2006年 No.25 火山の概況 (平成18年6月16日 〜 平成18年6月22日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [活発な状況(レベル3)
昭和火口で活発な噴火活動が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
17日および18日に噴火が発生した。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [やや活発な状況]
赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列で噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口では噴煙活動が活発で、高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動はやや活発で、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [やや活発な状況]

 赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、白色噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。火山性地震は1日あたり3回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、白色噴煙の高さは火口縁上100〜300mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上200〜300mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
 火山性地震の回数は1日あたり12〜63回とやや多い状態で経過した。火山性微動は16日、18日及び19日にそれぞれ1回観測された。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。
 20日に航空自衛隊の協力により行った上空からの観測では、山頂火口内の状況に大きな変化はみられなかった。
 21日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,900〜2,500 トン(前回7日1,600〜2,600 トン/日)と依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
 火山性地震の回数は1日あたり9〜30回とやや多い状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 19日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり1)の量は約6割で降雨のため前回に比べやや増加した(前回13日:約5割)。表面温度2)は72℃と高い状態が続いている(前回13日:68℃)。また、高さ1〜2mの小規模な土砂噴出も確認された。
 火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データに特段の変化はなかった。

1)活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度の上昇や湯量の減少がみられ、その過程で湯だまり内で熱湯が沸き上がる噴湯現象や土砂を噴き上げる土砂噴出現象が起こり始めることが知られている。
2)赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


▲ 桜島  [活発な状況(レベル3)]

 昭和火口3)では灰白色の噴煙が火口上1,000〜1,200mまで上がる噴火が時折発生したほか、ごく小規模な噴火が20日早朝まで断続的に発生した。今期間、南岳山頂火口では噴火は発生しなかった。
 16日に九州地方整備局の、また19日に鹿児島県の協力により行った上空からの観測では、昭和火口が100m程度にまで拡大し、周辺には火山灰などの噴出物が堆積している状況を確認した(図2)。
 今期間、火山性微動は発生せず、火山性地震は19日まではやや多い状態が続いたが、その後、やや少なくなった。GPSなどによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

3)これまで「昭和火口付近の新たな火口」としていたが、今後は暫定的に「昭和火口」と呼ぶこととする。


図2 昭和火口の状況(16日 右:南東側より撮影  左:南側より撮影)
   昭和火口はやや拡大し、周辺には火山灰などの噴出物が堆積している。

● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、硫黄岳山頂火口から白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上200mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過している。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。今期間、火山性微動は観測されず、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、爆発的噴火はなかったが、17日と18日に小規模な噴火が発生した。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火山灰を含む噴煙が確認されたが、集落(御岳の南南西4km)で降灰はなかった。  火山性地震は少ない状態で経過しているが、17日〜20日と22日に火山性連続微動が観測された。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第24号 16日16:00 9日〜16日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第167〜173号
(1日1回発表)
16日〜22日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。21日に行った火山ガス観測の結果。
桜島 火山観測情報第9〜15号
(1日1回発表)
16日15:40
17〜19日15:30
20日15:35
21日16:00
22日15:30
活発な火山活動が継続。前日15時〜当日15時の状況、防災上の注意事項及び上空の風の予想。レベルは3。


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