平成26年 No.52 週間火山概況 (平成26年12月19日~12月25日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年12月19日~12月25日)
発表日時 |
火山名 |
特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
15日11時31分 15日15時13分 15日21時20分 23日15時26分 23日21時18分 |
阿蘇山 |
降灰予報 |
噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 |
三宅島 |
火山ガス予報 |
島内の火山ガスの分布予想 |
表2 12月25日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベル及びキーワード |
該当火山 |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
御嶽山、桜島、口永良部島 |
入山危険 |
西之島※ |
レベル2(火口周辺規制) |
十勝岳、吾妻山、草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 |
火口周辺危険 |
硫黄島※、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) |
噴火警報(周辺海域) |
周辺海域警戒 |
福徳岡ノ場※ |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
雌阿寒岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
平常 |
上記以外の活火山 |
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(12月25日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
十勝岳[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今年7月頃から、62-2火口に近い観測点で山体浅部の膨張を示すと考えられる地殻変動の変化率が大きくなっており、膨張がさらに浅い領域にまで及んでいる可能性があります。62-2火口および大正火口の近傍に設置してある地震計(グラウンド火口西観測点)の常時微動1)の振幅レベルは高い状態にあり、山体浅部の熱水活動が高まっている可能性があります。
22日15時03分頃、継続時間が約3分の振幅の小さい火山性微動を観測しました。その後、22日の夜遅くにかけて、62-2火口付近のごく浅い所を震源とする火山性地震が一時的に増加しました。
62-2火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴い弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。62-2火口から概ね1kmの外側であっても、風下側では火山灰や小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
吾妻山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山活動はやや活発な状況で推移しています。
18日(前期間)から22日にかけて火山性地震が増加し、22日は57回発生しました(火山性微動が発生した12日は48回)。今期間の地震回数は211回(前期間:137回)と多い状況となりました。震源は大穴火口付近直下のごく浅いところと推定され、これまでと変わりはありません。火山性地震は24日以降、少ない状況となっていますが、今後も増減を繰り返しながら経過するものと考えられます(図2)。
浄土平(じょうどだいら)(大穴火口の東南東約1㎞)の傾斜計3)では、緩やかな西(火口方向)上がりの変動が引き続きみられています(図3)。
火口カメラ(東北地方整備局設置)及び遠望カメラでは、火口とその付近の噴気の状況に変化は認められませんでした。
大穴火口から概ね500mの範囲では小規模な噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、大穴火口の風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)、火山ガスに注意してください。

図2 吾妻山 火山性地震の日別回数(2013年12月1日00時~12月25日)

図3 吾妻山 浄土平観測点の傾斜変動(2014年12月5日00時~12月25日15時)
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山活動はやや活発な状態で推移しています。
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態が継続していましたが、8月20日以降はやや少ない状態で経過しています。
GNSS4)観測によると、湯釜を挟む基線で4月頃からみられたわずかな伸びの変化は12月頃から鈍化しています。
全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
今後、小規模な噴火が発生する可能性があることから、湯釜火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。
御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
火山活動には低下傾向がみられるものの、火口列からの噴煙活動や地震活動が続いており活発な状態で推移しています。
山頂火口からの噴煙は、白色で火口縁上100~200mで経過しています。
火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
国土地理院のGNSS4)データの解析によると、9月上旬頃から御嶽山を挟む基線でごくわずかな伸びと9月下旬頃からごくわずかな縮みの傾向がみられ、12月までに9月上旬頃の基線長に戻っています。
御嶽山では、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。また、噴気活動や地震活動等が活発化する場合には、火口周辺に大きな噴石2)を飛散させ、火砕流を伴うような噴火となる可能性があります。
火口から4㎞程度の範囲では大きな噴石の飛散や火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙は、白色で火口縁上概ね80m以下で経過しています。
二酸化硫黄の放出が長期的に継続しており、火山活動はやや活発な状態で推移しています。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
火山性地震は、少ない状態で経過しています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
これまでの海上保安庁、海上自衛隊の観測によると、噴火活動の継続が確認されていることから、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6km以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震はやや少ない状態で経過しています。19日に1回及び21日に1回、いずれも継続時間が数分程度で振幅の小さい火山性微動が発生しましたが、遠望カメラでは特段の変化は認められませんでした。
GNSS4)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向、9月頃から停滞の傾向がみられましたが、12月上旬頃から再び隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で推移しており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
阿蘇山では、活発な噴火活動が続いています。
噴火は断続的に発生し、23日に灰色の噴煙が最高で火口縁上1,000mまで上がりました。
中岳第一火口では、夜間に遠望カメラ(高感度カメラ)で、赤熱した噴石が火口縁上に上がっていることを確認したほか、火映を時々観測しました。また、火口カメラ(阿蘇火山博物館設置)でも、赤熱した噴石を時々観測しました。
火山性微動の振幅は、依然大きい状態で継続しており(図4)、時々空振を伴っています。
GNSS4)連続観測では一部の基線にわずかな伸びの傾向が認められます。傾斜計3)では、特段の変化は認められません。
中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴い弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。火口周辺では強風時に小さな噴石2)が1kmを超えて降るため、風下側では火山灰だけではなく小さな噴石にも注意してください。

図4 阿蘇山 火山性微動の30分間平均振幅(2014年8月1日~2014年12月25日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は発生していません。
傾斜計3)では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
GNSS4)連続観測では、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき5))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
霧島山のえびの高原(硫黄山)周辺では、火山性地震が時々発生しました(図5)。火山性微動は観測されていません。
えびの高原の硫黄山から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒して下さい。
風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)に注意してください。

図5 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 火山性地震の日別回数(2013年12月1日~2014年12月25日)
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、弾道を描いて飛散する大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800~1,300m)まで達しました。また、同火口では、夜間に高感度カメラ6)で微弱に見える火映を時々観測しました。南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
22日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,700トン(前回:11月14日1,000トン)とやや多い状態でした。
桜島島内の傾斜計3)では、2014年1月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃から山体が沈降する傾向となっています。
GNSS4)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行してきており、引き続き活発な噴火活動が継続すると考えられますので、火山活動の推移に注意してください。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき5))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
口永良部島では、火山活動の高まった状態が継続しています。
噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの噴煙量は8月3日の噴火前に比べて多い状態で、白色の噴煙が最高で火口縁上300mまで上がりました。
東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所及び屋久島町が21日と23日及び25日に実施した観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,300~1,900トン(前回:14日1,000トン)と多い状態が続いています。
火山性地震が時々発生しました。火山性微動は観測されていません。
噴煙活動等は継続しており、今後も8月3日と同程度の噴火が発生する可能性がありますので、新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では御岳(おたけ)火口で、ごく小規模な噴火が時々発生し、噴煙が最高で火口縁上600mまで上がりました。
火山性地震はやや多い状態で経過し、継続時間の短い火山性微動を観測しました。
また、同火口では期間を通して、夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
19日04時38分頃に振幅が大きく継続時間の短い火山性微動が発生しました。坊平観測点(山頂の南西約5km)での最大振幅(上下成分)は5.3μm/sと、2010年9月の観測開始以降発生している微動の中では2番目に振幅が大きいものでした。火山性微動の発生は、11月19日以来です(図6)。坊平の傾斜計3)では、微動発生に先行してわずかな南東(山頂の南側)上がりの変化がみられました。
火山性微動発生前後に火山性地震は観測されず、今期間の地震回数も8回(前期間:1回)と少ない状況となっています。
火口カメラ及び遠望カメラでは噴気の状況等に変化は認められませんでした。
蔵王山では、2014年8月以降、火山活動の高まりがみられます。過去の活動期には、突発的な噴気孔の生成や、火山ガスの噴出等の現象があったことから、登山等で火口に近づく際には十分注意してください。

図6 蔵王山 火山性地震の日別回数、火山性微動の発生状況(2013年1月~2014年12月25日24時)
九重山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
25日に火山性地震が一時的に増加し、18回観測しました。26日(期間外)は、14時まで火山性地震は観測されていません。また、火山性微動は観測されていません。九重山で1日あたり18回以上の火山性地震を観測したのは、2004年3月26日の32回以来です。
26日に実施した現地調査では、硫黄山付近では白色の噴煙が火口上200mまで上がっていましたが、特段の変化は認められませんでした。
地殻変動観測では、GNSS4)連続観測の一部の基線でわずかな伸びの傾向が認められます。
今後の火山活動の推移に注意してください。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1) 主に火口近傍に設置した地震計が捉えている震動で、火山性地震や火山性微動とちがい、途切れることなく長時間にわたって継続しています。山体浅部の熱水活動などに起因する現象の可能性があります。
2) 噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) 火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPS をはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
6) 九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベルとキーワード |
噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ |
レベル5(避難) |
居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) |
火口周辺危険 |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。
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