平成24年 No.22 週間火山概況 (平成24年5月25日〜5月31日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事柄)に変更はありません。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(5月25日〜5月31日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 5月31日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺警報及び火山現象に関する海上警報 | 火口周辺危険及び周辺海域警戒 | 硫黄島 |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報発表中の火山(5月31日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は、火口縁上最大100〜300mで経過しました。
火山性地震はやや少ない状態で経過しました。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要です。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要です。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]
4月下旬から5月初めにかけて火山活動が活発化し、国土地理院の地殻変動観測でも、急速な隆起の後に沈降を観測しましたが、その後傾向は鈍化し、今期間はほぼ停滞しています。火山性地震は少ない状態で経過しており、火山性微動は観測されませんでした。
海上自衛隊の協力により、23日から24日(期間外)に実施した現地調査では、島北部の為八海岸の崖の一部に新しい崩落箇所があり、そこからごく少量の噴気が上がっているのを確認しました。また、同海岸の沖合数100m付近の海面に、3箇所ほど白色の変色水が湧昇しているのを確認しました。その他、島東部の離岸温泉跡では、前々回(2011年11月)、前回(2012年3月)の現地観測結果と比較して、隆起により海岸線が後退して拡大したと思われる砂浜に湯だまりがあり、周辺の噴気量も前回と比較して多く立ち上っているのを確認しました。これらの現象は、4月下旬から5月初めにかけて活発化した火山活動による影響と推定されます。
地震活動は2011年2月末頃から比較的活発な状態であり、2012年2月以降はごく小規模な水蒸気爆発や海底噴火が発生した可能性が考えられる変色水が確認されるなど、硫黄島の火山活動はやや活発な状態が継続しています。以上のことから、今後も火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、4月末に新たに噴気が確認された島北部や変色水がみられた北東沖、従来から小規模な噴火がみられていた島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要です。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要です。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しませんでした。
火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態が続いているものの、今期間は少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されませんでした。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、その後停滞しています。
新燃岳火口から概ね3kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。2011年の噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石(火山れき)が新燃岳火口から10kmを超えて降っています。
また、爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要です。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島は、活発な噴火活動が続いています。
昭和火口では、爆発的噴火が6回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。
南岳山頂火口では、噴火は発生しませんでした。同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生しました。
国土地理院の地殻変動観測結果によると、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられています。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いています。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳火口ではごく小規模な噴火が時々発生しました。また同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測しました。
火山性地震は少ない状態で経過しました。火山性微動が時々発生しました。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要です。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき3))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。 1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、 「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがあります。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。