平成24年 No.15 週間火山概況 (平成24年4月6日〜4月12日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事柄)に変更はない。


表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(4月6日〜4月12日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 4月12日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(4月12日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は、火口縁上100〜200mで経過した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 9日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり700トン(前回3月22日、600トン)とやや多い状態であった。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。  山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 5日夕方頃(期間外)から6日昼前にかけて、地震計・空振計で、ごく小規模な水蒸気爆発に伴うと推定される断続的な震動が観測された。 島内の海上自衛隊からの情報によると、5日午後(期間外)から6日午後にかけて、島西部の旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)から 間欠的な音の発生とガスの噴出が確認された。その後、地震計や空振計に特段の変化は認められない。
 11日17時39分頃のスマトラ北部西方沖の地震(M1)8.6)及び19時43分頃の同地域の地震(M1)8.2)の発生後に一時的に地震が増加したが、 その後、減少している。硫黄島では、このような遠地地震の発生後に誘発されて地震が増加した例として、1983年5月26日の日本海中部地震(M1)7.7)や 1993年8月8日のマリアナ諸島付近の地震(M1)8.0)等がある2)。なお、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M1)9.0)発生後は 地震の増加は認められなかった。
 地震活動は、2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いている。今期間、遠地地震発生後の地震の増加により火山性地震はやや多い状態で経過した。  国土地理院の地殻変動観測では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す変動は、2011年1月末頃から隆起速度が増加していたが、 同年12月下旬頃からやや鈍化している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部及び南東沖(翁浜沖)では 噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。 これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。
 傾斜計3)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
 6日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり100トン(前回3月22日、100トン)と少ない状態であった。
国土地理院の地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、 その後停滞している。
 新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石4)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石4)(火山れき5))に注意が必要である。 2011年からの噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石4)(火山れき5))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。 また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島は、活発な噴火活動が続いている。
 昭和火口では、爆発的噴火が29回発生し、大きな噴石4)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。 また、同火口では夜間に高感度カメラ6)で明瞭に見える火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、6日から8日にかけてごく小規模な噴火が時々発生した。
 火山性地震は、11日にやや増加したが、それ以外は少ない状態で経過した。噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
 国土地理院の地殻変動観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石4)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも 小さな噴石4)(火山れき5))に注意が必要である。
 また、爆発的噴火に伴う大きな空振や、降雨時には土石流に注意が必要である。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石4)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。 同火口では9日夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では 大きな噴石4)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石4)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】



 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。


1)マグニチュード(M)は地震の規模を表す。
2)鵜川元雄・藤田英輔・熊谷貞治(2002) 遠地地震により遠隔誘発された硫黄島火山の微小地震活動. 地学雑誌, 111(2), 277-286.
3)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
4)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、 「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
5)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
6)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。



注)データについては精査により、後日修正することがある。




【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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