平成26年 No.36 週間火山概況 (平成26年8月29日~9月4日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 30日、阿蘇山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げ、大きな噴石に対する警戒範囲を1kmとしました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年8月29日~9月4日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
30日09時40分 阿蘇山 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
31日08時42分、15時25分、15時32分、18時40分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 9月4日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 草津白根山、三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(9月4日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、その後、消長を繰り返しながら多い状態が継続しています(図2)。今期間、火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は、7月以降は停滞しています。
 湯釜火口から概ね1㎞の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

草津白根山日別地震回数

図2 草津白根山 日別地震回数(3月1日~9月4日)


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、視界不良の日もありましたが、噴煙は観測されませんでした。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。
 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊などによると、活発な噴火活動が続きました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 火山性地震は3月からやや多い状態で経過していましたが、8月に入ってからは減少しています。今期間は少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が9月1日に2回発生しましたが、遠望カメラでは特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、地殻変動は2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←8月30日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引上げ

 中岳第一火口では、火山活動の高まった状態となっています。
 8月30日09時13分頃に現地調査で噴火が発生していることを確認しました。このため、09時40分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。
 中岳第一火口では、8月30日~9月1日にごく小規模な噴火が時々発生し、1日の噴火では灰白色(火山灰混じり)の噴煙が火口縁上1,200mまで上がりました。
 火山性地震及び孤立型微動6)は多い状態で経過しています(図3)。
 地殻変動観測では、特段の変化は認められませんでした。
 中岳第一火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。

火山性地震及び孤立型微動の日別回数、積算回数

図3 阿蘇山 火山性地震及び孤立型微動の日別回数、積算回数(2014年8月1日~9月4日現在)


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS1)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
 今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
 新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が45回発生し、8月31日15時07分及び18時12分の爆発的噴火では、多量の噴煙が火口縁上3,000mまで上がりました。9月2日20時22分及び3日03時05分の爆発的噴火では大きな噴石3)が3合目(昭和火口より1,300~1,800m)まで達しました。大きな噴石が3合目まで達したのは今年の6月29日以来です。
 同火口では、夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 桜島島内の傾斜計2)では、2014年4月頃から山体が隆起する傾向がみられていましたが、7月中旬頃から山体が沈降する傾向となっています。
 GNSS1)連続観測では、桜島島内の基線で、2014年1月頃から伸びの傾向がみられていましたが、7月頃から停滞しています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向は、2013年6月頃から停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では今期間、噴火は発生しませんでしたが、火山活動の高まった状態が継続しています。
 火山性地震が時々発生し、3日及び4日に継続時間の短い火山性微動を観測しました。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。また、火砕流に警戒してください。 風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では活発な噴火活動が続いています。
 3日11時19分の噴火では、灰白色の噴煙が火口縁上2,200mまで上がりました。
 火山性地震は多い状態で経過し、8月31日~9月4日にかけて連続微動を観測しています。御岳(おたけ)火口では、3日の夜間に高感度カメラで火映を観測しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


蔵王山 [噴火予報(平常)]

 4日01時31分頃に継続時間が短く振幅の小さい火山性微動が発生しました。火山性微動の発生は今年8月10日以来です。
 遠望カメラや火口カメラによる観測では、噴気等は認められませんでした。火山性地震の発生状況、空振計及び地殻変動観測でも特段の変化は認められませんでした(図4)。
 蔵王山では、8月6日以降、火山活動の高まりがみられますので、今後の活動の推移に注意してください。

蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況

図4 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日~2014年9月4日)


上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
6)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5~1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s 以上のものを孤立型微動としています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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