平成23年 No.5 週間火山概況 (平成23年1月28日〜 平成23年2月3日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 霧島山(新燃岳)では、1月31日に火口周辺警報を切り替え、火砕流に対する警戒範囲をこれまでの2㎞から3㎞へ拡大した。また、2月1日に火口周辺警報 を切り替え、大きな噴石に対する警戒範囲をこれまでの2㎞から4㎞へ拡大した(噴火警戒レベル3(入山規制)は継続)。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(1月28日〜2月3日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
1月28日03時10分  霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
1月30日14時20分、15時15分  霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
1月31日01時35分  霧島山
(新燃岳)
火口周辺警報 火口周辺警報切り替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
2月1日08時15分、09時05分  霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
2月1日11時20分  霧島山
(新燃岳)
火口周辺警報 火口周辺警報切り替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
2月1日16時00分、21時00分、
23時50分
 霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
2月2日03時00分、05時50分、
09時00分、11時15分、
15時10分、16時20分、21時20分
 霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
2月3日09時15分、12時40分、
15時20分、18時05分、21時25分
 霧島山
(新燃岳)
降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 2月3日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島、霧島山(新燃岳)
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(2月3日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜400mで経過した。
 火山性地震は、少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 1月29日から30日にかけ海上自衛隊の協力により実施した現地調査では、前回(2010年7月29日)の観測と比べて、島西部の阿蘇台陥没孔(あそだいかんぼつこう)では、孔内の水位の上昇を確認した。また、今回も同様に、間欠的な泥混じりの熱水の噴出が確認された。なお、島内の噴気、地熱等の状況に大きな変化は認められなかった。
 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
 国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から一旦鈍化したが、現在も継続している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 1月28日に海上自衛隊の協力により実施した上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に火山活動によるとみられる白濁、薄茶色の変色水が確認されたが、浮遊物は確認されなかった。
 海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←1月31日、2月1日に火口周辺警報の切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)

 新燃岳では、爆発的な噴火を含む噴火が継続した。
 気象研究所と防災科学技術研究所が行った、だいち衛星画像(JAXA提供)の解析によると、1月28日に東京大学地震研究所によって火口内に確認された直径数10mの溶岩は、その後も噴出が継続し、31日には直径500m程度の大きさになった。今後、爆発的噴火が発生した場合、火口から概ね3㎞の範囲まで火砕流が流下する可能性があることから、31日01時35分に火口周辺警報を発表(噴火警戒レベル3、入山規制、切り替え)し、火砕流に対する警戒範囲を2㎞から3㎞へ拡大した。
 その後、2月1日07時54分に発生した爆発的噴火では長径70㎝の大きな噴石が新燃岳火口から西南西3.2㎞付近まで達した。今後もこのような規模の大きな爆発的噴火が発生した場合、新燃岳火口から概ね4㎞まで飛散する恐れがあるため、同日11時20分に火口周辺警報を発表(噴火警戒レベル3、入山規制、切り替え)し、大きな噴石に対する警戒範囲を2㎞から4㎞へ拡大した。また、この爆発的噴火により湯之野観測点(新燃岳より南西約3㎞)で458.4Paの空振1)(観測開始以降最大)を観測し、鹿児島県霧島市では窓ガラスが破損する被害が発生した。
 2月1日から2月3日にかけて、海上自衛隊第72鹿屋航空分遣隊、鹿児島県及び九州地方整備局の協力を得て行った上空からの観測では、火口内に蓄積した溶岩は直径500m〜600mで大きな変化はなかった。
 GPSの観測では、1月26日の噴火以降地盤の縮みが観測されたが、1月31日以降鈍化停滞している。
 新燃岳火口から概ね4kmまでの範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。新燃岳火口から概ね3kmまでの範囲では、火砕流にも警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。


 図1 (左)霧島山(新燃岳)火口内の状況(1月31日)
 火口内の溶岩は直径500m程度で、頂部は火口縁付近まで達していた。
    
 図2(右)霧島山(新燃岳) 噴火の状況(遠望カメラ:新燃岳の南西約7km)
 2月1日07 時54 分の爆発的噴火に伴い灰白色の噴煙が火口縁上2,000mまで上がり、南東に流れた。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が70回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられていたが、2010年7月頃から鈍化している。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、今期間噴火は確認されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。2月3日17時頃から諏訪之瀬島付近のごく浅い所で地震が増加した。22時06分頃の地震では、諏訪之瀬島で震度3を観測した。地震発生前後で火山活動に特段の変化はなかった。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】




 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)噴火などで発生した空気の急激な圧力変化が大気中を周囲に伝わる現象。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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