平成26年 No.24 週間火山概況 (平成26年6月6日~6月12日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
11日、西之島に火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報を切り替え、警戒が必要な範囲を島の中心から概ね6kmと明示しました。
その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年6月6日~6月12日)
発表日時 |
火山名 |
特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
11日14時00分 |
西之島 |
火口周辺警報 |
火口周辺警報(入山危険)を切り替え 警戒範囲を島の中心から概ね6kmと明示 |
11日14時00分 |
西之島 |
火山現象に関する海上警報 |
警戒範囲を島の中心から概ね6km と明示 |
毎日07時、17時 |
三宅島 |
火山ガス予報 |
島内の火山ガスの分布予想 |
表2 6月12日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベル及びキーワード |
該当火山 |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
桜島 |
入山危険 |
西之島※ |
レベル2(火口周辺規制) |
草津白根山、三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 |
火口周辺危険 |
硫黄島※ |
噴火警報(周辺海域) |
周辺海域警戒 |
福徳岡ノ場※ |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 |
上記以外の活火山 |
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(6月12日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、火山性地震はやや多い状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、地殻変動観測によると湯釜付近の膨張を示す変動が認められています。湯釜火口内北東部や北壁及び水釜火口の北から北東側にあたる斜面での熱活動の活発な状態が継続しており、5月頃からは湯釜近傍地下の温度上昇を示すと考えられる全磁力変化がみられています。また、東京工業大学火山流体研究センターによると、北側噴気地帯のガス成分にも活動活発化を示す変化がみられています。
湯釜火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

図2 草津白根山 日別地震回数(5月1日~6月12日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、視界不良のため、噴煙の状況はほとんど観測できませんでした。9日及び10日には、白色の噴煙が一時的に火口縁上500mまで上がりましたが、その他観測データに変化はありませんでした。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]←11 日に火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報を切替え
噴火による噴石等の堆積や溶岩の流出により、新たに形成された陸地(西之島と接続した新島部分)の拡大が継続しています。今後の火山活動の変化に伴い、西之島周辺の海底で噴火が発生する可能性も引き続き考えられることから、11日14時00分に火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報を切り替え、警戒が必要な範囲を西之島の中心から概ね6㎞以内と明示しました。この範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や、水面を高速で広がるベースサージ等の影響が及ぶ恐れがあります。
11日に海上自衛隊が実施した上空からの観測によると、北側火口(図3の①)の東側に、青白色の噴煙を噴出する新たな噴火孔(図3の②)が認められ、溶岩が南東方向へ流出していました(図3の⑤)。5月21日に確認された新たな火孔(図3の③)及び北側火口からは、連続的な灰白色の噴煙の噴出を確認しました(図3の④)。
西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島の中心から概ね6㎞以内の範囲では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

図3 西之島の状況(11日11時06分撮影 海上自衛隊提供)
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は3月からやや多い状態で経過しています。今期間はやや少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が7日に1回発生しました。
国土地理院のGNSS1)観測によると、地殻変動は2014 年1月頃から停滞していましたが、2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
11日に海上自衛隊が実施した上空からの観測によると、変色水等は認められませんでした。
海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す地殻変動は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向が見られます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続きました。
昭和火口では、爆発的噴火が19回発生し、6日13時11分の爆発的噴火では、大きな噴石3)が4合目(昭和火口より800m~1,300m)まで達し、多量の噴煙が火口縁上4,500mまで上がりました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
地殻変動観測では、桜島島内で山体が隆起・膨張する傾向がみられます。また、姶良カルデラ深部の膨張は、停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動を時々観測しました。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベルとキーワード |
噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ |
レベル5(避難) |
居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) |
火口周辺危険 |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。
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