2006年 No.22 火山の概況 (平成18年5月26日 〜 平成18年6月1日)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いている。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
火山性地震のやや多い状態が続いているが、今期間噴火は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
噴火活動は引き続き活発な状態にあるとみられる。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。
 火山性地震は1日あたり3回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はなかった。6月1日に実施した調査観測では、A火口の最高温度は約510℃1)(前回5月16日の北海道立地質研究所の調査では約460℃1))であり、火口内の熱的な状態に変化はなく依然として高温の状態が続いていた。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。

1)赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。また、5月29日深夜から5月30日未明にかけて、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が観測された。火映が観測されたのは5月10日以来である。
 5月30日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200〜800トンと、依然としてやや多い状態が続いている(前回5月15日100〜700トン/日)。
 火山性地震の回数は1日あたり19〜43回とやや多い状態で経過した。火山性微動は5月29日に1回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
 今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり6〜27回とやや多い状態が継続した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 5月31日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり3)の量は約7割であった(前回5月22日:約7割)。湯だまりの表面温度1)は76℃と高い状態が続いている(前回5月22日:73℃)。また、ごく小規模な土砂噴出が確認された。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。

3) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、噴火は観測されなかった(前期間はごく小規模な噴火が発生)。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動の発生状況や、GPSによる地殻変動には特段の変化はなかった。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、硫黄岳山頂火口から白色噴煙が連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間40回、前期間51回)。5月27日に振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が観測された。今期間、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、噴火は観測されなかったが、時々噴火が発生するなど噴火活動は引き続き活発な状態にあるとみられる。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第31号 5月29日16:00 活発な火山活動が継続。5月22日〜5月29日(15時)の活動状況(噴火はなし)。
浅 間 山 火山観測情報第21号 5月26日16:00 5月19日〜5月26日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第146〜152号
(1日1回発表)
5月26日〜6月1日16:30 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。


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