平成25年 No.37 週間火山概況 (平成25年9月6日〜9月12日)
【火山現象に関する警報等の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(9月6日〜9月12日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
6日 16時40分 6日 21時03分 7日 03時55分 12日 13時43分 |
桜島 | 降灰予報 | 噴火に伴う降灰地域予想 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 9月12日現在の噴火警報等の発表状況
特別警報・警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 火山現象に関する警報を発表中の火山(9月12日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、視界不良のため噴煙の状況は不明でした。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、火山性地震はやや少ない状態で経過しました。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年4月頃からほぼ停滞していましたが、5月頃から隆起の傾向がみられています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞していましたが、2013年4月頃からわずかな縮みの傾向がみられます。
現在でも火口には高温の溶岩が溜まっており、引き続き、小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が20回発生し、大きな噴石は最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。6日16時23分および12日13時26分の爆発的噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上3,300mまで上がりました。同火口では、夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測しました。
南岳山頂火口では、噴火はありませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、桜島島内の基線で、2011年11月頃から伸び、2012年7月頃からその鈍化がみられましたが、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられます。鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
諏訪之瀬島では、活発な噴火活動が続いています。
御岳(おたけ)火口では、爆発的噴火が1回発生(6日18時43分)し、中量の噴煙が火口縁上1,000mに達しました。また、6日17時14分の噴火では、中量の噴煙が火口縁上1,400mまで達しました。
同火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
火山性地震は少ない状態で、火山性微動は時々観測されました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
阿蘇山では、7日頃から火山性微動の振幅が次第に大きくなりました。その後も、やや大きい状態が続いています。孤立型微動と火山性地震は少ない状態で経過しています。
12日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は6割で、湯だまりの温度は71℃とやや高い状態でしたが、火口内及びその周辺の状況に特段の変化は認められませんでした。
阿蘇山では、今のところ火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、火山性微動の振幅がやや大きい状態が続いていることから、今後の火山活動の推移には注意する必要があります。火口内では土砂や火山灰等が噴出する可能性があります。また、火口付近では引き続き火山ガスに対する注意が必要です。
図2 阿蘇山 火山性微動の発生状況(2013年8月1日〜9月12日)

図3 阿蘇山 中岳第一火口の状況(左:9月12日撮影 右:8月27日撮影)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報※ | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。