2006年 No.32 火山の概況 (平成18年8月4日 〜 平成18年8月10日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [活発な状況(レベル3)
南岳山頂火口で9日に小規模な噴火が発生した。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [やや活発な状況]
ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列では噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口では高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では高温状態が続いている。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震のやや多い状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震はやや多い状態となった。
諏訪ノ瀬島 [活発な状況(レベル3)
火山性連続微動が時々発生した。

【その他の記事を掲載した火山】

阿蘇山 [静穏な状況(レベル1)]←4日にやや活発な状況(レベル2)から引き下げ
火山活動は静穏な状態になったと判断し、レベルを2から1に引き下げた。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [やや活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。地震活動は低調な状態が続いている。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。地震活動は低調な状態が続いている。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 9日に実施した観測では、A火口の最高温度は約490℃1)(前回 7月30日 約490℃1))であり、火口内の熱的な状態に変化はなく依然として高温の状態が続いていた。地震活動は低調な状態が続いている。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

1) 赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間、山麓に設置した高感度カメラ2)では火映は観測されなかった。
 火山性地震の回数は1日あたり4〜9回とやや少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。
 今期間は火山ガス観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり30〜54回とやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


◇ 阿蘇山 [静穏な状況(レベル1)]←4日にやや活発な状況(レベル2)から引き下げ

 4日に行った現地調査によると、中岳第一火口の湯だまり3) の量は10割(前回3日10割)、表面温度4) は59℃(前回3日 58℃)であった。
 火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況、噴煙活動、地殻変動に特段の変化はなかった。
 中岳第一火口の熱活動は6月下旬以降低下した状態が続いていることから、火山活動は静穏になったと判断し、4日に火山活動度レベルを2(やや活発な状況)から1(静穏な状況)に引き下げた。

3) 活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。熱活動が活発化すると、湯だまり温度の上昇や湯量の減少がみられ、その過程で湯だまり内で熱湯が沸き上がる噴湯現象や土砂を噴き上げる土砂噴出現象が起こることが知られている。
4) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


▲ 桜島  [活発な状況(レベル3)]

 昭和火口では噴火は発生しなかった。南岳山頂火口では9日に噴煙高度が火口縁上1,300mに達する噴火が発生したほか、ごく小規模な噴火も時々発生した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は今期間、やや少ない状態で経過した。GPSなどによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね300mであった。火山性地震はやや多く、9日にはごく小規模な火山性微動が観測された。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや多い状態となった。火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、噴火は発生しなかった。9〜10日に時々火山性連続微動が発生した。火山性地震は1日あたり0〜14回と少ない状態で経過したが、10日は83回とやや多くなった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第31号 4日16:00 28日〜4日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第216〜222号
(1日1回発表)
4日〜10日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。3日に行った火山ガスの観測結果。
阿蘇山 火山観測情報第5号 4日15:00
中岳第一火口の湯だまりの温度が低下するなど、火山活動は静穏な状況となったと判断し、火山活動度レベルを2から1に引き下げた。
桜島 火山観測情報第28号 4日15:45
活発な火山活動が継続。31日〜4日15時の状況、防災上の注意事項。レベルは3。


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