平成21年 No.1 週間火山概況 (平成20年12月26日 〜 平成21年1月1日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(12月26日〜1月1日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 1月1日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード* | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 口永良部島 |
レベル2(火口周辺規制) | 雌阿寒岳、浅間山、三宅島、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢) |
平常 | 上記以外の活火山 |
*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。
図1 噴火警報発表中の火山(1月1日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
雌阿寒岳 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
ポンマチネシリ火口の噴煙はやや多い状態で、火口縁上100〜300mで推移した。
振幅の小さな火山性微動が時々発生し、火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態で推移した。
GPSによる地殻変動観測では特に変化はみられていない。
雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、夜間には、高感度カメラ2)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃から深部へのマグマ貫入を示すわずかな伸びの傾向がみられている。
浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。
2)国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラによる。
図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2009年1月1日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
南岳山頂火口では27〜29日にかけてごく小規模な噴火が発生した。昭和火口では噴火は発生しなかった。昭和火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映が、時々観測された。
火山性地震および火山性微動は少ない状態が続いている。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。また、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。
桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき4))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
4)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
火山性地震は少ない状態が続いているが、火山性微動は時々発生した。島内に設置した遠望カメラでは、噴気が時々観測され、高さは火口縁上20〜200mで推移した。
GPSによる地殻変動観測では、2008年9月以降新岳火口浅部の膨張を示す変化が続いている。
口永良部島では、依然として火山活動は高まった状態が続いており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。これらの噴火に伴う噴煙の高さは最高で火口縁上800mであった。火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
12月27日18時頃から火口カメラ5)により、中岳第一火口南側火口壁で、火山ガスが燃焼する火炎現象が確認された。同日夜間に行った現地調査でも、南側火口壁の噴気孔から高さ20mの火炎現象を観測した。その後火炎現象は、翌28日朝にかけて確認された。なお、中岳第一火口の湯だまりの湯量や表面温度、また地震などの観測データに特段の変化はなく、火山性地震や火山性微動も少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測も特に変化は認められない。火炎現象は火口内で発生した局所的な現象と考えられ、最近では2008年3月7日に確認されている。
12月23日夕方(期間外)に発生した中岳第一火口南側火口壁の噴気孔からのごく少量の火山灰の噴出は、その後も断続的に認められ、26日の現地調査時にも、ごく少量の火山灰を含む噴気が高さ70〜80m程度上がっているのを観測した。27日以降は確認されていない。
火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。ただし、火口内では噴気や火山ガスの噴出が見られることから、火口内等では火山灰噴出等に警戒が必要である。また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要である。
5)阿蘇火山博物館設置の火口カメラ。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。