2007年 No.21 火山の概況 (平成19年5月18日 〜 平成19年5月24日)
【噴火した火山】
【活発もしくはやや活発な状況の火山】
【その他の記事を掲載した火山】
- ● 御嶽山 [静穏な状況]←25日(期間外)にやや活発な状況から引き下げ
- 火山活動は静穏な状況になっている。
【静穏な状況であるがデータに変化があった火山】
図1 活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況
注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。
注2 記号の意味
▲:噴火した火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
【各火山の活動解説】
● 樽前山 [やや活発な状況]
22日に北海道開発局の協力により実施した上空からの観測では、A火口及びB噴気孔群では依然として高温状態1)が続いていた。
樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
なお、噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いており、地殻変動に特段の変化はなかった。
1)赤外線熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
◇ 倶多楽 [静穏な状況]
登別市によると、大正地獄たいしょうじごくにおける泥混じりの熱湯の間欠的な噴出は、高さ・頻度ともに低下し、19日10時頃を最後にみられなくなった。
地獄谷じごくだにや大湯沼おおゆぬま等の熱活動や地震活動の状況に特段の変化はなく、倶多楽の火山活動は静穏な状況が続いている。
● 御嶽山 [静穏な状況]←25日(期間外)にやや活発な状況から引き下げ
昨年12月以降、火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続き、火山性微動も時々観測された。また、GPSによる地殻変動観測では御嶽山の地下の膨張を示すわずかな伸びの変化も見られるなど、火山活動はやや活発な状態が続いていた。しかし、最近は火山性地震および火山性微動ともに少なく、GPSの伸びの変化もほぼ停止した状態で経過したことから、火山活動は静穏な状況になったと考えられる。
なお、三岳黒沢みたけくろさわの遠望カメラ(剣ヶ峰けんがみねの南東約14kmに設置)では、引き続きごく少量の噴気が時々観測された。
◇ 伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)]
22日から23日未明にかけて、島の西方海域の深さ約5km付近を震源とする振幅の小さな地震が一時的にやや増加した。最大の地震は22日23時24分に発生したマグニチュード2)0.7(暫定値)であった。23日03時以降は地震回数の少ない状況に戻っている。伊豆大島西方海域では、これまでにもしばしば地震の一時的な多発がみられており、最近では2006年6月にも発生している。
また、23日11時37分には島の南東海岸付近の深さ約2kmを震源とするマグニチュード2)1.7(暫定値)の地震が発生し、伊豆大島町波浮港はぶみなとで震度1を観測した。この地震の前後で、地震増加はみられなかった。
これらの地震活動に伴って、体積歪ひずみ計3)や傾斜計4)に特段の変化は認められず、火山活動は静穏な状況が続いている。
2)マグニチュードは地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。
3)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
4)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
● 三宅島 [やや活発な状況]
23日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり2,300〜2,800t(前回5月15日、一日あたり700〜1,100t)と、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。火山性地震は今期間も多い状態が続いている。
三宅島では多量の火山ガスの放出が続いており、特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。
なお、火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。
● 硫黄島 [やや活発な状況]
国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、島内の地震活動は落ち着いた状態となっているが、昨年8月頃始まった島北部の元山もとやま地域付近での大きな隆起の地殻変動は、やや鈍化しながら継続している。
硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、従来から小規模な水蒸気爆発が見られていた領域では、今後も注意が必要である。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]
昭和火口では、16日(前期間)以降、噴煙高度が火口上500m程度のごく小規模な噴火が断続的に発生していたが、20日以降は灰白色の噴煙が火口上1,200〜1,800mまで上がる小規模な噴火が時々発生するようになった。
19日以降、昭和火口で高感度カメラ5)で捉えられる程度の微弱な火映6)が観測されている。24日に鹿児島県の協力により実施した上空からの観測では、昭和火口内に溶岩は認められず、微弱な火映は高温の火山ガスによるものと考えられる。
南岳山頂火口では、21日に小規模な噴火が発生した。
火山性地震と火山性微動は、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。国土地理院のGPS観測によると、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張傾向が続いている。
桜島では噴火活動が継続しており、南岳山頂火口及び昭和火口から半径2km以内では注意が必要である。
5)国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所が昭和火口の東約3kmに設置。
6)火山ガスや上昇した溶岩により火口内が高温になった場合に、火口上の雲や噴煙が明るく照らされる現象。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上300〜500mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、硫黄岳山頂火口周辺では注意が必要である。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、新岳しんだけ火口周辺では注意が必要である。
なお、遠望カメラ(新岳火口の北西約3kmに設置)による観測では、新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
十島としま村役場諏訪之瀬島出張所によると、18日に御岳おたけ火口で小規模な噴火が発生した。
諏訪之瀬島の火山活動は活発な状況が続いており、御岳火口から半径2km以内では注意が必要である。
なお、火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。