平成21年 No.10 週間火山概況 (平成21年2月27日 〜 平成21年3月5日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
2日、桜島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。
表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(2月27日〜3月5日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
3月2日10時30分 | 桜島 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベルを3(入山規制)に引上げ |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 3月5日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 浅間山、桜島、口永良部島 |
レベル2(火口周辺規制) | 雌阿寒岳、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢) |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(3月5日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
雌阿寒岳 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
ポンマチネシリ火口の噴煙はやや多い状態が続き、火口縁上200〜300mで推移した。
振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が時々発生したほか、火山性地震は一日あたり10〜40回とやや多い状態で推移した。
GPSによる地殻変動観測では、2008年10月初め頃よりやや広域の地殻変動が認められるが、浅部の膨張は認められない。
雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰に注意が必要である。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。今期間火映は観測されていないが、依然として熱活動の高まった状態が続いていると推定される。
火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
傾斜計では火山活動による特段の変化は観測されていない。
浅間山では、居住地域の近くまで影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から4kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2009年3月5日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。
火山性地震はやや多い状態が続いている。
3月5日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり1,000〜1,700トン(前回2月3日、1,300〜2,300トン)と依然として多い状態が続いている。
三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流にも注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←2日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ
昭和火口では、3月1日から2日にかけて爆発的噴火が3回発生し、2日06時53分には弾道を描いて飛散する大きな噴石1)が昭和火口より4合目(火口から800mから1,300m)まで達した。また、大隅河川国道事務所が有村に設置している傾斜計の観測では、わずかながら膨張を示すと考えられる変化が認められた。このため、桜島の噴火活動は活発化する傾向にあると判断し、3月2日10 時30 分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
今期間、昭和火口では爆発的噴火が前述のものを含め6回発生し、噴煙の高さの最高は火口縁上2,000mであった。また、南岳山頂火口では3月2日にごく小規模な噴火が発生した。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いているが、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
2)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震はやや多い状態が続いている。
硫黄岳山頂火口の噴煙の状況は、遠望カメラの障害のため確認できなかった。
薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
GPSによる地殻変動観測では、2008年9月以降みられている新岳火口浅部のわずかな膨張を示す変化はやや鈍化しているが、現在も続いている。
島内に設置した遠望カメラでは、白色噴煙が時々観測され、高さは火口縁上50〜300mで推移した。
3月2日に海上自衛隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て実施した上空からの観測では、新岳火口の噴煙量に大きな変化はなく、火口周辺の噴気の状況にも大きな変化は認められなかった。また、新岳火口内と南西側の熱異常域に特段の変化はなく、引き続き温度の高い状態が継続していた。
火山性地震および火山性微動は少ない状態で推移した。
口永良部島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では爆発的噴火が9回発生し、これらの噴火に伴う噴煙の高さは最高で火口縁上600mであった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、3月1日に集落(御岳の南南西約4km)でごく少量の降灰が確認された。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。