平成24年 No.14 週間火山概況 (平成24年3月30日〜4月5日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事柄)に変更はない。


表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月30日〜4月5日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 4月5日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(4月5日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は、火口縁上0〜100mで経過した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。 また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 5日17時頃から、地震計・空振計で、ごく小規模な水蒸気爆発に伴うと推定される断続的な震動が6日昼前(期間外)にかけて観測された。島内の海上自衛隊からの情報によると、5日午後から島西部の旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)から間欠的な音の発生とガスの噴出が確認されており、6日正午現在も継続している。
 地震活動は、2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いている。今期間、火山性地震はやや少ない状態で経過した。
 国土地理院のGPS観測結果では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、 2011年1月末頃から隆起速度が増加していたが、同年12月下旬頃からやや鈍化している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、 福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では 噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態で続いている。火山性微動は観測されなかった。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
 国土地理院のGPS観測結果では、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月頃から鈍化し、 その後停滞している。
 新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。2011 年の噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2))(火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島は、活発な噴火活動が続いている。
 昭和火口では、爆発的噴火が29回発生し、このうち3日23時54分の爆発的噴火では、大きな噴石2)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、1日と2日にごく小規模な噴火が発生した。
 火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
 2日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり2,700トン(前回3月28日、2,400トン)と多い状態であった。  5日に海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て実施した上空からの調査で、昭和火口の火口底に、新たに上昇したと思われる少量(直径50〜60m)の溶岩を確認した(図2)。同火口では、過去に2011年5月31日と2011年7月11日にも同様の溶岩が確認されている。火口底は、2011年7月11日と比べるとやや浅かった。今回、溶岩が確認され、火口底もやや浅くなってはいるものの、確認された溶岩は少量で、地殻変動等のデータからみて、大量のマグマが桜島直下に移動している可能性は低く、ただちに火口外に溶岩を流出することはないと考えられる。しかしながら、引き続き活発な噴火活動が継続する可能性があるので、火山活動の推移に注意する必要がある。  国土地理院のGPS観測結果では、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。
 また、爆発的噴火に伴う大きな空振や、降雨時には土石流に注意が必要である。



 図2 桜島 昭和火口内の状況(4月5日現在)
昭和火口の火口底に新たに上昇してきたとみられる直径50〜60mの溶岩(図中赤丸)が確認された。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。4日と5日に火山性微動が発生した。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲 では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


恵山 [噴火予報(平常)]

 3月30日23時22分頃から継続時間約2分の振幅の小さな火山性微動が発生し、直後から31日未明まで微小な火山性地震が一時的に増加した。微動発生時の噴気の状況は雲のため不明だったが、4月2日に実施した現地調査では、恵山溶岩ドーム周辺の噴気や地熱域の状況に特段の変化は認められなかった。  現在のところ、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。


草津白根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 4月1日夜遅くから2日未明にかけ、振幅の小さな火山性地震が一時的に増加した。機器の障害等で震源の詳細は不明だが、震源の場所は湯釜の南付近と推定される。今期間、火山性微動は観測されていない。また、傾斜計では、この地震活動に伴う変化は認められない。その後、地震活動は収まっている。
 今期間、遠望カメラにより湯釜北側噴気地帯の噴気孔からごく弱い噴気が時々観測されるなど、山頂火口周辺では引き続き熱活動がみられているが、噴気等に今回の地震活動に伴う特段の変化は認められなかった。今回のような地震活動は、2011年6月5日から6日にかけての活動以来である。
 山頂火口から概ね500mの範囲では、火山灰の噴出等に警戒が必要である。また、ところどころで火山ガスの噴出が見られ、周辺の窪地や谷などでは滞留した火山ガスが高濃度になることがあるので、注意が必要である。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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