平成26年 No.32 週間火山概況 (平成26年8月1日~8月7日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
3日に口永良部島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引上げ、大きな噴石に対する警戒範囲を2kmとしました。また、7日に火口周辺警報を切り替え、火砕流に対する警戒を加えました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年8月1日~8月7日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
3日12時50分 | 口永良部島 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベル3(入山規制)へ引上げ |
7日10時00分 | 口永良部島 | 火口周辺警報 | 火口周辺警報切り替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続) |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 7月31日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島、口永良部島 |
入山危険 | 西之島※ | |
レベル2(火口周辺規制) | 草津白根山、三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(8月7日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、その後、消長を繰り返しながら多い状態が継続しています(図2)。4日17時頃から湯釜付近を震源とする火山性地震が一時的に増加しましたが、5日22時以降減少しています(図3)。火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると湯釜付近の膨張を示す変動が引き続きみられています。全磁力観測によると、5月以降の湯釜近傍地下の温度上昇を示す変化は小規模なものであったとみられ、7月以降は停滞しています。
湯釜火口から概ね1㎞の範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

図2 草津白根山 日別地震回数(3月1日~8月7日)

図3 草津白根山 時間別地震回数(8月1日00時~8月7日24時)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙の高さは、火口縁上100m以下で経過しました。
火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。6日02時06分に発生したマグニチュード2.1の地震では、三宅島神着で震度1を観測しました。火山性微動の発生はなく、遠望カメラによる噴気などの状況等、その他の観測データにも特段の変化は認められませんでした。
5日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300トン(前回7月11日200トン)で、やや少ない状態でした。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊などの観測によると、活発な噴火活動が続きました。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は3月からやや多い状態で経過しています。継続時間の短い火山性微動が時々発生しましたが、遠望カメラによると特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると、地殻変動は2014年1月頃から停滞していましたが、2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊の協力により6日に実施した上空からの観測によると福徳岡ノ場付近の海面で火山活動によるとみられる変色水は認められませんでした。
今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向が見られます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、噴火活動が続きました。
昭和火口では、6日20時53分に爆発的噴火が発生し、噴煙が火口縁上500mまで上がり、大きな噴石3)が6合目(昭和火口より300~500m)まで達しました。同火口では、夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
南岳山頂火口では、噴火は観測されませんでした。
地殻変動観測では、桜島島内で見られていた山体の隆起・膨張は、7月頃から停滞しています。また、姶良カルデラ深部の膨張は停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)] ←3日に噴火警戒レベル3(入山規制)に引上げ。7日に火口周辺警報の切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
口永良部島では、3日12時24分に新岳付近で噴火が発生し、灰色の噴煙が火口縁上800m以上上がりました。このため、3日12時50分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から3(入山規制)に引き上げました。新岳で噴火が発生したのは1980年9月以来です。
また、この噴火に伴う火山灰を産業技術総合研究所が分析したところ、マグマが直接関与している可能性があることがわかりました。今後、マグマが関与する噴火が発生した場合、火砕流を伴う可能性があることから、7日10時00分に火口周辺警報を切替え、火砕流に対する警戒を加えました。
火山性地震は、5日以降やや多い状態で経過しています。
噴火に伴い振幅の大きな火山性微動が発生しましたが、その後は観測されていません。
地殻変動観測では、噴火に伴い新岳北東山麓観測点の傾斜計で山体が沈降する変化を観測しました。その後は、特段の変化は見られていません。
口永良部島では、火山活動の高まった状態が継続しています。
新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。
また、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では今期間、噴火は発生しませんでした。御岳(おたけ)火口では、夜間に高感度カメラで火映を時々観測しました。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過しました。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
6日22時41分頃に火山性微動が発生しました。坊平観測点での継続時間は約8分で最大振幅(上下動)は2.4μm/sです。火山性微動が観測されたのは1月3日以来です。
微動発生後、御釜直下付近の浅いところが震源と推定される火山性地震がやや多い状況となり、7日にかけて55回発生しました。今回観測された地震は全て低周波地震です。この地震活動は8日(期間外)になって減少傾向となっています。
微動の発生に伴って傾斜計2)では、微小な変化がみられましたが、このような変化はこれまでもみられています。
遠望カメラによる噴気の状況や、空振計及びGNSS1)連続観測では特段の変化は認められません。
今回の地震回数は、2010年9月の観測開始以来最も多い状況で、火山活動の高まりが見られます。
今後の活動の推移に注意してください。

図4 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日~2014年8月7日)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。