平成26年 No.11 週間火山概況 (平成26年3月7日〜3月13日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 12日に阿蘇山に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年3月7日〜3月13日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
12日 11時00分 阿蘇山 噴火予報 噴火警戒レベル1(平常)に引き下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 3月13日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島※、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(3月13日)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の高さは、火口縁上100〜200mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 7日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日当たり平均200トン(前回1月28日、平均400トン)で、やや少ない状態でした。三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊などによると西之島では活発な噴火活動が続いています。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 12日20時33分頃に振幅の大きい火山性地震が発生しました。硫黄島の海上自衛隊からの連絡によると揺れが感じられましたが、13日に島内を確認したところ異常はみられなかったとのことです。
 今期間、火山性地震はやや少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
 3日(期間外)から9日にかけて海上自衛隊の協力により実施した現地調査では、島内の噴気、地熱などに特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年11月頃から沈降していましたが、2014年1月頃から停滞気味となっています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これまでのこれら機関の観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 GNSS2)観測によると、新燃岳の北西地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張による伸びの変化は、2011年12月以降鈍化・停滞していましたが、2013年12月頃から伸びの傾向がみられます。
 新燃岳では火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性がありますので、新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続きました。
 昭和火口では、爆発的噴火が9回発生し、9日19時22分の爆発的噴火では、大きな噴石3)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m)まで達しました。同火口では、夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。
 10日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,900トン(前回4日、1,900トン)とやや多い状況でした。
 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計1)及び伸縮計では、2月27日頃から山体の膨張と考えられるわずかな変化が観測されていましたが、3月9日頃から収縮の傾向となっています。
 GNSS2)連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、2013年6月頃から停滞気味です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)(火山れき4))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では、御岳(おたけ)火口で12日06時34分にごく小規模な噴火が発生し、灰白色の噴煙が最高で火口縁上400mまで上がる等、やや活発な噴火活動が続きました。
 火山性地震は少ない状態で経過し、12日に火山性微動が発生しました。
 同火口では、夜間には高感度カメラで火映を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石3)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

草津白根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 3月6日(期間外)夜から7日にかけ、湯釜の浅いところを震源とする振幅の小さな火山性地震が一時的に増加しました。その後、地震活動は収まっています。今期間、火山性微動は観測されていません。また、傾斜計では、この地震活動に伴う変化は認められません。
 引き続き、山頂火口から概ね500mの範囲では、火山灰の噴出等に警戒してください。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺の窪地や谷などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがありますので、注意してください。


阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 阿蘇山では、2013年12月27日から噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)へ引き上げていましたが、その後、中岳第一火口の火山活動が低下し、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断したことから、3月12日11時00分に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)へ引き下げました。  孤立型微動6)及び火山性地震は、1月下旬に一時的に増加しましたが、その後は少ない状態で経過しました。
 二酸化硫黄の1日あたりの放出量は、3月4日以降は1,000トン以下に減少しました。
 3月11日に実施した中岳第一火口の現地調査では、火口底の噴気孔温度は約170℃7)(前回2月28日、約180℃)と、2014年1月までの300℃前後よりも低下しました。
 噴火予報発表以降、火山活動に変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。火口内及び火口近傍では、土砂や火山灰等が噴出する可能性があります。また、火口付近では引き続き火山ガスに注意してください。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。



1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
3)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
6)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5〜1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s以上のものを孤立型微動としています。
7)赤外放射温度計で観測しています。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定できる利点がありますが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合があります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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