平成23年 No.43 週間火山概況 (平成23年10月21日〜 平成23年10月27日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(10月21日〜10月27日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 10月27日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(10月27日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙の状況は、悪天候のため確認できない期間もあったが、火口縁上100〜300mで経過した。
火山性地震は、少ない状態で経過した。
9月23日頃から、振幅が20分間程度の間隔で間欠的に増大する連続微動が発生し、28日13時(期間外)現在、振幅が減衰しながらも継続している。 このような現象は、2001年以降夏期に多くみられている。なお、微動の発生に際して、その他の観測データに特段の変化はみられない。
25日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり900トン(前回17日、700トン)と、やや多い状態であった。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
地震活動は、2011年2月末頃から高い状態が続いている。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加し、現在も続いている。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、 福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では 噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、9月7日の噴火以降、噴火の発生はない。
火山性地震は、やや多い状態が続いている。振幅のごく小さな火山性微動が22日に1回発生した。
傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
25日に航空自衛隊航空救難団新田原救難隊の協力を得て実施した上空からの調査では、前回(18日)と比較して火口内に蓄積された直径600m程度の大きさの溶岩 に特段の変化はなく、主に溶岩の東側及び北側から、白色の噴煙が火口縁上100m程度上がっているのを確認した。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の北西数kmの地下深くのマグマだまりへのマグマの供給を示す変化が続いている。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2) (火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では、爆発的噴火が20回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。26日15時42分の噴火では、火砕流が昭和火口の東側 約200mまで流下した。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を26日から27日にかけて観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は、少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、23日に噴火が1回発生した。この噴火に伴う噴煙の高さは火口縁上300mであった。 また、同火口では期間を通して夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
火山性地震及び火山性微動は、少ない状態で経過した。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
21日09時11分頃から継続時間5分程度の火山性微動が、27日19時30分頃からも継続時間3分程度の火山性微動が発生した。これらの微動に先立って、浄土平の 傾斜計1)(大穴火口の東約1km)では、火口方向上がりの微小な傾斜変動が観測されたが、微動の終了後に収まった。火山性微動の発生前後で、噴気の状況及 び地震活動に特段の変化はなかった。火山性微動は、4日、6日及び11日にも発生している。
大穴火口では、期間を通して夜間に高感度カメラで明るく見える現象を観測した。
噴気活動は、やや高い状態が続いている。地震回数は、やや少ない状況となっている。
吾妻山では、ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられないが、火口内では火山ガスの噴出がみられるので警戒が必要である。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒* |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
*居住地域が不明確な場合
海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。