平成27年 No.03 週間火山概況 (平成27年1月9日~1月15日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴 (平成27年1月9日~1月15日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
13日03時40分 13日09時08分 13日15時12分 |
阿蘇山 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 1月15日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 御嶽山、桜島、口永良部島 |
入山危険 | 西之島※ | |
レベル2(火口周辺規制) | 十勝岳、吾妻山、草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月15日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
十勝岳[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
2014年7月頃から、62-2火口に近い観測点で山体浅部の膨張を示すと考えられる地殻変動の変化率が大きくなっており、膨張がさらに浅い領域にまで及んでいる可能性があります。一方、山体浅部の熱水活動の高まりを示している可能性がある常時微動1)の振幅レベルは、12 月頃から低下傾向がみられます。
今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されていません。
62-2火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴い弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。62-2火口から概ね1kmの外側であっても、風下側では火山灰や小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
吾妻山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
吾妻山では、2014年12月以降、火山性地震が多い状況で推移しており、14日09時頃から火山性地震が急増し、振幅の大きな地震も発生するなど地震活動が更に活発な状況となりました。同日の地震回数は193 回と吾妻小富士東観測点で計数を開始した1998年以降では最多となり、今期間の地震回数も421回(暫定値:前期間206回)と更なる増加傾向がみられます(図2)。震源は大穴火口付近直下のごく浅いところと推定され、これまでと変わりはありません。今期間、火山性微動は観測されていません。
浄土平(じょうどだいら)(大穴火口の東南東約1㎞)の傾斜計3)では、2014年4月頃から緩やかな西(火口方向)上がりの変動が継続しています(図3)。
また、GNSS4)連続観測では、2014 年9月頃から一切経山南山腹観測点(大穴火口の北約500m)が関係する基線で緩やかな変化がみられており、一切経山付近の膨張を示唆している可能性が考えられます。
これらのことから、吾妻山の火山活動は高まった状態となっており、今後、状況によっては小規模な噴火が発生する可能性があります。
火口カメラ(東北地方整備局設置)及び遠望カメラでは、大穴火口とその付近の噴気の状況に変化は認められず、14日に陸上自衛隊の協力で実施した上空からの観測でも、一切経山や吾妻小富士付近の噴気や地熱域に特段の変化は認められませんでした。
大穴火口から概ね500mの範囲では小規模な噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、大穴火口の風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)、火山ガスに注意してください。

図2 吾妻山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2015年1月15日)

図3 吾妻山 浄土平観測点の傾斜変動(2014年12月20日00時~2015年1月15日24 時)
・黒破線は火山性微動の発生時を示します。
・青矢印は、傾斜計(東西成分)の変化傾向を示します。
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山活動はやや活発な状態で推移しています。
2014年3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態が継続していましたが、8月20日以降はやや少ない状態で経過しています。
GNSS4)観測によると、湯釜を挟む基線で2014年4月頃からみられたわずかな伸びの変化は12月頃から鈍化しています。一方、湯釜周辺に東京工業大学が設置した傾斜計3)によると、2014年3月からみられている湯釜付近浅部での膨張を示す変動は継続しています。
全磁力観測によると、2014年5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
今後、小規模な噴火が発生する可能性があることから、湯釜火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。
御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
火山活動には低下傾向がみられるものの、火口列からの噴煙活動や地震活動が続いており活発な状態で推移しています。
山頂火口からの噴煙は、白色で火口縁上50~200mで経過しています。
9日に実施した火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり約300トン(速報値)でやや少ない状態が続いています。
火山性地震はやや少ない状態で経過しています。なお、11日8時台に振幅の小さい低周波地震を3回観測しましたが、その他の観測データに特段の変化はありませんでした。火山性微動は観測されていません。
国土地理院のGNSS4)データの解析によると、2014年9月上旬頃から御嶽山を挟む基線でごくわずかな伸びと9月下旬頃からごくわずかな縮みの傾向がみられ、12月までに9月上旬頃の基線長に戻っています。
御嶽山では、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。また、噴気活動や地震活動等が活発化する場合には、火口周辺に大きな噴石2)を飛散させ、火砕流を伴うような噴火となる可能性があります。
火口から4㎞程度の範囲では大きな噴石の飛散や火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙は、白色で火口縁上概ね400m以下で経過しています。
火山性地震は、少ない状態で経過しています。
13日に実施した現地調査では、前回(2014年12月10日)と比べて火口内の地形及び地熱域に特段の変化は認められませんでした。
二酸化硫黄の放出が長期的に継続しており、火山活動はやや活発な状態で推移しています。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊によると、活発な噴火活動が続いています。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので西之島の中心から概ね6km以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震はやや少ない状態で経過していましたが、15日05時頃から火山性地震が増加しています。火山性微動は観測されていません。
GNSS4)観測によると、地殻変動は2014年2月下旬頃から隆起の傾向、9月頃から停滞の傾向がみられましたが、12月上旬頃から再び隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で推移しており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
阿蘇山では、連続的な噴火が発生しており活発な噴火活動が続いています。
噴煙は、13日に最高で火口縁上1,300mまで上がりました。
9日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,600トン(前回7日2,500トン)と多い状態が継続しています。13日夜間の現地調査では赤熱した噴石が断続的に火口縁上300mまで上がるのを確認しました。
中岳第一火口では、夜間に遠望カメラ(高感度カメラ)で、赤熱した噴石が火口縁上に上がっていることを確認したほか、火映を時々観測しました。また、火口カメラ(阿蘇火山博物館設置)でも、火口内で赤熱した噴石を時々観測しました。
火山性微動の振幅は、依然大きい状態で継続しており(図4)、時々空振を伴っています。
傾斜計3)では、5日から火口方向が隆起する変化が認められましたが、9日以降は鈍化しています(図5)。
GNSS4)連続観測では一部の基線にわずかな伸びの傾向が認められます。
中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴い弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。火口周辺では強風時に小さな噴石2)が1kmを超えて降るため、風下側では火山灰だけではなく小さな噴石にも注意してください。

図4 阿蘇山 火山性微動の30分間平均振幅(2014年9月1日~2015年1月15日)

図5 阿蘇山 古坊中(ふるぼうちゅう)観測点の傾斜変動(2014年12月8日~2015年1月15日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震及び火山性微動は観測されていません。
傾斜計3)では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
GNSS4)連続観測では、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき5))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)[火口周辺警報(火口周辺危険)]
霧島山のえびの高原(硫黄山)周辺では、火山性地震が時々発生しました(図6)。火山性微動は観測されていません。12日に実施した現地調査では、硫黄山周辺の温度分布に特段の変化は認められませんでした。
えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒して下さい。
風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)に注意してください。

図6 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 火山性地震の日別回数(2013年12月1日~2015年1月15日)
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計3)及び伸縮計6)では、1日頃から山体の膨張と考えられる変化が継続しています(図7)。
昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。16日(期間外)に実施した現地調査では、桜島島内の鹿児島市有村町付近(昭和火口から南側約3km)で、15日23 時02分の爆発的噴火に伴って落下したと推定される最大約2cmの小さな噴石2)(火山れき5))を確認しました。
また、同火口では、期間をとおして夜間に高感度カメラ7)で明瞭に見える火映を観測しました。
15日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり5,000トン(前回7日、3,600トン)と非常に多い状態でした。桜島で5,000トン以上の二酸化硫黄が観測されたのは、2012年10月29日(5,700トン)以来です。
16日(期間外)03時40分過ぎから昭和火口では、ごく小規模な噴火が連続的に発生しており周辺の一部地域では鳴動が確認されています。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
GNSS4)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行してきており、引き続き活発な噴火活動が継続すると考えられますので、火山活動の推移に注意してください。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき5))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。

図7 桜島 有村観測坑道の傾斜変動と伸縮変動(2014年12月1日~ 2015年1月15日)
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
口永良部島では、火山活動の高まった状態が継続しています。
噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの噴煙量は2014年8月3日の噴火前に比べて多い状態で、白色の噴煙が最高で火口縁上200mまで上がりました。二酸化硫黄の放出量は、噴火前と比べて多い状態が続いているものと推定されます。
火山性地震及び火山性微動は観測されていません。
噴煙活動等は継続しており、今後も2014年8月3日と同程度の噴火が発生する可能性がありますので、新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では、今期間、噴火は観測されませんでした。
火山性地震を時々観測しました。火山性微動は13 日から連続して観測しました。
また、御岳(おたけ)火口では期間を通して、夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1) 主に火口近傍に設置した地震計が捉えている震動で、火山性地震や火山性微動とちがい、途切れることなく長時間にわたって継続しています。山体浅部の熱水活動などに起因する現象の可能性があります。
2) 噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPS をはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
6) 火山活動による地殻の伸び縮みを観測する機器。マグマ溜まりや火道内の圧力増加によって生じる火口周辺の変化が観測されることがあります。
7) 九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。