平成21年 No.32 週間火山概況 (平成21年7月31日 〜 平成21年8月6日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

4日、口永良部島に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げ、火口周辺警報を解除した。
その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(7月31日〜8月6日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
8月4日11時00分 口永良部島 噴火予報 噴火警戒レベルを1(平常)に引下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 8月6日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(8月6日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃からの深部へのマグマ貫入を示す伸びの傾向は、2009年7月頃から鈍化している。
 浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。

※浅間山の火山性地震回数は、気象庁ホームページ(../../../../../tokyo/306_Asamayama/306_jishin_bidou.html)に掲載しています。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、2009年5月中旬頃から隆起の傾向が鈍化している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、爆発的噴火が6回発生した。8月6日09時52分の爆発的噴火では、火砕流が火口周辺にとどまる程度(昭和火口の東側約200mの範囲)に流下した。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いているが、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
 桜島では、南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

2)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高まった状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


口永良部島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]←8月4日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 口永良部島では、GPSによる地殻変動観測で、2008年9月以降続いていた新岳火口浅部の膨張を示す変化が今年2月頃から鈍化し、6月以降は認められなくなった。また、火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。これらのことから、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、4日に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げ、火口周辺警報を解除した。
 新岳火口内では引き続き噴気や火山ガスの噴出等が見られ、火口内等では警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


箱根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 4日夜から7日(期間外)にかけて、大涌谷の西(姥子付近)の浅部を震源とする地震がまとまって発生している。最大の地震は6日06時03分に発生したマグニチュード3)3.2(暫定値)の地震で、静岡県三島市東本町や静岡県富士宮市野中で震度2を観測した。
 気象庁が湯河原に設置している体積歪計4)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計5)等による地殻変動観測では、火山活動によるとみられる変化は認められなかった。
 また、環境省インターネット自然研究所の箱根・大涌谷カメラでは、噴気等の表面現象にも特段の変化はみられない。
 箱根山では、2月にも駒ケ岳付近で地震がまとまって発生しているが、いずれも火山活動の高まりを示すような地震活動ではないとみられる。箱根山では引き続き火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。

3)マグニチュード(M)は地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。
4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
5)地面の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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