平成26年 No.49 週間火山概況 (平成26年11月28日~12月4日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年11月28日~12月4日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
11月29日16時35分 11月30日01時03分 11月30日11時15分 |
桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
11月30日00時52分 11月30日03時05分 11月30日09時03分 |
阿蘇山 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 12月4日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 御嶽山、桜島、口永良部島 |
入山危険 | 西之島※ | |
レベル2(火口周辺規制) | 草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(12月4日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山活動はやや活発な状態で推移しています。
GNSS1)観測によると、湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、消長を繰り返しながら多い状態 が継続していましたが、8月20日以降はやや少ない状態で経過しています(図2)。
全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
今後、小規模な噴火が発生する可能性があることから、湯釜火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾 道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入 らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留 した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

図2 草津白根山 火山性地震の日別回数(3月1日~12月4日)
御嶽山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
火山活動には低下傾向がみられるものの、火口列からの噴煙活動や地震活動が続いており活発な状態 で推移しています。
火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
山頂火口からの噴煙は、白色で火口縁上100mで経過しています。
11月28日に実施した火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり約200トン(速報値)でや や少ない状態で推移しています。
国土地理院のGNSS1)データの解析によると、9月上旬頃から御嶽山を挟む基線でごくわずかな伸びが みられ、また、9月下旬頃からごくわずかな縮みの傾向がみられています。
御嶽山では、今後も小規模な噴火が発生する可能性があります。また、噴気活動や地震活動等が活発 化する場合には、火口周辺に大きな噴石3)を飛散させ、火砕流を伴うような噴火となる可能性があります。
火口から4㎞程度の範囲では大きな噴石3)の飛散や火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だ けでなく小さな噴石3)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴 う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には 土石流の可能性がありますので注意してください。
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙は、白色で火口縁100m以下で経過しています。
火山性地震は、少ない状態で経過しています。
12月2日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300トン(前回11月21日300トン) で、やや少ない状態でした。
二酸化硫黄の放出量が長期的に継続しており、火山活動はやや活発な状態で推移しています。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内 側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想 される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
父島の小笠原村役場より、「遠くで雷のような音がする」「住居のサッシがカタカタ音をたてる」等 の通報が寄せられています。父島島内で西之島の噴火による空振を感じていると推定されます。
東京大学地震研究所が父島に設置している空振計によると、西之島が連続的に噴火していることを示 す空振データも観測されています。
今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴 火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は少ない状態で経過しています。
継続時間が数分程度で、振幅の小さい火山性微動が時々発生しましたが、遠望カメラでは特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向がみられていましたが、9月頃から停滞傾 向です。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発 生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が 発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴 火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われ ませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動 によるとみられる変色水等が確認されるなど、やや活発な状態で推移しており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、 周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
阿蘇山では、活発な噴火活動が続いています。
11月25日の噴火の発生以降、天候不良により噴煙が確認できない時もありましたが、火山性微動や空振 の発生状況などから、噴火が継続していると考えられます。
遠望カメラでは、11月30日に灰白色の噴煙が火口縁上1,100mまで上がっているのを観測しました。
12月3日に実施した現地調査では、中岳第一火口の北東約2kmの仙酔峡付近でごく少量の降灰を確認し ました。
熊本大学教育学部が11月25日から29日にかけて実施した現地調査によると、この期間の噴火による火山 灰の総量は15万トン程度と概算されています。
中岳第一火口では、夜間に遠望カメラ(高感度カメラ)で、赤熱した噴石が火口縁上に上がっているこ とを時々確認したほか、火映を時々観測しました。また、火口カメラ(阿蘇火山博物館設置)では、141 火孔5)から、火炎6)や赤熱した噴石を時々観測しました。
火山性微動は消長を繰り返しながら振幅の大きい状態で継続しており、空振を伴う火山性地震が時々発 生しています。
GNSS1)連続観測では一部の基線にわずかな伸びの傾向が認められます。傾斜計2)では、特段の変化は認め られません。
中岳第一火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う 弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が 風に流されて降るため注意してください。

図3 阿蘇山 火山性微動の30分間平均振幅(2013年1月1日~2014年12月4日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は発生していません。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められません。
GNSS1)連続観測によると、新燃岳の北西数km(えびの高原付近)の地下深くにあると考えられるマグ マだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸 びの傾向がみられます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してくだ さい。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき7))が風に流されて降るおそれ があるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)[火口周辺警報(火口周辺危険)]
霧島山のえびの高原(硫黄山)周辺では、火山性地震が時々発生しました(図4)。火山性微動は観測されていません。
えびの高原の硫黄山から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒 して下さい。
風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石3)に注意してください。

図4 霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺) 火山性地震の日別回数(2013年12月1日~2014年12月4日)
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続きました。 昭和火口では、爆発的噴火が7回発生しました。11月28日23時25分の爆発的噴火では、弾道を描い て飛散する大きな噴石3)が3合目(昭和火口より1,300~1,800m)まで達しました。大きな噴石が3合 目まで達したのは今年の9月3日以来です。
」 11月30日00時48分の噴火ではやや多量の噴煙が火口縁上3,800mまで上がりました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
桜島島内の傾斜計2)では、2014年1月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃 から山体が沈降する傾向となっています。
GNSS1)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月 頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停 滞していますが、長期的には膨張が進行してきており、引き続き活発な噴火活動が継続すると考えられま すので、火山活動の推移に注意してください。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)及 び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき7))が遠方まで風 に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのお それがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
口永良部島では、火山活動の高まった状態が継続しています。
噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの噴煙量は噴火前に比べて多い状態で、白色の噴煙が最高で 火口縁上300mまで上がりました。
火山性地震を2回観測しました。火山性微動は観測されていません。
噴煙活動等は継続しており、今後も8月3日と同程度の噴火が発生する可能性がありますので、新岳火 口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。向江浜 地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では、火 山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流 の可能性があるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震はやや多い状態で経過し、火山性微動を時々観測しました。
また、御岳(おたけ)火口では期間を通して、夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲で は、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく 小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
坊平観測点に設置している傾斜計2)でみられていた、わずかな東(山頂の南側)上がりの変動は、11 月30日頃から停滞しています。
火山性地震は少ない状況で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
蔵王山では、2014年8月以降、火山活動の高まりがみられます。過去の活動期には、突発的な噴気孔 の生成や、火山ガスの噴出等の現象があったことから、登山等で火口に近づく際には十分注意してくだ さい。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0 秒、継続時間10 秒程度で振幅が 5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。
5) 阿蘇山では、火口内の火山灰や噴石を噴出する孔を火孔と呼んでいます。火山活動に伴い、火孔の位置が変わったり、 同時に複数の火孔が開口したりしたことがあり、明瞭に区別するために、西暦の下2桁と通し番号で命名しています。
6)高温の噴出物が炎のように見える現象。
7)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。