平成26年 No.23 週間火山概況 (平成26年5月30日~6月5日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
3日に草津白根山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げました。また、同日に西之島に火口周辺警報を発表し、警戒事項を火口周辺危険から入山危険に引上げました。
その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年5月30日~6月5日)
発表日時 |
火山名 |
特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
3日18時00分 |
草津白根山 |
火口周辺警報 |
噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ |
3日18時00分 |
西之島 |
火口周辺警報 |
入山危険へ引上げ |
毎日07時、17時 |
三宅島 |
火山ガス予報 |
島内の火山ガスの分布予想 |
表2 5月29日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベル及びキーワード |
該当火山 |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
桜島 |
入山危険 |
西之島※ |
レベル2(火口周辺規制) |
草津白根山、三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 |
火口周辺危険 |
硫黄島※ |
噴火警報(周辺海域) |
周辺海域警戒 |
福徳岡ノ場※ |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 |
上記以外の活火山 |
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(6月5日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
草津白根山[火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←3日に噴火警戒レベル1(平常)から引上げ
今期間、火山性地震は多い状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
3月上旬から湯釜付近及びその南側を震源とする火山性地震が増加し、地殻変動観測によると湯釜付近の膨張を示す変動が認められています。湯釜火口内北東部や北壁及び水釜火口の北から北東側にあたる斜面での熱活動の活発な状態が継続しており、5月頃からは湯釜近傍地下の温度上昇を示すと考えられる全磁力変化がみられています。また、東京工業大学火山流体研究センターによると、北側噴気地帯のガス成分にも活動活発化を示す変化がみられています。
このため、湯釜火口では小規模な噴火が発生する可能性があると判断し、3日18時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げました。
湯釜火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺のくぼ地や谷地形などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。

図2 草津白根山 日別地震回数(5月1日~6月5日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙の高さは、火口縁上100m以下で経過しました。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島[火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]←3日に火口周辺危険から引上げ
西之島では活発な噴火活動が続いています。
産業技術総合研究所が3日に報道機関の協力により実施した上空からの観測によると、北側火口(図3矢印①)と、5月21日に海上保安庁が確認した新たな火孔(図3矢印②)から、高度約1,000mで北西に流れる噴煙が観測されました。北側火口では、灰褐色の噴煙を連続的に噴出していました。新たな火孔からは、青白色の噴煙を連続的に噴出していました。溶岩流は南側へ流下し、海面に接した場所では白煙を上げていました。南側火口(図3矢印③)では、活動は認められませんでした。
噴火による噴石等の堆積や溶岩の流出により、新たに形成された陸地(西之島と接続した新島部分)の拡大の継続が確認されており、5月21日時点では新たな陸地の面積は噴火前の西之島の約4倍の約0.9km2 になっていることから、3日18時00分に火口周辺警報を発表し、警戒事項を火口周辺危険から入山危険に引上げました。
西之島では噴火活動が継続していますので、新たに形成された陸地、西之島旧島及びそれらの付近の海域では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

図3 西之島の状況(3日東南東方向から撮影・産業技術総合研究所提供)
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は3月からやや多い状態で経過しています。今期間は、やや少ない状態で経過しました。継続時間の短い火山性微動が13回発生し、継続時間の最長は31日14時47分頃に発生した約2分20秒でした。
国土地理院のGNSS1)観測によると、地殻変動は2014年1月頃から停滞していましたが、2月下旬頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。このことから火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
GNSS1)観測によると、新燃岳の北西地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張を示す伸びの変化は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向が見られます。今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続きました。
昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、大きな噴石3)が4合目(昭和火口より800m~1,300m)まで達しました。また、同火口では、夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を2日と4日に観測しました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
地殻変動観測では、桜島島内で山体が隆起・膨張する傾向がみられます。また、姶良カルデラ深部の膨張は、停滞していますが、長期的には膨張が進行しています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間、噴火は発生しませんでした。
同火口では、夜間に高感度カメラで火映を時々観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動を時々観測しました。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
岩手山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
1日21時26分に、岩手山山頂の西北西約10㎞、深さ約5㎞を震源とするマグニチュード3.0 の地震が発生し、岩手県八幡平市と秋田県仙北市で震度1を観測しました。その後、付近では体に感じない程度の微小な地震が一時的に多い状況となりましたが、2日の昼前頃から減少しています。
この間、山頂付近の地震活動、表面現象及び地殻変動の状況等に変化はみられず、噴火の兆候は認められません。

図4 岩手山周辺の震央分布図(2010年1月1日~2014年6月5日)

図5 岩手山時間別地震回数(1日00時~5日24時)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 |
噴火警戒レベルとキーワード |
噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ |
レベル5(避難) |
居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) |
火口周辺警報 |
レベル3(入山規制) |
入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) |
火口周辺危険 |
噴火予報 |
レベル1(平常) |
平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。
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