平成25年 No.39 週間火山概況 (平成25年9月20日〜9月26日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 25日、阿蘇山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。その他の火山については、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(9月20日〜9月26日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
25日 15時40分
阿蘇山 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
20日 17時05分
25日 13時00分
26日 10時35分
桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 9月26日現在の噴火警報・予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、阿蘇山、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(9月26日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙の状況は視界不良のため不明の期間がありますが、その他の期間では噴煙高度は、火口縁上0〜100mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過しました。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年4月頃からほぼ停滞していましたが、5月頃から隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 阿蘇山では、23日夜から火山性地震の回数が増加し、24日以降非常に多い状態となりました。また、25日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,900トン(前回9月19日、500トン)と多い状態でした。このことから、中岳第一火口の火山活動は高まっており、火口から概ね1kmの範囲に大きな噴石2)を飛散させる噴火が発生する可能性があると判断し、25日15時40分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げました。
 火山性地震は26日現在も非常に多い状態が続いており、日発生回数は、23日62回、24日2,413回、25日1,925回、26日1,112回です。また、26日の現地調査でも、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,000トンと多い状態が継続しています。
 なお、24日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は3割(前回9月17日、4割)で、温度は76℃(前回9月17日、76℃)とやや高い状態ですが、火口内及びその周辺の状況に特段の変化は認められませんでした。GPS連続観測では、火山活動によると考えられる変化は認められません。
 阿蘇山では、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では降灰および風の影響を受ける小さな噴石に注意してください。

阿蘇山 火山性地震の発生状況(上図)および二酸化硫黄の放出量(下図)

図2 阿蘇山 火山性地震の発生状況(上図)および二酸化硫黄の放出量(下図)


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞していましたが、2013年4月頃からわずかな縮みの傾向がみられます。
 現在でも火口には高温の溶岩が溜まっており、引き続き、小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が24回発生し、大きな噴石は最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。25日12時42分の爆発的噴火では、多量の噴煙が火口縁上4,000mまで上がり、同日に実施した現地調査および聞き取り調査の結果、桜島島内から種子島にかけて降灰が確認されました。鹿児島市有村町(昭和火口から南側約3km)では、最大約2cmの小さな噴石2)(火山れき3))が降下し、数台の車でガラスが割れる等の被害が発生しました。また、26日10時18分の噴火では多量の噴煙が火口縁上4,500mまで上がり、同日に実施した現地調査および聞き取り調査の結果、桜島島内から指宿市や南大隅町にかけて降灰が確認されました。鹿児島市有村町では、最大約1.5cmの小さな噴石(火山れき)を確認しました。鹿児島県によると、この噴火に伴う被害はありませんでした。同火口では、高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を21日から22日にかけて観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火はありませんでした。
 26日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,900トン(前回9月19日、2,200トン)と多い状況でした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、桜島島内の基線で、2011年11月頃から伸び、2012年7月頃からその鈍化が見られましたが、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向が見られます。鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島では、活発な噴火活動が続いています。
 御岳(おたけ)火口では、23日12時51分に爆発的噴火が発生しました。
 同火口では、24日の夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
 26日11時59分に諏訪之瀬島付近を震源とするマグニチュード2.4の地震が発生し、十島村諏訪之瀬島で震度1を観測しました。この地震に伴い表面現象や傾斜計には特段の変化は認められませんでした。21日から25日にかけて火山性微動が断続的に発生しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

樽前山 [噴火予報(平常)]

 山体西側を震源とする地震活動は徐々に低下しつつありますが、23日02時34分にマグニチュード3.0の地震が発生し、伊達市大滝で震度1を観測しました。その後の地震活動は低調に経過しています。山頂溶岩ドーム直下の地震活動には、特段の変化はありません。
 山頂溶岩ドーム周辺では、1999年以降、高温の状態が続いていますので、突発的な火山ガスの噴出に注意してください。

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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