平成26年 No.01 週間火山概況 (平成25年12月27日〜平成26年1月2日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
27日、阿蘇山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成25年12月27日〜平成26年1月2日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
12月27日 10時00分 |
阿蘇山 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 1月2日現在の火山現象に関する警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 西之島※、硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月2日)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙高度は、火口縁上0〜50mで経過しました。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
西之島では、活発な噴火活動が続いています。
今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年9月頃からほぼ停滞していましたが、11月頃から沈降に転じています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
12月28日に、第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測によると、変色水等は認められませんでした。海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]←27日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)に引上げ
阿蘇山では、12月20日頃から火山性微動の振幅が次第に大きくなり、その後も大きな状態が続きました。孤立型微動及び火山性地震は少ない状態で経過しています。
12月24日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,100トンと前回(12月12日、700トン)よりも増加しました。また、12月25日に実施した、中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は1割以下で、火口内の中央付近では、高さ10m程度の土砂噴出を確認しました。
以上のように、中岳第一火口の火山活動は高まっており、火口から概ね1kmの範囲に大きな噴石1)を飛散させる噴火が発生する可能性があると判断し、12月27日10時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。
12月31日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり900トンとやや多い状態が続いていました。
火山性微動の振幅は、1月2日に急激に小さくなり、1月3日(期間外)には12月20日より前の状態に戻っています。
阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)に注意してください。

図2 阿蘇山 平均振幅(中岳西山腹地震計)及び二酸化硫黄放出量経過図(2013年7月1日〜2014年1月3日)
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計2)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、噴火活動が続いています。 大隅河川国道事務所の有村観測坑道及び京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計及び伸縮計では、12月19日頃から山体の膨張と考えられるわずかな変化が継続していましたが、12月29日以降停滞し、12月31日以降は収縮に転じています。
昭和火口では、爆発的噴火は発生しませんでしたが、小規模な噴火が12月27日に発生しました。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を12月30日から31日に観測しました。
南岳山頂火口では、12月29日にごく小規模な噴火が発生しました。
GPS連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、6月頃から停滞気味です。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、12月26日(期間外)以降、活発な噴火活動が続いています。
12月29日00時頃から03時過ぎにかけて、空振を伴う火山性微動が連続して発生しました。噴煙は雲のため不明でしたが、連続的な噴火が発生していたと考えられます。その後も断続的に爆発的噴火が発生しています。12月29日には125回の爆発的噴火を観測しました。爆発的噴火の日別回数が100回を超えたのは2006年3月3日(144回)以来です。
爆発的噴火に伴う空振の最大振幅は、12月29日12時08分に観測した91パスカルでした(火口から南南西約4kmの榊(さかき)戸(ど)原(ばる)観測点による)。また、噴煙の最高高度は火口縁上1,000mでした。
遠望カメラでは、火口付近に飛散する噴石1)を時々観測しました。夜間には、高感度カメラで確認できる程度の火映を期間を通して観測しました。
十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、島内では空振によるガラスやふすま等の揺れが感じられた他、爆発音や鳴動が確認されています。また、1月1日に集落で降灰が確認されています。
火山性地震はやや多い状態で経過し、噴火に伴う火山性微動を観測しています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
表3 諏訪之瀬島 爆発的噴火の日別回数(2013年12月26日〜2014年1月2日)


図3 諏訪之瀬島 1分間平均振幅(トンガマ南西観測点・上下動成分)(2013年12月26日〜2014年1月2日)
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
八甲田山 [噴火予報(平常)]
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」以降、八甲田山周辺を震源とする地震が増加した状態で経過しています。
2013年12月29日に南八甲田火山群櫛ヶ峰(くしがみね)の東側を震源とする火山性地震が増加し、日別地震回数は16回となりました。この日別地震回数は計数開始(2013年6月5日)以降で最多となります。
2013年2月頃以降は大岳山頂直下付近の地震活動が主となっていますが、今期間は南八甲田火山群での地震が一時的に増加したもので、その中では14時02分頃発生したマグニチュード1.7の地震が最大規模となっています。30日以降、地震は少ない状態となり、今期間の合計回数は20回でした。
今期間、GPS連続観測データに特段の変化はみられませんでした。
今後の活動の推移に注意してください。

図4 八甲田山 日別地震回数(2013年6月5日〜2014年1月2日)
蔵王山 [噴火予報(平常)]
蔵王山では、2014年1月3日(期間外)の14時05分頃に火山性微動が発生しました。火山性微動の発生は2013年12月8日以来です。坊平観測点での継続時間は約1分と短く、最大振幅(上下動)も0.5μm/sと小さなものでした。今期間、火山性地震は5回発生し、火山性微動の発生前後に4回(期間外)発生しましたが、地震活動の活発化はみられません。
今期間、傾斜計2)、GPS連続観測、空振計の各データに特段の変化はみられませんでした。
ただちに噴火する兆候は認められませんが、2013年1月頃以降、火山活動の高まりがみられますので、今後の活動の推移に注意してください。

図5 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日〜2014年1月3日)
伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
12月21日頃から伊豆大島の東部を中心に火山性地震が増え始め、12月30日21時55分に発生したマグニチュード2.1の地震により大島町波(は)浮(ぶ)港で震度1を、1月2日02時15分に発生したマグニチュード2.4の地震により大島町波浮港で最大震度2を、1月3日(期間外)08時21分に発生したマグニチュード2.7の地震により大島町波浮港などで最大震度2を観測しました。これらの地震はいずれも伊豆大島の東部を震源とするものでした。
これらの地震に伴い、火山性地震が増加し、2日30回、3日には80回を観測しましたが、4日27回、5日は8回と減少しました。
GPSによる観測では、地下深部へのマグマの供給によると考えられる島全体の長期的な膨張傾向が続いていますが、2011年頃から鈍化してきています。その他の観測データには、活動状態の変化を示すデータはみられないことから、直ちに噴火する兆候は認められません。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。