平成25年 No.22 週間火山概況 (平成25年5月24日〜5月30日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。
表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(5月24日〜5月30日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 5月30日現在の噴火警報・予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(5月30日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過しました。
火山性地震は、少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
火山性地震は、24日に一時的に増加したほかは、少ない状態で経過しました。
火山性微動が27日(継続時間は約1分10秒)と28日(継続時間は約50秒)に1回ずつ発生しました。これらの火山性微動が観測された時間帯に、その他の観測データに異常は認められませんでした。硫黄島で火山性微動が観測されたのは4月21日(継続時間:約2分20秒)以来です。
国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年1月頃から、わずかに隆起の傾向がみられていましたが、4月からはほぼ停滞しています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(旧噴火口等)及び南東沖(翁浜(おきなはま)沖)では噴火に警戒してください。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関によるこれまでの上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の広域的な地殻変動観測結果では、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は 2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかに縮みの傾向が見られていましたが、同年9月頃から停滞しています。
しかし、火口には高温の溶岩が溜まっており、火口直下の火山性地震も発生していることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。昭和火口では、爆発的噴火が10回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。このうち30日20時20分の爆発的噴火では、ごく小規模な火砕流が昭和火口の東側約700mまで流下しました。同火口からの噴火で火砕流が観測されたのは、2013年2月23日以来です。また、同火口では、高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測しました。南岳山頂火口では、噴火の発生はありませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。27日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり3,400トン(前回20日、2,100トン)と非常に多い状況でした。国土地理院の地殻変動観測結果によると、一部の基線では姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の膨張を示す伸びの傾向が続いています。
27日頃から大隅河川国道事務所の有村観測坑道および京都大学防災研究所のハルタ山観測総合坑道に設置している傾斜計および伸縮計で、山体の膨張と考えられるわずかな変化が継続しています。昨年(2012年)7月24日の南岳山頂火口の噴火の前にも同様の変化が見られており、今回も同程度の規模の、多量の噴煙を噴出する噴火が発生する可能性があります。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間、噴火はありませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
連続した火山性微動は引き続き発生しています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
薩摩硫黄島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
薩摩硫黄島では、5月中旬頃から振幅の小さな火山性地震の回数が増加していましたが、27日から次第に減少しています。また、地殻変動や噴煙活動にも特段の変化は認められません。
現在のところ、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、硫黄岳火口では噴煙活動が続いており、火口内では火山灰等の噴出する可能性があります。今後の活動の推移に注意してください。
また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要です。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。