平成23年 No.3 週間火山概況 (平成23年1月14日〜 平成23年1月20日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(1月14日〜1月20日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 1月20日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(1月20日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜200mで経過した。
火山性地震は、少ない状態で経過した。
20日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,000トン(前回5日、800トン)と、多い状態が続いている。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
国土地理院の観測によると、島全体の隆起を示す地殻変動が2006年8月に始まり、2009年10月頃からは停滞していたが、2010年5月から再び現れ、11月中旬頃から鈍化している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
19日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面に火山活動による複数の湧出点からと思われる変色水が確認された。
海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
19日01時27分に小規模な噴火が発生した。遠望カメラでは、天候不良のため噴煙の状況は不明であった。同日実施した気象庁機動調査班(JMA-MOT)の現地調査及び聞き取り調査によると、 降灰は宮崎県都城市(新燃岳から南東約27km)から日南市(新燃岳から南東約57km)付近まで確認された(図1、図2)。噴火が発生したのは2010年7月10日以来である。
振幅の大きな火山性微動が19日01時26分から03時02分まで続き、高原観測点(新燃岳から北東約12km)の空振計では弱い空振1)を観測した。その後、火山性微動は19日13時19分から継続している(21日13時現在)。
また、火山性地震は18,19日に一時的に増加した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。

霧島山(新燃岳) 降灰の状況
図1(左) 都城市御池町付近で撮影
火山灰が約5mm堆積していた(1㎡あたり993g)。
図2(右)都城市高城町石山付近で撮影
乗用車の上に火山灰が堆積していた。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では爆発的噴火が12回発生し、大きな噴石が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられていたが、2010年7月頃から鈍化している。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。同火口では17日に夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を観測した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、噴火が断続的に発生した。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石2)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)噴火などで発生した空気の急激な圧力変化が大気中を周囲に伝わる現象。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。
本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。