平成20年 No.36 火山の概況 (平成20年8月29日 〜 平成20年9月4日)
【火山現象に関する予報及び警報の状況】
9月4日、口永良部島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げた。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。
表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(8月29日〜9月4日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
9月4日10時00分 | 口永良部島 | 火口周辺警報 | 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布状況 |
表2 9月4日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード* | 当該火山 |
火口周辺警報 | レベル2(火口周辺規制) | 浅間山、三宅島、霧島山(新燃岳)、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島 |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢) |
平常 | 上記以外の活火山 |
*噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。
図1 9月4日現在噴火警報発表中の火山
【各火山の活動状況及び予報警報事項】
浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴火は観測されなかったが、山頂火口の噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。また、夜間に高感度カメラ1)により微弱な火映が時々観測されている。
火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
なお、地殻変動には特段の変化はみられなかった。
浅間山では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)にも注意が必要である。また、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。
1)長野県建設部佐久建設事務所の黒斑山設置カメラ、国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラ及び気象庁の追分カメラによる。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、それより小さく風の影響を受ける噴石は、例えば「風の影響を受ける小さな噴石」という表現を用いる。

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年9月4日)
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
三宅島では、山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では、引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
今期間、噴火は観測されなかったが、噴煙量の多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね300〜800mで推移した。火山性地震の発生回数は減少しているが、地震回数が増加し始めた8月18日以前と比べてやや多い状態が続いている。
新燃岳では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、火口から1km程度の範囲に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)に注意が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
南岳山頂火口では、8月31日にごく小規模な噴火が発生した。昭和火口では、今期間、噴火は観測されなかった。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いており、山体の膨張を示す地殻変動も観測されていない。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。桜島の昭和火口の噴火活動は、2006年6月の噴火以降、長期的には次第に活発化している傾向がみられている。
桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に大きな噴石2)を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、これらの火口周辺では噴火に伴う大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)(火山れき3))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。
3)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上200mで推移した。
火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)] ←9月4日に噴火警戒レベル1(平常)から引上げ)
9月2日から、振幅のやや大きな火山性地震の回数が増加し始め、4日にはさらに回数が増加し、火山活動が高まっていると考えられることから、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
口永良部島では、火口の周辺に大きな噴石2)を飛散させる程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から約1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)にも注意が必要である。

図3 口永良部島 火山性地震の日別回数(2008年7月1日〜2008年9月4日)
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では3日に小規模な噴火が発生した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島では、御岳火口から約1kmの範囲に大きな噴石2)を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、噴火に対する警戒が必要である。
上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード | 海底火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 | 周辺海域警戒 |
レベル4(避難準備) | |||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 | |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | ||
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 | 平常 |