平成23年 No.28 週間火山概況 (平成23年7月8日〜 平成23年7月14日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(7月8日〜7月14日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 7月14日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(7月14日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙の状況は、悪天候のため確認できない期間もあったが、その他の期間は火口縁上概ね200mで経過した。
火山性地震は、少ない状態で経過した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
地震活動は、2011年2月末頃から高い状態が続いている。
国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加し、現在も続いている。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると 、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域で は噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
新燃岳では、7月2日以降噴火の発生はない。
火山性地震は6日0時頃(期間外)から多い状態が続いている。振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が時々発生している。
傾斜計1)では、6日0時頃(期間外)から新燃岳側のわずかな隆起を示す変化が認められていたが、9日12時頃からゆるやかな沈降を示す変化に転じている。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の西側を中心に2月1日以降わずかな伸びの傾向がみられている。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2) (火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では、爆発的噴火が4回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達した。12日18時43分の噴火では、 火砕流が昭和火口から南東方向に約300m流下した。また、同火口では期間を通して夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
11日に九州地方整備局の協力を得て行った上空からの調査で、昭和火口の火口底に、新たに上昇したと思われる赤熱した少量の溶岩を確認した。同火口では、 前回(5月31日)の調査でも同様の溶岩を確認している。火山灰の噴出量や地殻変動に特段の変化はないことから、大量のマグマが桜島直下に移動した可能性は低く、 ただちに火口外に溶岩を流出することはないと考えられる。
12日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,300トン(前回6月28日、1,200トン)と、やや多い状態であった。
火山性地震は少ない状態で経過し、噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は、少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では14日に噴火が発生するなど、長期にわたり噴火を繰り返している。
火山性地震及び火山性微動は、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
焼岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
10日の夜から11日にかけて、焼岳の西方を震源とする地震が一時的に増加し、岐阜県高山市で最大震度1を観測する地震が2回発生した。12日以降、 この地震活動は収まっている。火山性微動や低周波地震は観測されていない。また、噴気の異常も確認されておらず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の 兆候は認められない。
富士山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
3月15日(期間外)の静岡県東部(富士山の南部付近)を震源とする最大震度6強の地震の後、地震活動が活発な状況となっていたが、 その後、地震活動は低下してきている。火山性微動や浅部の低周波地震は観測されなかった。 また、その他の観測データで浅部の異常を示すものはなく、噴火の兆候は認められない。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。