平成25年 No.43 週間火山概況 (平成25年10月18日〜10月24日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
22日、霧島山(新燃岳)に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げました。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(10月18日〜10月24日)
発表日時 | 火山名 | 特別警報・ 警報・予報 |
概要 |
10月22日 18時00分 |
霧島山 (新燃岳) |
火口周辺警報 | 噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)に引下げ |
10月21日 11時02分 |
桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 10月24日現在の噴火警報・予報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(10月24日)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、視界不良のため不明の期間がありますが、噴煙は観測されませんでした。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
18日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200トン(前回10月3日、300トン)とやや少ない状況でした。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、火山性地震は少ない状態で経過しました。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年5月頃から隆起の傾向がみられていましたが、9月頃からほぼ停滞しています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←22日に噴火警戒レベル3(入山規制)から引下げ
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が14回発生し、大きな噴石2)は最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。21日10時35分の噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上4,500mまで上がりました。また、20日23時14分の爆発的噴火に伴い、ごく小規模の火砕流が昭和火口の東側に約300m流下しました。同火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を18日に観測しました。
南岳山頂火口では噴火の発生はありませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向が見られましたが、6月頃から停滞気味です。鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線で、長期的な伸びの傾向が続いています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、21日にごく小規模な噴火が発生しました。
同火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測しました。また、十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、21日には御岳の南南西約4kmの集落で少量の降灰、鳴動を確認しています。
火山性地震は、少ない状態で経過し、火山性微動が時々発生しています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
19日の23時30分頃と23日03時11分頃に火山性微動が発生しました。坊平観測点での継続時間と最大振幅(上下動)は、19日が約17分、3.4μm/s、23日が約1分30秒、0.8μm/sでした。23日の微動終了直後には計測基準未満の火山性微動もみられました。火山性微動が観測されたのは2013年7月31日以来です。
19日の火山性微動に伴って微小な傾斜計データ1)の変化がみられましたが、このような変化はこれまでもみられており、その他の観測データに特段の変化はみられませんでした。23日の火山性微動に伴い傾斜計データに特段の変化はみられませんでしたが、その後、火山性地震がやや多い状況となり、23日05時頃から24日08時頃にかけて、御釜直下の浅いところが震源と推測されるものが21回発生しました。今期間に発生した火山性地震は30回(前期間:1回)で、その内の29回が低周波地震でした。
今期間、空振計やGPS連続観測では特段の変化は認められません。
ただちに噴火する兆候は認められませんが、今後の活動の推移に注意してください。

図2 蔵王山 火山性微動と火山性地震の発生状況(2013年1月1日〜2013年10月24日)
口永良部島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
9月中旬頃に振幅の小さな火山性地震がやや増加しました。その後、増減を繰り返しており、10月20日からやや多い状態が続いています。
口永良部島では、これまでにも火山性地震が増加し、それに伴い浅部の膨張を示す地殻変動が観測されることがありましたが、今回の活動では、地殻変動や噴煙活動に特段の変化はありません。
現在のところ、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、今後の活動の推移に注意してください。
新岳火口内では噴気活動が続いており、火山灰等の噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。