。
 全磁力観測によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
 今後、小規模な噴火が発生する可能性があることから、湯釜火口から概ね1㎞の範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 山頂火口からの噴煙は、白色で火口縁上200~1,000mで経過しています。
火山性地震は少ない状態で経過していますが、2014年8月以前の状況には戻っていません。火山性微動は観測されていません。
 御嶽山では、火山活動は低下してきており、現状で、2014年9月27日と同程度、またはそれを上回る規模の噴火が発生する可能性は低くなっています。
 一方、火口列からの噴煙活動や地震活動が継続していることから、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。
 新たな火口列の中心から概ね2㎞の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)と火砕流に警戒してください。これに加えて南西側(地獄谷方向)では火口から概ね2.5㎞まで火砕流に警戒してください。
 風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)に注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙は白色で、火口縁上概ね200m以下で経過しています。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。
 二酸化硫黄の放出が長期的に継続しており、火山活動はやや活発な状態で推移しています。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性は低くなっていますが、噴煙活動は続いており火口近傍に火山灰等が噴出する可能性があるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 23日(期間外)と27日に海上保安庁が上空からの観測を実施し、第7火口での噴火活動の継続を確認しました。
 27日の観測では、第7火口で噴火間隔が1分間に約2~3回の噴火が継続していました。噴煙は白色で、噴煙高度約450mで南西方向へ流れていました。
 火砕丘北東斜面に形成された1ヶ所の溶岩流出口から溶岩が流出し、火砕丘北側に溶岩原を形成していました。溶岩原の北東端では溶岩トンネルを経由して1条の溶岩流が北東方向に流下し、海岸線に達していました。この海岸線の4ヶ所で水蒸気が上がっていましたが、海岸線には顕著な変化は認められませんでした。溶岩原の南東側の先端部では、土煙が上がっていました(図5)。
 西之島及び新たな陸地には、津波を発生させる恐れのある、海岸線に平行して走る断層やクラックは認められませんでした。
 変色水域は、北側海岸線に薄い黄緑色で幅約200~300mで分布していました。
 なお、西之島南海丘付近海域に変色水等の特異事象は認められませんでした。
 西之島では、今後も新たに形成された陸地にある火口で噴火活動が継続すると考えられます。また、西之島周辺の海底で噴火が発生する可能性も引き続き考えられ、噴火による影響が海上まで及んだ場合、弾道を描いて飛散する大きな噴石1)や水面を高速で広がるベースサージ4)等の影響が概ね2㎞の範囲に及ぶおそれがありますので、西之島の中心から概ね4㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。

西之島の状況

図5 西之島の状況 27日11時10分 海上保安庁提供


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震はやや少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS3)観測によると、地殻変動は2014年12月上旬頃から隆起の傾向がみられ、2015年1月中旬頃から隆起速度が上がっていましたが、2月上旬頃から鈍化しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で推移しており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 阿蘇山では、連続的な噴火活動が続いています。
 噴煙は、24日、26日に最高で火口縁上1,500mまで上がりました。
 24日の夜間に実施した現地観測では、赤熱した噴石が火口から断続的に噴出し火口縁上約200mまで上がっており、火山灰を連続的に噴出し東側へ流れているのを確認しました。27日に実施した現地観測では中岳第一火口内の141火孔5)形状に大きな変化はありませんでした。また、火口から灰白色の噴煙を噴出し、最高で火口縁上200mまで上がり東へ流れているのを確認しました。鳴動および噴石1)の噴出は確認できませんでした。
 27日に実施した降灰の聞き取り調査では、阿蘇山周辺及び北東側の大分県竹田市付近から南東側の宮崎県高千穂町付近にかけての広い範囲で降灰が確認されました。
 夜間に遠望カメラ(高感度カメラ)で、中岳第一火口で赤熱した噴石1)が最高で火口縁上300mまで上がっていることを確認したほか、火映6)を25日から26日に観測しました。
 火山性微動の振幅は、概ね大きな状態が継続しています(図6)。また、噴火に伴う空振を時々観測しました。
 GNSS3)連続観測では、深部にマグマだまりがあると考えられている草千里を挟む基線の伸びは停滞しています。
 中岳第一火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。火口周辺では強風時に小さな噴石1)が1km を超えて降るため、風下側では火山灰だけではなく小さな噴石1)にも注意してください。

火山性微動の30分間平均振幅

図6 阿蘇山 火山性微動の30分間平均振幅(2014年8月1日~2015年4月30日)


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
 GNSS3)連続観測では、新燃岳の北西数km の地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向が認められます。新燃岳周辺の一部の基線では、2013年12月頃からみられていた伸びの傾向は、2015年2月頃から停滞しています。
 新燃岳では火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性がありますので、新燃岳火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき7))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
 降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が30回発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石1)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。24日09時16分の爆発的噴火では、多量の噴煙が火口縁上4,000mまで上がりました。28日09時40分の爆発的噴火では、ごく小規模な火砕流が発生し、昭和火口の南東側へ約500m流下しました。また、同火口では、夜間に高感度カメラで明瞭に見える火映を30日に観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計2)、伸縮計9)及び桜島島内の基線のGNSS3)連続観測では、2015年1月以降、山体が隆起・膨張する変化が観測されています(図7)。今後、2012年7月24日及び2013年8月18日以上の多量の火山灰を噴出する噴火が発生する可能性があります。また、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)を挟むGNSS3)連続観測の基線では、長期的に姶良カルデラ深部の膨張を示す伸びの傾向がみられます。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき7))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。

有村観測坑道の伸縮変動

図7 桜島 有村観測坑道の伸縮変動(2014年12月1日~ 2015年4月30日)


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島の火山活動は活発な状態が継続しています。
 白色の噴煙が最高で火口縁上600mまで上がりました。噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの噴煙量は2014年8月3日の噴火前に比べて多い状態が継続しています。
 また、同火口では、夜間に高感度カメラで火映6)を時々観測しました。
 火山性地震が時々発生しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS3)連続観測では、2014年12月頃から山麓の観測点による基線長の一部でわずかな伸びの傾向が認められます。
 24日から30日に気象庁機動調査班(JMA-MOT)が実施した現地調査では、新岳火口からの活発な噴煙や、同火口の西側割れ目付近からの噴気を引き続き確認しました。新岳火口西側部分の熱異常域は引き続き認められました。風下側で、多少感じる程度の臭気が認められました。
 25日、26日に東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所及び屋久島町が実施した観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり900~1,500トン(前回22日2,300トン)と概ね多い状態でした。
 噴煙活動等は継続しており、今後も2014年8月3日と同程度の噴火が発生する可能性があります。
 また、火山ガス観測や地殻変動観測によると、今後、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火に移行する可能性もありますので、火山活動の推移を引き続き注意深く見守る必要があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、24日07時10分に爆発的噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がりました。
 火山性地震が時々発生しました。火山性微動を24日から26日に観測しました。
 また、同火口では、夜間に高感度カメラで火映6)を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


十勝岳[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 十勝岳では、25日10時56分頃に継続時間の短い火山性微動が発生し、その後62-2火口付近のごく浅い所(海抜0km 以浅)を震源とする火山性地震が一時的に増加しました(図8)。
 微動発生時の噴煙の様子に特段の変化はありませんでした。26日以降、火山性微動の発生はなく、火山性地震は少ない状況で推移しました。
 なお、ここ数年、大正火口の噴煙量および地震回数の増加、火山性微動の発生、発光現象などが観測されており、長期的にみると火山活動は高まる傾向にありますので、今後の火山活動の推移に注意してください。

火山性地震の発生状況

図8 十勝岳 火山性地震の発生状況(日回数及び積算回数)
(上図:2003 年1月1日~2015 年4月30 日、下図:2014 年1月1日~2015 年4月30 日)

・上図の↑はごく小規模な噴火の発生を示しています

箱根山[噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 26日14時頃から大涌谷から神山付近の浅い所を震源とする火山性地震が増加しています。低周波地震や火山性微動は観測されていません。
 神奈川県温泉地学研究所の傾斜計2)による地殻変動観測では、今回の活動に関連するとみられるわずかな変化が観測されています。気象庁が湯河原鍛冶屋に設置している体積ひずみ計9)や国土地理院の地殻変動観測では、今回の活動と関連する明瞭な変化はみられていません。
 箱根山では、2001年6月から10月にかけて火山性地震が多発し、国土地理院等の地殻変動観測で山体の膨張を示す変化がみられ、噴気活動が活発化しました。
 現時点では、噴気等の状況に特段の変化はみられず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。


霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)[噴火予報(平常)]←5月1日(期間外)に噴火予報を発表し、火口周辺危険から平常へ引下げ

 えびの高原(硫黄山)周辺では、2013年12月頃から火山性地震の多い状態が続いていましたが、2015年4月頃から少ない状態となっています(図9)。2014年8月には、硫黄山付近を震源とする火山性微動が発生しましたが、その後は発生していません。GNSS3)連続観測では、2013年12月頃から、えびの高原(硫黄山)周辺の一部の基線でみられていた伸びの傾向は2015年1月頃より停滞しています。火山
活動によると考えられる傾斜変動は認められていません。また、噴気は見られず、赤外熱映像装置10)による観測でも熱異常域は認められていません。硫黄山周辺の全磁力繰り返し観測では、地下の熱活動の高まりは認められていません。
 以上のことから、えびの高原(硫黄山)周辺の火山活動は低下しており、硫黄山周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、5月1日10時00分に噴火予報を発表し、火口周辺警報(火口周辺危険)から噴火予報(平常)に引下げました。
 えびの高原(硫黄山)は活火山であることから、規模の小さな噴出現象が突発的に発生する可能性がありますので、留意してください。

火山性地震の日別回数

図9 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 火山性地震の日別回数(2013年12月1日~2015年4月30日)




上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1) 噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
2) 火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
3) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
4) 火山ガスと火山灰等の混合物が、水面や地表面を高速で横方向に広がり、地表の物を巻き込む現象で、人体や建物、船舶等に大きな被害を与える恐れがあり、とても危険です。
5) 阿蘇山では、火口内の火山灰や噴石を噴出する孔を火孔と呼んでいます。火山活動に伴い、火孔の位置が変わったり、 同時に複数個の火孔が開口したりしたことがあり、明瞭に区別するために、141火孔のように西暦の下2桁と通し番号で命名しています。
6) 火映は赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
7) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
8) 火山活動による地殻の伸び縮みを観測する機器。マグマ溜まりや火道内の圧力増加によって生じる火口周辺の変化が観測されることがあります。1μstrain(マイクロストレイン)は1kmの長さのものが1mm伸び縮みするような変化量です。
9)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直 下へのマグマの注入等により変化が観測されます。
10)赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器です。熱源から離れた場所から測定することができる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (平成27年4月24日~4月30日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
24日 04時44分、05時45分、
07時53分、08時30分、
09時29分、11時26分、
19時42分
25日 10時40分、11時36分、
20時37分
26日 05時10分、11時37分、
13時11分、18時33分、
18時44分、20時35分
27日 07時29分、14時34分、
17時26分、19時31分
28日 05時38分、11時05分
29日 19時25分
30日 01時51分、02時13分
桜島 降灰予報(速報) 噴火発生から1時間以内に予想される
降灰量分布や小さな噴石の落下範囲を予想
24日 10時00分
26日 10時56分、19時47分
阿蘇山
24日 00時30分、04時57分、
06時00分、09時40分、
17時10分、18時50分、
20時18分、20時35分、
21時23分
25日 11時00分、12時00分、
21時00分
26日 05時30分、11時53分、
13時26分、18時43分、
19時02分、21時00分
27日 07時47分、14時50分、
17時46分、19時47分、
20時29分
28日 05時57分、11時31分
29日 19時47分
30日 02時18分、02時48分
桜島 降灰予報(詳細) 噴火発生から6時間先までに予想される
降灰量分布や降灰開始時刻を予想
24日 09時27分、10時20分、
15時25分
26日 11時25分、20時20分、
21時30分
阿蘇山
毎日02時から3時間毎に8回 阿蘇山
桜島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び
小さな噴石の落下範囲を予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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