2007年 No.8 火山の概況 (平成19年2月16日 〜 平成19年2月22日)


【噴火した火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
16日に南岳山頂火口で爆発的噴火が発生した。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
19日及び20日に爆発的噴火が発生した。

【活発もしくはやや活発な状況の火山】

樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では高温状態が続いていると推定される。
御嶽山 [やや活発な状況]
火山性地震のやや多い状態が続き、山体のわずかな膨張も見られる。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
硫黄島 [やや活発な状況]
大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながら継続している。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
火山活動によるとみられる変色水が確認された。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
18日に振幅の小さな火山性微動が発生した。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動はやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。


【その他の記事を掲載した火山】

十勝岳 [静穏な状況] ← 16日にやや活発な状況から引き下げ。
火山活動は静穏な状態となった。
箱根山 [静穏な状況]
16日から18日にかけて、駒ヶ岳付近の浅い所を震源とする地震がやや増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山
図1  活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。

注2 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。


◇ 十勝岳  [静穏な状況] ← 16日にやや活発な状況から引き下げ

  十勝岳では、62-2火口の噴煙活動は低調で熱活動が低下したことから、火山活動は静穏な状況になった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群では依然として高温の状態が続いていると推定される。
 噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いている。地殻変動に特段の変化はなかった。
 樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。


● 御嶽山  [やや活発な状況]

 火山性地震はやや多い状態が続いている。今期間、火山性微動は観測されなかった。
 気象庁のGPSによる地殻変動観測では、昨年12月以降、御嶽山の膨張を示すと考えられるわずかな伸びの変化が続いている。一方、国土地理院の広域のGPSによる地殻変動観測では、昨年12月以降見られていた深部での膨張を示すと考えられるわずかな伸びの変化は1月下旬頃から鈍化している。
 御嶽山では火山活動がやや活発な状況となっており、山頂付近では注意が必要である。
 なお、遠望カメラ(剣ヶ峰けんがみねの南東約14kmに設置)では、噴気などの表面現象に特に異常は見られなかった。


◇ 箱根山  [静穏な状況]

 16日から18日にかけて、駒ヶ岳付近の浅い所を震源とする地震がやや増加した。最大の地震は17日12時26分に発生したマグニチュード1)2.1であった。
 気象庁が湯河原に設置している体積歪ひずみ計2)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計3)等による地殻変動観測では、今回の地震活動に関連した変化はなく、大涌谷などの噴気等の表面現象にも特段の変化はみられなかった。
 箱根山では、昨年9月下旬以降、同様な地震活動が時々発生している。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。
 16日と21日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり、それぞれ3,600〜4,500t及び2,300〜3,600t(前回6日、一日あたり900〜1,800t)と、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。
 三宅島では多量の火山ガスの放出が続いており、特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。


 1)マグニチュード(M)は地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。
 2)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
 3)地面の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。


● 硫黄島 [やや活発な状況]

 国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、島内の地震活動は落ち着いた状態となっているが、昨年8月頃始まった島北部の元山もとやま地域付近での大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながら継続している。
 硫黄島では火山活動がやや活発な状況となっており、従来から小規模な水蒸気爆発が繰り返されてきた島北部の元山地域を取り囲む円周上の領域(東部や北部の海岸部から阿蘇台陥没孔あそだいかんぼつこうから千鳥ヶ原ちどりがはらにかけて)では、今後も注意が必要である。


● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]

 19日に海上自衛隊が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場付近の海面に、火山活動によるとみられる北西方向へ延びる長さ約500m、幅約500mの変色水が確認された。なお、付近に浮遊物は認められなかった。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況(レベル2)]

 18日には振幅の小さな火山性微動が発生した。
 御鉢おはちの火山活動はやや活発な状況が続いており、火口付近では注意が必要である。
 なお、遠望カメラ(御鉢火口の南西約5kmに設置)では、火口縁を超える噴気は観測されず、地殻変動にも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]

 16日に南岳山頂火口で爆発的噴火が発生した。昭和火口では弱い噴気が時々観測された。
 火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。地殻変動観測では、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張は引き続き観測されている。
 桜島では噴火活動が継続しており、南岳山頂火口及び昭和火口から半径2km以内では注意が必要である。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 硫黄岳火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
 なお、遠望カメラ(新岳しんだけ火口の北西約3kmに設置)による観測では新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 19日から20日にかけて爆発的噴火が18回発生した。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、噴煙高度は火口縁上800〜1,000mに達し、また、21日にも小規模な噴火が発生した。集落(御岳おたけの南南西約4km)では20日、21日に降灰が確認されたほか、噴火活動の活発化に伴い、19日、20日には鳴動4)も確認された。
 火山性地震、火山性微動ともにやや多い状態が続いており、20日、21日には噴火に伴い火山性連続微動を観測した。
 諏訪之瀬島の火山活動は活発な状況が続いており、御岳火口から半径2km以内では注意が必要である。


 4)鳴動とは火山活動に伴って聞こえる「ゴー」という低い音のことで、噴火や活発な噴煙活動などが原因と考えられている。





表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

  
表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
十 勝 岳 火山観測情報第1号
2月16日
18:30
火山噴火予知連絡会の検討結果。活動評価をやや活発から静穏な状況に引き下げ。
御 嶽 山 火山観測情報第8号
2月16日
18:30
火山噴火予知連絡会の検討結果。火山活動に変化はなくやや活発な状況が継続。
火山観測情報第9号
2月19日
16:00
最近の火山活動評価。2月16日から2月19日15時までの活動状況。
三 宅 島 火山観測情報第7号
2月16日
16:30
最近の火山活動評価。2月9日〜2月16日16時までの活動状況。16日に行った火山ガス観測の結果。


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