平成23年 No.11 週間火山概況 (平成23年3月11日〜 平成23年3月17日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月11日〜3月17日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
3月13日18時15分 霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 3月17日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(3月17日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜500mで経過した。
 火山性地震は、少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、2011年2月末頃から地震活動は高い状態にある。
 国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。 


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では13日17時45分に噴火が発生し、噴煙が火口縁上4,000mまで上がった。大きな噴石1)は確認できなかったが、小さな噴石1)(火山れき2))が新燃岳火口から南東方向約9kmの都城市夏尾町まで降下したことを確認した。
 火山性地震は増減を繰り返しながらやや多い状態が続いており、特に13日の噴火の直後に多い状態であった。火山性微動は13日の噴火に伴い発生したが、それ以降は発生していない。傾斜計では、3月11日3時頃から始まった新燃岳側隆起の変化は、噴火に伴い沈降に転じ隆起変化以前の状態に戻った。
 11日に航空自衛隊春日ヘリコプター空輸隊の協力を得て行った上空からの観測では、火口内に蓄積された溶岩に大きな変化はなかった。白色噴煙は、主に溶岩東側の亀裂及び縁辺部から200mまで上がっていた。また、火口内南東側に直径100m程度の火孔を確認した。
 同火口では14日に、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
 15日と17日に実施した現地調査では二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり200〜500トン(前回3月10日、500トン)と、やや少ない状態であった。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の西側で2月1日以降わずかに伸びの傾向がみられる。
 新燃岳火口から概ね4kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。新燃岳火口から概ね3kmの範囲では、火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。これまでの噴火では、 風に流されて直径4㎝程度の小さな噴石1)(火山れき2))が新燃岳火口から10㎞を超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が8回発生し、大きな噴石が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、15日に噴火が発生した。同火口では11日から12日にかけて、夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石1)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】



吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 12日夜から14日の明け方にかけて、上野寺の遠望カメラで、大穴火口付近に発光が確認された。この発光は硫黄の燃焼によるものと考えられる。同様の現象は、2010年5月にも確認されている。
 噴気活動は、やや高い状態が続いている。地震回数は少ない状況となっている。
 ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられないが、火口内では火山ガスの噴出がみられるので警戒が必要である。


焼岳 [噴火予報(平常)]

 11日午後から焼岳の北西部から北部にかけて地震活動が活発化し、11日22時09分にはマグニチュード3.5の地震が発生し、高山市上宝町で震度2を観測した。その後も16日にかけ、震度1を観測する地震が4回発生している。 その後地震活動は低下してきている。なお、火山性微動や低周波地震は観測されておらず、噴気異常等に関する通報もなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。


富士山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 15日22時31分頃、静岡県東部(富士山の南部付近)を震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、静岡県富士宮市で最大震度6強を観測した。その後、余震活動は徐々に低下してきている。また、火山性微動や低周波地震は観測されていない。 これらの地震活動に際し、その他の観測データで浅部の異常を示すものはなく、噴火の兆候は認められない。

箱根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 11日午後から箱根山周辺で地震活動が活発化し、震度2から1を観測する地震が発生した。その後、地震活動は徐々に低下してきている。気象庁が設置している体積歪計4)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計5)等による地殻変動観測では、 今回の地震活動に関連した変化はなかった。なお、火山性微動や低周波地震は観測されておらず、噴気等表面現象にも特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがある。
5)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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