2006年 No.26 火山の概況 (平成18年6月23日 〜 平成18年6月29日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】
- ● 雌阿寒岳 [やや活発な状況]
- ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列で噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 62-2火口では高温状態が続いている。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いていると推定される。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
- ● 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 噴火は発生しなかったが、火山性連続微動が観測された。
図1 今期間掲載した各火山の活動状況
注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 雌阿寒岳 [やや活発な状況]
ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。火山性地震は1日あたり2回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜300mで推移した。
25日〜28日にかけて行った現地調査によると、62-2火口の最高温度は約250℃1) (前回2005年9月 約400℃1))で、やや温度の低下が認められるものの依然として高温の状態で、火口内の熱活動はやや活発な状態が続いていた。地震活動は低調な状態が続いており、GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
1)赤外熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
● 樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。地震活動は低調な状態が続いており、GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
火山性地震の回数は1日あたり5〜20回とやや少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。
29日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,000〜1,400 トン(前回21日1,900〜2,500 トン/日)と依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
29日8時から12時にかけて、火口直下を震源とするやや低周波の地震が一時的に増加した。11時33分には空振を伴った振幅のやや大きな低周波地震2) が発生し、三宅村神着及び三宅村坪田で震度1を観測した。地震発生時の噴煙の状況には特段の変化はみられず、三宅島測候所が行った現地調査でも降灰は確認されなかった。火山性地震の回数は1日あたり7〜52回とやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
2)三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。
● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
29日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり3) の量が増加し(今回 約9割;前回19日約6割)、また、表面温度4) もやや低下した(今回 59℃;前回19日72℃)が、この変化は降雨の影響によるものであり、中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いていると推定される。
火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データに特段の変化はなかった。
3)活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度の上昇や湯量の減少がみられ、その過程で湯だまり内で熱湯が沸き上がる噴湯現象や土砂を噴き上げる土砂噴出現象が起こり始めることが知られている。
4)赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
▲ 桜島 [活発な状況(レベル3)]
火山活動は活発な状態が続いている。
雲のため山頂の状況は不明であったが、26日15時20分頃、東側山麓の黒神河原付近で噴火による降灰を観測した。期間を通じて悪天のため噴煙の状況は確認できなかったが、昭和火口および南岳山頂火口では爆発的噴火は観測されていない。
火山性微動および火山性地震はやや多い状態が続いている。GPSなどによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
硫黄岳山頂火口の噴煙活動は依然としてやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上200mで推移した。今期間、火山性地震がやや多い状態となった。火山性微動は少ない状態で経過している。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。今期間、火山性微動は観測されず、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
23日〜25日、29日に火山性連続微動が観測されたが、今期間、噴火は発生しなかった。火山性地震は少ない状態で経過している。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第25号 | 23日16:00 | 16日〜23日15時の活動状況。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第174〜180号 (1日1回発表) |
23日〜29日16:30 | 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。29日に行った火山ガス観測の結果。 |
桜島 | 火山観測情報第16号 | 23日16:00 |
活発な火山活動が継続。前日15時〜当日15時の状況、防災上の注意事項。レベルは3。 | 火山観測情報第17号 |
26日15:30 |
活発な火山活動が継続。23日15時〜26日15時の状況、防災上の注意事項。レベルは3。 |