2006年 No.21 火山の概況 (平成18年5月19日 〜 平成18年5月25日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】
- ● 雌阿寒岳 [活発な状況]
- 今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動は活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。また、火山性地震のやや多い状態が続いている。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- :中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
- ● 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 火山性微動が観測された。
【その他の記事を掲載した火山】
図1 今期間掲載した各火山の活動状況
注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 雌阿寒岳 [活発な状況]
ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。
火山性地震は1日あたり3回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。
● 樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
火山性地震の回数は1日あたり22〜39回とやや多い状態で経過した。火山性微動は19日に1回、20日に2回、25日に1回観測された。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。
21日02時06分と04時02分に空振を伴った振幅のやや大きな低周波地震1)が発生し、いずれも三宅村神着で震度1を観測した。これらの地震発生時の噴煙の状況は雲のため確認できなかったが、三宅島測候所が行った現地調査では降灰は確認されなかった。
今期間、火山性地震の回数は1日あたり3〜51回とやや多い状態が継続した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。
1)三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。
● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
22日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり2)の量は約7割であった(前回5月9日:約7割)。湯だまりの表面温度3)は73℃と高い状態が続いている(前回5月9日:72℃)。また、湯だまり内で噴湯現象が確認された。小規模な土砂噴出も確認された。
火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。
2)湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
3)赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
◇ 霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)→静穏な状況 (レベル1)]
新燃岳では、1月18日から体に感じない微小な火山性地震が増加し、2月1日には振幅のやや大きな火山性微動が観測されるなど、火山活動はやや活発な状態になっていた。しかし、3月下旬以降は火山性地震の日回数も10回未満と少なくなり、火山性微動も2月23日以降は観測されていない。以上のとおり、火山活動は静穏な状態になっているため、火山活動度レベルを22日に2(やや活発な火山活動)から1(静穏な火山活動)に引き下げた。
期間中、地震活動、噴煙活動ともに静穏で、その他観測データにも特段の変化はなかった。
◇ 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)→静穏な状況 (レベル1)]
御鉢では、2月15日に振幅のやや大きな火山性微動が観測されたほか、火口縁を超える噴気が時折観測されていた。しかし、3月下旬以降は火口縁を超える噴気はほとんど観測されず、2月16日以降は振幅のやや大きい火山性微動も観測されていない。また、火山性地震も少ない状況が続いている。以上のとおり、火山活動は静穏な状態になっているため、火山活動度レベルを22日に2(やや活発な火山活動)から1(静穏な火山活動)に引き下げた。
期間中、地震活動、噴煙活動ともに静穏で、その他観測データにも特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
今期間、ごく小規模な噴火はあったが、爆発的噴火等4)は観測されなかった(前期間は噴火なし)。今期間の噴煙の最高高度は24、25日の800m(灰白色)であった。なお、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11㎞)では降灰は観測されなかった。
火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は少ない状態が続いており、GPSによる地殻変動観測にも特段の変化はなかった。
4)桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、硫黄岳山頂火口から白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間51回、前期間20回)。火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
今期間、火山性微動は3回発生したが、噴火は観測されなかった。火山性地震は少ない状態で経過している。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
雌阿寒岳 | 火山観測情報第30号 | 22日16:00 | 活発な火山活動が継続。15日〜22日(15時)の活動状況(噴火はなし)。 |
浅 間 山 | 火山観測情報第20号 | 19日16:00 | 12日〜19日15時の活動状況。15日に行ったガス観測の結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第139〜145号 (1日1回発表) |
19日〜25日16:30 | 前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。 |
霧 島 山 | 火山観測情報第6号 | 22日15:00 | 新燃岳と御鉢の火山活動は静穏な状態になった。レベルを2から1に引き下げた。 |