2007年 No.23 火山の概況 (平成19年6月1日 〜 平成19年6月7日)
【噴火した火山】
【活発もしくはやや活発な状況の火山】
【静穏な状況であるがデータに変化があった火山】
図1 活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況
注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。
注2 記号の意味
▲:噴火した火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
【各火山の活動解説】
● 樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では依然として高温の状態が続いていると推定される。
樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
なお、噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いており、地殻変動に特段の変化はなかった。
◇ 伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)]
1日16時50分に島北部を震源とするマグニチュード1)1.5(暫定値)の地震が発生し、震源に近い伊豆大島町岡田で震度2を観測した。また、7日8時から14時にかけて、島西部を震源とする地震が一時的にやや増加した。島西部の地震の最大は11時25分のマグニチュード1)1.5(暫定値)の地震であった。
三原山の噴気活動や体積歪ひずみ計2)及び傾斜計3)による地殻変動データに、これらの地震活動に関連する特段の変化はなく、火山活動は静穏な状況が続いている。
1)マグニチュードは地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。
2)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
3)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
● 三宅島 [やや活発な状況]
6日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり2,100〜3,200t(前回28日、一日あたり1,400〜2,700t)と、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移し、火山性地震はやや多い状態が続いている。
三宅島では多量の火山ガスの放出が続いており、特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。
なお、火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。
● 硫黄島 [やや活発な状況]
国土地理院のGPS観測によると、2006年8月頃始まった島北部の元山もとやま地域付近での大きな隆起の地殻変動は、やや鈍化しながら継続している。
硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、従来から小規模な水蒸気爆発が見られていた領域では、今後も注意が必要である。
なお、防災科学技術研究所の観測によると、島内の地震活動は落ち着いた状態が続いている。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]
昭和火口では、5日に灰色の噴煙が火口上2,400mまで上がる噴火が発生したのをはじめ、噴煙高度が火口上1,000m以上の小規模な噴火が時々発生した。そのほか、噴煙高度が火口上500m程度のごく小規模な噴火も断続的に発生した。3日から6日にかけては、東より風の影響で鹿児島地方気象台(南岳山頂から西南西に約11km)でごく少量の降灰を観測した。
昭和火口で、高感度カメラ4)で捉えられる程度の微弱な火映5)が3日と6日に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
5日に行った現地観測では、昭和火口周辺の高温域の分布6)に特段の変化は認められなかった。
南岳山頂火口の噴火は観測されなかった。
火山性地震と火山性微動は、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。国土地理院のGPS観測によると、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張傾向が続いている。
桜島では噴火活動が継続しており、南岳山頂火口及び昭和火口から半径2km以内では注意が必要である。
4)国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所が昭和火口の東約3kmに設置。
5)火山ガスや上昇した溶岩により火口内が高温になった場合に、火口上の雲や噴煙が明るく照らされる現象。
6)赤外線熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、硫黄岳山頂火口周辺では注意が必要である。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、新岳しんだけ火口周辺では注意が必要である。
なお、遠望カメラ(新岳火口の北西約3kmに設置)による観測では、新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
十島としま村役場諏訪之瀬島出張所によると、1日に御岳おたけ火口で小規模な噴火が発生した。
諏訪之瀬島の火山活動は活発な状況が続いており、御岳火口から半径2km以内では注意が必要である。
なお、火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。