平成25年 No.4 週間火山概況 (平成25年1月18日〜1月24日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(1月18日〜1月24日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 1月17日現在の噴火警報・予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月24日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
22日16時38分頃、山頂火口でごく小規模な噴火が発生しました。
噴火に伴い、白色の噴煙が火口縁上200mまで上がり、南東方向へ流れました。また、ほぼ同時刻に、地震計や空振計で、振幅のやや大きな低周波地震と弱い空振を観測しました。この地震で、三宅村神着と三宅村役場臨時庁舎で震度1を観測しました。噴火の発生した16時台に、火山性地震が一時的に増加しましたが、その後は減少しています。地殻変動などその他の観測データには特段の変化はみられませんでした。22日夕方に行った現地調査では、島の東側(山頂火口から約3km)で、ごく少量の降灰を確認しました。この噴火は、ごく少量の火山灰を噴出する程度の小さなものであり、火山活動の活発化を示すものではなく、警報事項に変更はありません。三宅島で噴火が発生したのは2010年7月21日以来です。
今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過しました。
火山性地震は22日を除き、期間を通じてやや少ない状況でした。
三宅村によると、山麓では時々やや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
海上自衛隊の協力により22日から25日(期間外)に実施している現地調査では、特段の変化は認められていません。
火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
国土地理院の観測によると、今期間、地殻変動はほぼ停滞しています。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
22日に第三管区海上保安本部が、23日に海上自衛隊の協力により気象庁が実施した上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に火山活動によるとみられる湧出点付近において、乳白色〜青みを帯びた白色の変色水が確認されました。23日の観測では、湧出点付近から、南方向へ幅数10m、長さ数100mにわたって緑青色の変色水が伸びているのを確認しました。
これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測でも、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
新燃岳の北西数㎞の地下深くにあると考えられるマグマだまりの膨張は、2011年12月以降鈍化・停滞しています。国土地理院の地殻変動観測結果によると、2012年5月頃からわずかに地盤の縮みの傾向がみられていましたが、2012年9月頃から停滞しています。
しかし、火口には多量の溶岩が溜まっており、火口直下の火山性地震がわずかながらも続いていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が22回発生しました。このうち20日04時01分の爆発的噴火では、大きな噴石2)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m)まで達しました。また、同火口では21日に、夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を観測しました。
南岳山頂火口では、噴火の発生はありませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。24日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり4,100トン(前回10日、3,500トン)と非常に多い状態でした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
また、降雨時には土石流に注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間、爆発的な噴火はありませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動が引き続き連続して発生しています。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
蔵王山 [噴火予報(平常)]
22日09時台に、蔵王山付近のやや深い場所が震源と推定される低周波地震が連続して発生しました。22日10時以降も同じ場所が震源とみられる低周波地震が散発的に発生しましたが、24日以降は観測されていません。
低周波地震が増加した時間帯を含む今期間、地殻変動観測や遠望観測等に特段の変化は観測されておらず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。
箱根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
18日未明から、駒ヶ岳付近の浅い所を震源とする地震が増加しています。気象庁が湯河原に設置している体積ひずみ計5)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計1)等による地殻変動観測では、山体の膨張を示すわずかな変化がみられています。国土地理院の地殻変動観測結果によると、今回の活動と関連する明瞭な変化はみられていません。
箱根山では、2001年6月から10月にかけて地震が多発し、国土地理院等の地殻変動観測でも山体の膨張を示す変化がみられ、噴気活動が活発化しました。現時点では、地殻変動は小さく噴煙等の状況に特段の変化はみられず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められません。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
5)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されます。
注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
【参考】 噴火警報・予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。