平成22年 No.41 週間火山概況 (平成22年10月1日〜 平成22年10月7日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(10月1日〜10月7日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 10月7日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、霧島山(新燃岳)、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(10月7日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜200mで経過した。
火山性地震は少ない状態で経過した。
6日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,200トン(前回9月22日700トン)と、依然として多い状態が続いている。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
国土地理院の観測によると、島全体の隆起を示す地殻変動が2006年8月に始まり、2009年10月頃からは停滞していたが、今年5月から再び現れている。6月以降はやや鈍化した時期はあるものの、隆起は継続している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は増減を繰り返しながら、やや多い状態で経過した。火山性微動は観測されていない。
遠望観測では、噴煙が最高で火口縁上200mまで上がるのが確認された。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
昭和火口では爆発的噴火が2回発生し、大きな噴石が5合目(昭和火口から500〜800m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映が時々確認された。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震は少ない状態で経過した。また、噴火に伴う火山性微動が観測された。
GPS連続観測では、2010年初め頃からみられた桜島島内の伸びの傾向は、6月頃から鈍化または収縮に転じている。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は少ない状態で経過した。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、噴火が時々発生した。これらの噴火に伴う噴煙の高さは最高で火口縁上500mであった。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映が時々確認された。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
三原山周辺の浅部を震源とする火山性地震は、今年7月以前と比べて多い状態が継続している。今期間は3日から4日にかけて西方沖、5日から6日にかけて島東部を震源とする地震が一時的に増加した。
GPS及び体積歪計4)による観測では、2009年秋頃から収縮傾向がみられたが、5月下旬から伸びの傾向がみられる。国土地理院のGPS及び独立行政法人防災科学技術研究所の傾斜計5)においても、今年5月頃から 山体の膨張を示す変動がみられる。このような山体の膨張は、2007年3月から7月にかけてもみられた。GPSによる連続観測では、地下深部へのマグマ注入によると考えられる島全体の長期的な膨張傾向が継続している。
噴気の状態等、表面現象に異常はみられない。
火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、今後の活動の推移に注意が必要である。
4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがある。
5)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
注)データは速報値であり、後日変更されることがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。