平成24年 No.7 週間火山概況 (平成24年2月10日〜2月16日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(2月10日〜2月16日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 2月16日現在の噴火警報・噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(2月16日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は、火口縁上100〜400mで経過した。
火山性地震はやや少ない状態で経過した。
10日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり900トン(前回1月13日、900トン)とやや多い状態であった。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
海上自衛隊からの通報を受けて14日から15日にかけて実施した現地調査では、島西部の旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)から最長で100m程度泥が飛散してい るのが確認された。現地海上自衛隊からの聞き取りによると、小規模な泥噴出は5日から10日の間に発生したと思われる。なお、当該期間に噴出に伴うと思われる震動 や空振は認められなかった。
地震活動は、2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いている。
国土地理院のGPS観測結果では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、 2011年1月末頃から隆起速度が増加していたが、同年12月下旬頃からやや鈍化している。 また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部 の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、 福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では 噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、噴火は発生しなかった。
火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
10日に海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て実施した上空からの調査では、前回(1月24日)と比較して、火口内に蓄積された溶岩の大きさ (直径約600m)や形状及び周辺の噴気の状況に変化がないことを確認した。白色の噴煙が、主に溶岩の北側及び東側から火口縁上50m程度上がっており、 一部には二酸化硫黄を含む青白色のガスを確認した。また、西側斜面の割れ目の一部では、前回の調査と同様にやや温度の高い部分2)が認められた。
国土地理院のGPS観測結果では、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は、2011年12月初め頃からやや鈍化し、 1月以降はほぼ停滞している。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石3)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方で も小さな噴石3)(火山れき4))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程 度の小さな噴石3)(火山れき4))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴 う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
桜島は、活発な噴火活動が続いている。
昭和火口では、爆発的噴火が11回発生し、大きな噴石3)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。 また、同火口では10日から11日にかけて夜間に高感度カメラ5)で明瞭に見える火映を観測した。
南岳山頂火口では、13日19時19分にごく小規模な噴火が発生した(南岳山頂火口でのごく小規模な噴火の発生は2011年12月13日以来)。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
国土地理院のGPS観測結果では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石3)及び火砕流に警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)(火山れき4))に注意が必要である。降雨時には土石流に 注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
火山性地震は少ない状態で経過した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を 時々観測した。
火山性地震は少ない状態で経過した。火山性微動は15日に2回発生した。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲 では大きな噴石3)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石3)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
富士山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
今期間、「富士山3合目付近で湯気が出ている」との通報があり、現地調査を実施した。その結果、湯気はごく弱く、温度も10℃程度で、 噴気音(噴出にともなう音)や硫黄臭は確認されなかった。その後も温度などに特段の変化はみられない。
地震活動や地殻変動のデータに特段の変化はなく、今回の現象は、現時点では、噴火活動と直接関連するものではないと考えられる。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)赤外熱映像装置により観測している。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定することができる 利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
3)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
5)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報・噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。