2006年 No.13 火山の概況 (平成18年3月24日 〜 平成18年3月30日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
今期間、噴火は観測されなかった。ポンマチネシリ山頂の赤沼火口では活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。火山性地震はやや多い状態で経過した。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)←24日に静穏(レベル1)から引き上げ
中岳第一火口内の湯だまりの表面温度が高くなるなど、火山活動はやや活発な状態になっている。

(*:湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。)
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
火山活動は活発な状態にあり、噴火の発生頻度も高い状態が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。

【静穏な状態であるが観測データに変化のあった】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
30日15時前頃から川奈崎付近で小規模な地震が多発している。
若尊(わかみこ) [静穏な状況]
28日02〜07時頃に、地震が一時的にやや増加した。

図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
 ◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [活発な状況]

 21日(前期間)の小規模な噴火以降、噴火は観測されていない。
 27日に北海道の協力を得て行った上空からの観測では、ポンマチネシリ山頂の赤沼火口内は噴煙が充満し詳細は不明であったが、火口内の北西から北側にかけて活発な噴煙活動が認められた。噴煙は白色で火口縁上約200mまで上っていた。噴煙には微量の火山灰が含まれていると思われ、火口付近一帯(特に火口北から東側にかけて)の雪面上に火山灰の痕跡が認められた。北西側斜面の噴気活動も依然活発な状態であったが、斜面に沿って複数ある噴気孔のうち最下部に位置する噴気孔では活動の低下がみられた。22日時点(前期間)で北西側斜面の標高約1000mまで流下していた泥流は、その後の積雪に覆われて不明瞭になっており、新たに泥流が発生した痕跡はなかった。
 赤沼火口では、21日の噴火以降活発な噴煙活動が続いており、白色の噴煙が火口縁上200〜500mで推移した。
 火山性地震は、21〜23日(前期間)に1日あたり26〜73回とやや多く観測されたが、24日以降は1日あたり10回前後で推移している。火山性微動は観測されなかった。
 GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動に大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口から白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。期間中、火映は観測されなかった。
 火山性地震の回数は1日あたり37〜81回とやや多い状態で経過した。火山性微動は26日と27日に各1回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


◇ 伊豆東部火山群 [静穏な状況 <期間外の記述を含む>

 30日15時前頃から川奈崎付近で小規模な地震が多発し、ほぼ同じ頃から東伊豆町に設置している体積歪計や伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計に変化が見られている。震源の深さは7〜10km付近で、31日09時(期間外)までの最大地震は31日01時29分及び05時38分(いずれも期間外)に発生したM(マグニチュード)2.5(暫定)であった。31日09時現在、震度1以上の地震は観測されていない。火山性微動及び低周波地震は観測されていない。
 この付近では過去にもしばしば地震活動が活発になっており、最近では1月25〜31日に小規模な地震が多発した(最大M1.1)。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり6〜37回とやや多い状態が継続している。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)←24日に静穏(レベル1)から引き上げ

 24日に行った現地観測では、湯だまり1)の表面温度は73℃2)と前回(3月17日、61℃2))より高くなり、湯だまり内の南西部で高さ1m前後の土砂噴出が1ヶ所観測された。湯だまりの表面温度が70℃以上となったのは昨年11月1日以来、土砂噴出が観測されたのは昨年9月2日以来である。湯だまり量も減少傾向にあり約8割であった(前回約9割)。以上のことから、火山活動はやや活発な状態になっていると判断し、レベルを1(静穏な火山活動)から2(やや活発な火山活動)に引き上げた。
 火山性連続微動は、振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動及び火山性地震の発生状況には特段の変化はみられていない。噴煙の状況、傾斜計やGPSによる地殻変動観測でも特段の変化はみられていない。

1) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
2) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間51回、前期間50回)。火山性微動は観測されなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。今期間は、火口縁を超える噴気は観測されず、火山性地震及び火山性微動は観測されなかった。また、GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


◇ 若尊(わかみこ)  [静穏な状況]

 28日02〜07時頃に地震が一時的にやや増加した。震源は浅く、最大地震のMは1.9(暫定)であったが、変色水等火山活動について特段の変化は報告されていない。
 若尊は、桜島の北東沖、鹿児島湾の奥にある海底カルデラである。カルデラ底では噴気活動が活発で、海面に泡が湧出する現象「たぎり」が観察されることがある。この付近ではこれまでも時々地震の増加が見られている。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等3)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等3)はなし)。噴火で観測された噴煙の最高は27日の火口縁上600m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった。
火山性地震はB型地震4)がやや多い状態で経過した(今期間682回、前期間481回)。火山性微動は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

3) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
4) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波やS波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、P波やS波が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間54回、前期間96回)。火山性微動は観測されなかった(前期間は22日に振幅のやや大きなものが観測された)。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 火山活動は活発な状態にあり、噴火の発生頻度も高い状態が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第13号 24日16:20 活発な火山活動が継続。前日〜当日(15時または16時)の活動状況(噴火はなし)。
火山観測情報第14号 25日16:00
火山観測情報第15号 26日16:00
火山観測情報第16号 27日16:10 活発な火山活動が継続。前日15時〜当日15時の活動状況(噴火はなし)。上空からの観測結果。
火山観測情報第17号 28日16:10 活発な火山活動が継続。前日15時〜当日15時の活動状況(噴火はなし)。
火山観測情報第18号 29日16:00
火山観測情報第19号 30日16:00
浅 間 山 火山観測情報第12号 24日16:00 3月17日〜3月24日15時の活動状況。22日の火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第83〜89号
(1日1回発表)
17日〜23日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第4号 24日15:00 火山活動はやや活発な状態になった(湯だまりの表面温度高い、土砂噴出を観測)。レベルを1から2に引き上げ。


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