平成25年 No.10 週間火山概況 (平成25年3月1日〜3月7日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月1日〜3月7日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 3月7日現在の噴火警報・予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(3月7日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 6日00時38分頃に振幅のやや大きい火山性地震が発生し、現地では一部の住民が揺れを感じたとのことです。この地震の発生に伴う空振はありませんでした。また、噴煙や地殻変動にも特段の変化はみられませんでした。
 7日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり400トン(前回2月21日、400トン)とやや少ない状況でした。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震はやや少ない状態ですが、増減を繰り返しながら経過しています。5日18時24分には振幅の大きい火山性地震が発生しました。この地震に伴う空振は風の影響で不明です。硫黄島の海上自衛隊によると揺れは感じられず、音や噴気の状態にも異常はみられなかったとのことです。
 硫黄島の海上自衛隊が6日の朝、地上から島内を見回ったところ、特段の異常は認められなかったとのことです。その後、上空から確認したところ、旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)で、2月19日に上空から確認した際にはみられなかった、直径約15mの新たな陥没孔が確認されたとのことです。なお、この陥没孔の周辺には新たな泥や岩石が飛散している様子はみられなかったとのことです。この事象が発生した詳細な日時は不明ですが、5日18時台を中心に他にも振幅のやや大きい火山性地震が幾つか発生しており、6日06時頃まで火山性地震の発生は継続していること等から、5日の夕方から6日朝の間に陥没を伴いながらごく小規模の水蒸気爆発が発生したものと考えられます。
 火山性微動は観測されませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動はほぼ停滞していましたが、2013年1月頃から、わずかに隆起の傾向がみられています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(旧噴火口等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震が5日以降増加し、5日は67回、6日52回、7日10回、8日12時(期間外)までで57回(速報値)とやや多い状態が続いています。火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 新燃岳の北西数㎞の地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張は、2011年12月以降鈍化・停滞しています。国土地理院の地殻変動観測結果によると、2012年5月頃からわずかに地盤の縮みの傾向がみられていましたが、2012年9月頃から停滞しています。
 しかし、火口には多量の溶岩が溜まっており、火口直下の火山性地震がわずかながらも続いていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒してください。降雨に関する情報に留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が18回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。また、同火口では、7日に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を観測しました。
 南岳山頂火口では、噴火の発生はありませんでした。
 火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間、爆発的な噴火はありませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
 火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動が引き続き連続して発生しています。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


箱根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 駒ヶ岳付近から仙石原付近の浅部を震源とする地震活動は、今期間は少ない状態で経過しています。遠望カメラによる観測では、噴気の状況に特段の変化はみられていません。今期間、気象庁が震度情報の発表に使用する震度計で、震度1以上を観測する地震はありませんでした。また、神奈川県温泉地学研究所によると、同研究所が大涌谷に設置している地震計でも体に感じる揺れは観測されませんでした。
 気象庁が湯河原鍛冶屋に設置している体積ひずみ計5)や、気象庁及び神奈川県温泉地学研究所が設置している傾斜計1)では、1月上旬頃から、山体の膨張を示すわずかな変化が引き続きみられていますが、2月中旬頃から鈍化する傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果では、2012 年末頃から、箱根山周辺の一部の基線にわずかな伸びの傾向が引き続きみられています。
 箱根山では、2001 年6月から10 月にかけて地震が多発し、国土地理院等の地殻変動観測で山体の膨張を示す変化がみられ、噴気活動が活発化しました。現時点では、2001 年と比較して地殻変動は小さく、噴気等の状況に特段の変化はみられず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。


阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 中岳第一火口では、2月11日以降から孤立型微動6)が1日あたり200回以上と多い状態が継続していましたが、3月4日以降は1日あたり2〜6回に減少しました。
 4日、5日、6日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり400トン(前回2月21日300トン)と少ない状況でした。また、湯だまり量は9割、温度は56〜58℃(前回2月27日、湯だまり量9割、温度54℃)と湯だまりの状況に特段の変化はありませんでした。
 阿蘇山では火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。火口内では土砂や火山灰の噴出する可能性があります。また、火口付近では火山ガスに注意してください。

阿蘇山 孤立型微動の発生回数
図2 阿蘇山 孤立型微動の発生回数(2012年12月1日〜2013年3月7日)

口永良部島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 1月中旬頃から振幅の小さな火山性地震の回数がやや増加していましたが、3月1日以降は回数が少ない状態が続いています。振幅の小さな火山性微動が引き続き発生しています。
 口永良部島では、これまでにも火山性地震が増加し、それに伴い浅部の膨張を示す地殻変動が観測されることがありましたが、現時点では、地殻変動や噴煙活動に特段の変化はありません。
 現在のところ、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められませんが、今後の活動の推移に注意してください。

口永良部島 火山性地震の発生回数
図3 口永良部島 火山性地震の発生回数(2007年1月1日〜2013年3月7日)

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
5)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されます。
6)阿蘇山特有にみられる、周期0.5〜1.0秒、継続時間が10秒程度の短い微動です。火山活動が活発化していくとその回数が増加することがあります。火口直下の浅いところの熱水の活動と関連しているとされています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。


このページのトップへ