平成21年 No.6 週間火山概況 (平成21年1月30日 〜 平成21年2月5日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 1日、浅間山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。3日に火口周辺警報(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)を切替えた。
 2日、桜島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(1月30日〜2月5日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
2月3日09時30分 浅間山 火口周辺警報 (噴火警戒レベル3(入山規制)継続)を切替え
2月2日09時30分 桜島 火口周辺警報 噴火警戒レベルを3(入山規制)に引上げ
2月2日02時40分 浅間山 降灰予報 2日01時51分の噴火に伴う降灰地域予想
2月1日13時00分 浅間山 火口周辺警報 噴火警戒レベルを3(入山規制)に引上げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 1月日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 浅間山、桜島、口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 雌阿寒岳、三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(2月5日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


雌阿寒岳 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 ポンマチネシリ火口の噴煙はやや多い状態が続き、火口縁上100〜300mで推移した。
 振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が時々発生し、また火山性地震が一日あたり100回前後とやや多い状態で推移した。
 GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
 雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

←2月1日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ
←2月3日に火口周辺警報の切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)

 1日2時頃からマグマの上昇を示すと思われる傾斜変化が現れた。また、7時頃からは、山頂直下が震源とみられる周期の短い火山性地震の増加が観測されたため、浅間山では噴火が切迫していると予想し、同日13時00分に火口周辺警報を発表、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
 その後、2日01 時51 分頃に山頂火口で小規模な噴火が発生し、噴煙は火口縁上2,000mに達して南東方向に流れ、降灰が関東地方南部まで確認された。噴火の発生は、2008年8月14日のごく小規模な噴火以来である。同日午前中に長野県の協力を得て実施した上空からの観測では、大きな噴石1)が山頂火口の北西1〜1.2kmにまで達しているのが確認された。
 2日の噴火以降、噴火の切迫を示す傾斜変化や周期の短い火山性地震の増加は認められなくなったが、火山性地震は引き続きやや多い状態である。また、3日及び4日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり2,000〜4,300トン(前回1月27日、600〜1,800トン)と多い状態が続き、噴煙も火口縁上200〜600mとやや多い状態が続いている。夜間には、高感度カメラ2)により微弱な火映が時々観測されるなど、現在も活動の高まった状態が続いている。
 噴火が切迫する状態ではないものの、引き続き火口から4kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があると予想されるので、3日09時30分に火口周辺警報を発表し、警報事項を切替えた。
 浅間山では、火口から4kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があると予想されるので、これらの地域では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。

2)国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラによる。


図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2009年2月5日)


図3 浅間山 2月2日に発生した噴火の状況
(国土交通省利根川水系砂防事務所提供)

図4 浅間山 山頂火口から南東斜面にかけての降灰分布
(2月2日 軽井沢消防署から撮影)

三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 3日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり1,300〜2,300トン(前回1月15日、1,200〜1,900トン)と依然として多い状態が続いている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、2008年11月末頃から鈍化したものの現在も継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 1日に海上自衛隊が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場付近の海面に火山活動によるとみられる変色水が確認された。福徳岡ノ場付近の海面では、長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

←2月2日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ

 昭和火口では2月1日から2日08時にかけて爆発的噴火が8回発生し、大きな噴石1)が5合目(昭和火口より500mから800m)まで達した。このため、桜島の噴火活動が活発化するおそれがあるとして、2日09時30分に噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)へ引き上げた。
 今期間、昭和火口の爆発的噴火は13回発生し、噴煙の高さの最高は2,200mであった。南岳山頂火口では1日にごく小規模な噴火が発生した。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いているが、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
 桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)( 火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。

3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上50〜200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 火山性地震および火山性微動は少ない状態で推移した。島内に設置した遠望カメラでは、噴気が時々観測され、高さは火口縁上10〜200mで推移した。
 GPSによる地殻変動観測では、2008年9月以降新岳火口浅部の膨張を示す変化が続いている。
 口永良部島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、今期間、噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。山頂からの噴煙高度は100〜500mで推移した。
 諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。

 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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