2007年 No.20 火山の概況 (平成19年5月11日 〜 平成19年5月17日)
【噴火した火山】
【活発もしくはやや活発な状況の火山】
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群では高温状態が続いていると推定される。
- ● 御嶽山 [やや活発な状況]
- 火山活動はやや活発な状況が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 硫黄島 [やや活発な状況]
- 大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながら継続している。
- ● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
- 火山活動によるとみられる変色水が確認された。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動はやや活発で、火山性地震はやや多い状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
- ● 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 火山活動は活発な状態が続いている。
【静穏な状況であるがデータに変化があった火山】
- ◇ 倶多楽 [静穏な状況]
- 大正地獄でごく小規模な泥混じりの熱湯の噴出が継続している。
図1 活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況
注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。
注2 記号の意味
▲:噴火した火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
【各火山の活動解説】
● 樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では依然として高温の状態が続いていると推定される。
樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
なお、噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いており、地殻変動に特段の変化はなかった。
◇ 倶多楽 [静穏な状況]
14日、16日に行った現地調査及び登別市の調査によると、大正地獄たいしょうじごくにおける泥混じりの熱湯の間欠的な噴出は、高さや頻度に低下傾向はみられているが依然継続している。
地獄谷じごくだにや大湯沼おおゆぬま等の熱活動や地震活動の状況に特段の変化はなく、倶多楽の火山活動は静穏な状況が続いている。
● 御嶽山 [やや活発な状況]
火山性地震は、昨年12月から消長を繰り返しながらやや多い状態が続き、火山性微動も時々観測された。
今期間、火山性地震は少なく、火山性微動も観測されなかったが、火山活動は現在もやや活発な状態が続いていると考えられ、山頂付近では注意が必要である
三岳黒沢みたけくろさわの遠望カメラ(剣ヶ峰けんがみねの南東約14kmに設置)では、ごく少量の噴気が時々観測された。
気象庁のGPSによる地殻変動観測では、御嶽山の地下の膨張を示すわずかな伸びの変化は、収まりつつあるように見える。
● 三宅島 [やや活発な状況]
15日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり700〜1,100t(前回5月10日、一日あたり1,300〜2,000t)と、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震は今期間多い状態で推移した。
三宅島では多量の火山ガスの放出が続いており、特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。
なお、火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。
● 硫黄島 [やや活発な状況]
国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、島内の地震活動は落ち着いた状態となっているが、昨年8月頃始まった島北部の元山もとやま地域付近での大きな隆起の地殻変動は、やや鈍化しながら継続している。
硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、従来から小規模な水蒸気爆発が見られていた領域では、今後も注意が必要である。
● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
5月16日に海上保安庁が行った上空からの観測によると、福徳岡ノ場の湧出点付近で幅約5m、終点付近で幅約100m、長さ約2kmの南東方向に延びる火山活動とみられる斑点状の乳白色の変色水が視認された。なお、付近に浮遊物は認められなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]
16日06時13分、昭和火口でごく小規模な噴火があり1)、灰白色の噴煙が火口上500mまで上がった。その後もごく小規模な噴火が断続的に発生している。桜島東部の黒神くろかみ地区の住民によると、15日夜と16日朝に鳴動を聞いたとの情報がある。当時は見通しが利かず噴火したかは不明であったが、噴火は15日夜に始まった可能性もある。
16日に行った現地調査では、昭和火口周辺は降灰のため白くなっていた。赤外熱映像装置2)による観測では、昭和火口周辺に高温域の拡大などは認められなかった。17日に実施した上空からの観測3)で、昭和火口南端付近に今回の噴火による噴出口を確認した(図1、図2)。
なお、南岳山頂火口では、4月17日に観測したごく小規模な噴火以降、噴火はない。
火山性地震と火山性微動は、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。国土地理院のGPS観測によると、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張傾向が続いている。
桜島では噴火活動が継続しており、南岳山頂火口及び昭和火口から半径2km以内では注意が必要である。
1)昭和火口で噴火が観測されたのは、2006年6月20日以来。
2)赤外線熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
3)国土交通省九州地方整備局と大隅河川国道事務所の協力による。
図1 黒神地区から見た昭和火口の噴火の様子
(2007年5月17日10時45分撮影)
図2 南岳の東側上空から見た昭和火口内の状況3)
(2007年5月17日12時57分撮影)
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、新岳しんだけ火口周辺では注意が必要である。
なお、遠望カメラ(新岳火口の北西約3kmに設置)による観測では、新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。
● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
今期間、噴火は観測されず、火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。
諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返すなど火山活動は活発な状態が続いており、御岳おたけ火口から半径2km以内では注意が必要である。