平成20年 No.49 週間火山概況 (平成20年11月28日 〜 平成20年12月4日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項に変更はない。表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(11月28日〜12月4日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 12月4日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード* | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 口永良部島 |
レベル2(火口周辺規制) | 浅間山、三宅島、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 雌阿寒岳、硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢) |
平常 | 上記以外の活火山 |
*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。
図1 噴火警報発表中の火山(12月4日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
雌阿寒岳 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
11月28日から29日にポンマチネシリ96-1火口および第4火口でごく小さな噴火が発生した。28日に北海道の協力により行った上空からの観測並びに、28日以降の北海道大学、北海道立地質研究所、釧路地方気象台及び網走地方気象台の現地調査によると、火山灰はポンマチネシリ同火口周辺の全方向に拡がっており、東側では約8kmまで、北側では約6kmまで、東〜南東側で約4kmまで分布していた。
28日から29日の噴火で噴出した火山灰を北海道大学が分析したところ、新たなマグマの関与を示す証拠はなく、噴火は水蒸気爆発であったとみられる。
その後も、ポンマチネシリ火口からの噴煙はやや多い状況で推移し、火山性微動も断続的に発生するなど、火山活動がやや高まった状態が継続した。
雌阿寒岳では今後もごく小さな噴火が発生する可能性があり、ポンマチネシリ火口から500m程度の範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。
1)18日に北海道及び陸上自衛隊第5旅団、19日に北海道開発局、28日に北海道の協力により実施
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。

浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
山頂火口からの噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、夜間には、高感度カメラ2)により微弱な火映が時々観測された。
2日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり1,800〜2,400トン(前回11月20日、2,200〜4,800トン)と多い状態が続いている。
火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
GPSによる地殻変動観測では、7月初め頃から深部へのマグマ貫入を示すわずかな伸びの傾向がみられている。
浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び小さな噴石2)にも注意が必要である。また、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。
3)長野県建設部佐久建設事務所の黒斑山設置カメラ、国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラによる。
図4 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年12月4日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
南岳山頂火口では、4日にごく小規模な噴火が発生した。昭和火口では噴火は発生しなかった。夜間には高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映が観測された。火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
また、桜島直下にマグマが新たに移動したことを示す地殻変動は観測されていない。4日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり1,100〜1,700トンと前回(11月14日、1,200〜2,500トン)同様、やや多い状態が続いている。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。
桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき5))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
5)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜400mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島では、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
11月28日、30日及び12月1日に火山性地震が一時的にやや増加した。火山性微動は時々発生している。島内に設置した遠望カメラでは、噴気が時々観測され、高さは火口縁上20〜200mで推移した。
GPSによる地殻変動観測では、9月以降新岳火口浅部の膨張を示す変化が続いている。
口永良部島では、依然として火山活動は高まった状態が続いており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石2)にも注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴火の発生はなかったが御岳(おたけ)火口では長期にわたり噴火を繰り返している。火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では、御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
吾妻山の大穴火口からの噴気は、今期間200〜400mで推移した。火山性地震は少ない状態で経過している。火山性微動は観測されていない。
火口内では、噴気、火山ガスの噴出等が見られるので、火口内では警戒が必要である。
大穴火口周辺のくぼ地では火山ガスが滞留することがあり、注意が必要である。また、風下側でも火山ガスに注意が必要である。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。