2006年 No.20 火山の概況 (平成18年5月12日 〜 平成18年5月18日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。

*桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
13 日、14 日に小規模な噴火が観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2 火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いている。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。また、火山性地震のやや多い状態が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
:中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震はやや少ない状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
噴気活動は次第に収まる傾向である。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面では活発な噴煙活動が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100〜200mで推移した。  火山性地震は10〜11 日(前期間)に多発したが、その後減少し、今期間は1日あたり6回以下と少ない状態で経過した。火山性微動の発生はなかった。GPS による地殻変動観測には特段の変化はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2 火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

16日に北海道立地質研究所が行った現地調査では,A火口の最高温度は約460℃1)(前回2005年10月12日の観測では約570℃1))であり、火口内の熱的な状態に変化はなく依然として高温の状態が続いていた※。A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はなかった。

1) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
※ 前回の観測に比べA火口の最高温度がやや低くなっているが、これは火口内の地形変化により測定箇所が変わったためと考えられる。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
 15 日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり100〜700 トンと、依然としてやや多い状態が続いている(前回4 月26 日300〜600 トン/日)。
 火山性地震の回数は1日あたり29〜41 回とやや多い状態で経過した。火山性微動は16 日に1回、17 日に2回観測された。傾斜計およびGPS による地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。
 15 日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり900〜1,700 トンと依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回5月1日1,200〜1,700 トン/日)。
 18 日04 時14 分に空振を伴った振幅のやや大きな低周波地震2)が発生し、三宅村神着で震度1を観測した。地震発生時の噴煙の状況は雲のため確認できなかったが、その他の観測データに変化はみられなかった。
 今期間、火山性地震の回数は1日あたり5〜24 回とやや多い状態が継続した。火山性微動は観測されなかった。GPS による地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 火山性連続微動の振幅は、小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。また、噴煙活動、地殻活動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震はやや少ない状態が続いている。今期間、火山性微動は観測されなかった。GPS による地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 12日に火口縁を超える最高高度200mの弱い噴気が観測されたが、噴気活動は次第に収まる傾向である。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、ごく小規模な噴火はあったが、爆発的噴火等3)は観測されなかった(前期間は噴火なし)。今期間の噴煙の最高高度は15 日の700m(灰白色)であった。なお、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11 ㎞)では降灰は観測されなかった。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は少ない状態が続いており、GPS による地殻変動観測にも特段の変化はなかった。

3)桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、硫黄岳山頂火口から白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間20 回、前期間41 回)。また、火山性微動が1回観測された。監視カメラ(新岳の北西約4km に設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、爆発的噴火は観測されなかったが、13 日と14 日に小規模な噴火が発生した。十島村役場諏訪之瀬島出張所によれば、13 日と14 日に少量の火山灰を含む噴煙が確認された。なお、集落(御岳の南南西4km)で降灰はなかった。また、火山性地震は少ない状態で経過している。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第29号 15日16:00 活発な火山活動が継続。8 日〜15 日(15 時)の活動状況(噴火はなし)。9日〜11 日の地震増加とその後の経過。
浅 間 山 火山観測情報第19号 12日16:00 5 日〜12 日15 時の活動状況。レベルは2。。
三 宅 島 火山観測情報
第132〜138号
(1日1回発表)
12 日〜18 日16:30 前日16 時〜当日16 時の活動状況及び上空の風の予想。15日に行った火山ガス観測結果。


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