平成25年 No.24 週間火山概況 (平成25年6月7日〜6月13日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(6月7日〜6月13日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
13日09時25分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
13日13時50分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 6月13日現在の噴火警報・予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(6月13日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙高度は、火口縁上0〜100mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過しました。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年1月頃から、わずかに隆起の傾向がみられていましたが、4月からはほぼ停滞しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(旧噴火口等)及び南東沖(翁(おきな)浜(はま)沖)では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測結果では、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は 2011 年12 月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012 年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞していましたが、2013 年4月頃から再びわずかな縮みの傾向がみられています。
 しかし、現在でも火口には高温の溶岩が溜まっており、火口直下の火山性地震も発生していることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。13日13時26分の爆発的噴火では、やや多量の噴煙が火口縁上3,300mまで上がりました。同火口では、高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測しました。南岳山頂火口では、噴火の発生はありませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測結果では、桜島島内の基線では、2011年11月頃から伸び、2012年7月頃からその鈍化が見られましたが、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向が見られます。鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線で、長期的な伸びの傾向が続いています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳では今期間、噴火は発生しませんでしたが、6月3日から5日(期間外)にかけて、ごく小規模な噴火が発生するなど噴火活動はやや活発化しています。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。12日の夜間には、高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
 硫黄岳火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う大きな噴石2)に警戒してください。風下側では降灰に注意してください。火山周辺では、火山ガスに注意してください。

* 3日に三島村役場硫黄島出張所から火山灰らしきものが降っているという通報がありました。出張所が採取した降下物を産業技術総合研究所が観察した結果、4日から5日にかけて発生した噴火による火山灰と同じ特徴が認められたことから、3日にもごく小規模な噴火が発生していたと考えられます。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間、噴火はありませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動が時々発生しています。
 同火口では、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】

十勝岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 9日20時30分頃から23時10分頃にかけて、大正火口付近が高感度カメラ5)で明るく見える現象が観測されました。この現象の発生は昨年8月13日以来で、規模としてはごく小さなものでした。この現象は火口内での高温の火山ガスの噴出や硫黄の燃焼等によるものと推定されます。
 今期間は上記の現象以外、火山性地震は少なく、傾斜計やGPSによる地殻変動にも特段の変化は認められませんでした。62-2火口の噴煙の状況にも変化はありませんでした。
 現在のところ、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、大正火口や62-2火口付近には近付かないよう注意してください。また、風で流される火山ガスにも注意して下さい。
十勝岳 大正河口付近が明るく見える現象と遠望カメラ位置及び撮影方向(赤矢印)
図2 十勝岳 大正河口付近が明るく見える現象と遠望カメラ位置及び撮影方向(赤矢印)

八甲田山 [噴火予報(平常)]

 八甲田山では、2013 年2月以降、山頂直下を震源とする地震が散発的に発生しており、今期間も広域地震観測網による観測では、山頂直下を震源とする地震が3回発生しています。また、東北地方太平洋沖地震(2011 年3月11 日)以降、八甲田山周辺を震源とする地震はやや多い状態で経過しています。
 国土地理院の観測によると、八甲田山を囲む基線では、2月頃以降小さな膨張性の地殻変動がみられます。
 ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられませんが、今後の火山活動の推移に注意してください。
八甲田山 広帯域地震観測網による山頂付近及び周辺の地震活動
図3 八甲田山 広帯域地震観測網による山頂付近及び周辺の地震活動(2008年6月1日〜2013年6月13日)


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
5)北海道が設置したカメラによります。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。


このページのトップへ