平成24年 No.35 週間火山概況 (平成24年8月24日〜8月30日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(8月24日〜8月30日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
8月29日 | 青ヶ島 | 火山現象に関する海上警報 | 変色水観測 周辺海域警戒 |
表2 8月30日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島※ | |
噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場※ |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 青ヶ島※ | |
上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報発表中の火山(8月30日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、視界不良のため噴煙の状況は確認できませんでしたが、火山活動に特段の変化は認められませんでした。
火山性地震はやや少ない状態で経過しました。
29日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり1000トン(前回16日、800トン)とやや多い状況でした。
三宅村によると、山麓では時々やや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
国土地理院の観測によると、今期間、地殻変動はほぼ停滞しています。火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動は、1日あたり0〜4回観測されていますが、いずれも継続時間は30秒〜3分程度でした。これらの火山性微動が観測された時間帯に、火山性地震の増加や空振、表面現象は認められませんでした。
硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、2012年4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過していましたが、30日14時頃から新燃岳の火口付近を震源とする振幅のやや大きな火山性地震が一時的に増加しました。17時以降は減少し、21時以降は観測されていません。30日の地震回数は17回でした。地震の日回数が10回を上回るのは本年5月12日以来です。火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、2012年1月以降ほぼ停滞していましたが、一部の基線では5月頃からわずかに縮みの傾向がみられます。
しかし、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりには相当量のマグマが蓄積されています。また、新燃岳直下の火山性地震は少ないながらも続いており、火口には高温の溶岩が溜まっていることから、現在でも小規模な噴火が発生する可能性は否定できません。
新燃岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。噴火警報や霧島山上空の風情報に留意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。降雨に関する情報に留意してください。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島では、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が11回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を25日から26日にかけて観測しました。
南岳山頂火口では、期間中、噴火の発生はありませんでした。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
また、降雨時には土石流に注意してください。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いています。28日に同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要です。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石4)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳火口では今期間噴火は観測されませんでしたが、長期にわたり噴火を繰り返しています。
また、24日に同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
択捉焼山 [噴火予報]
25日07時00分の気象衛星画像で海抜約4000mの噴煙を観測しました。これに伴い、25日10時06分に航空路火山灰情報5)を発表しました。その後、気象衛星画像で噴煙は観測されていません。
択捉島を訪れていた北海道大学によると、噴火活動は15日から始まったと考えられ、25〜26日の2日間で合わせて4回の噴火が確認されました。このうち1回は噴煙が海抜約4000〜5000mにまで達しています。
図2 択捉焼山 噴火時の状況 (左:25日14時54分 北北西側から撮影、右:26日18時04分 北側から撮影)
青ヶ島 [噴火予報(平常)及び火山現象に関する海上警報]
海上保安庁が26日に実施した上空からの観測によると、これまで変色水の見られなかった島の南端から南東方向約1300m付近(水深63m)に、直径約900m程度の円形の薄緑色の変色水が確認されました。また、島の北端の海岸付近に多量の薄茶褐色及び薄緑色の変色水、島の南東端東側の海岸付近に薄茶褐色及び薄緑色の変色水が確認されました。
変色水が確認された周辺海域には近付かないようにしてください。
地震活動や地殻変動には特段の変化は観測されておらず、島内で噴火が発生する兆候は認められません。
図3 青ヶ島 南端から南東方向の変色水(赤丸で囲った領域)(26日 西方向から撮影)
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等によります。
5)航空路火山灰情報は、航空機の安全運航のために発表している情報です。世界9か所に情報提供を行なうセンターが設置されており、東京センターでは東アジア及び北西太平洋領域を担当しています。
注)データについては精査により、後日修正することがあります。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。