2006年 No.12 火山の概況 (平成18年3月17日 〜 平成18年3月23日)

【噴火が観測された火山】

雌阿寒岳 [活発な状況]
21日にポンマチネシリ北西側斜面と山頂赤沼火口で小規模な水蒸気爆発が発生し、山の南東側で微量の降灰があった。北西側斜面ではごく小規模の泥流が発生した。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動は引き続きやや活発で、火山ガスの放出量や火山性地震のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。火山性地震はやや多い状態で経過した。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
15日(期間外)に変色水が確認された。
霧島山(新燃岳) [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
22日に振幅のやや大きな火山性微動が発生した。火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
火山活動は活発な状態にあり、噴火の発生頻度も高い状態が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
 ◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

▲ 雌阿寒岳  [活発な状況]

 21日にポンマチネシリ北西側斜面と山頂赤沼火口で小規模な水蒸気爆発が発生し、山の南東側で微量の降灰があった。北西側斜面ではごく小規模の泥流が発生した。
 21日06時28分に振幅の大きな火山性微動が発生し、振幅は徐々に小さくなりながら同日10時30分まで継続した。気象庁の監視カメ ラ(山頂火口の南南東約16km)による観測では、微動開始時の噴煙の状況は天候不良のため不明であったが、08時10分頃に火口縁上 400mまで上がり南東に流れる灰色の噴煙が観測された。なお、北海道の監視カメラ(山頂火口の西約3.5km)によると、北西側斜面 の噴火は06時37分頃に開始したと推定される。雌阿寒岳で噴火が発生したのは、1998(平成10)年11月9日の小噴火以来である。噴火 に伴う空振は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。火山性地震は、火山性微動発生直後に1時間あ たり20回程度発生したが、その後は1時間あたり数回以下で推移している。
 21〜22日に行った現地調査によると、噴火による微量の降灰が山頂火口の南東方向に分布した(図2)。北海道大学の調査による と、採取した火山灰に新しいマグマ噴出を示す物質は認められず、今回の噴火は小規模な水蒸気爆発であったと推定された。
 21日に陸上自衛隊の協力を得て行った上空からの観測によると、噴火地点はポンマチネシリ山頂の北西側斜面(標高1300m付近)で 、新たに生成された複数の小さな火口と、2つの沢を流れる小規模な泥流が認められた(図3)。22日に北海道の協力を得て行った上 空からの観測では、このうち北側の泥流は、標高1000m付近に達しているのが確認された(幅数m、長さ約1000m)。山頂の赤沼火口 は噴煙が充満しており、火口内を観察することはできなかったが、21日の噴火以降噴煙の多い状態が続いていることから、赤沼火口内 でも噴火したものと推定される。
赤沼火口の噴煙活動は21日の噴火以降活発な状況が続いており、火口上200〜400mで推移している。23日朝に北側斜面に降灰と思われる 痕跡が認められたとの報告があったが、噴煙には微量の火山灰が含まれることもあり、22日夜に風向が南寄りに変わったことにより、風 下にあたる北側の雪面に火山灰の痕跡が認められたものと推定される。
 火山性微動は、上記の他、23日07時19分及び16時54分に振幅の小さなもの(継続時間はそれぞれ約4分と約3分)が観測されたが、噴煙 の状況に変化はみられず、GPSによる地殻変動にも変化はなかった。
 なお、今回の噴火前には、17〜20日に火山性地震が1日あたり4〜41回とやや多い状態で経過し、19日23時台に16回と一時的に増加し た。19日には振幅が小さく継続時間の短い火山性微動が観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いていた。

図2 雌阿寒岳 3月21日噴火の降灰分布
 図2 雌阿寒岳 3月21日噴火の降灰分布
  気象庁の調査による。は降灰観測地点。
  線は推定される降灰の範囲。

図3 雌阿寒岳 ポンマチネシリ北西山腹の噴煙及び泥流
 図3 雌阿寒岳 ポンマチネシリ北西山腹の噴煙及び泥流
  3月21日13時27分頃、北側上空から撮影。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね100mで推移した。噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動に大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。期間中、火映は観測されなかった。
 22日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり200〜600トンと前回(3月15日200〜700トン)と同程度で依然としてやや多い状態が続いている。
 火山性地震はやや多い状態が続き、1日あたり29〜60回で経過した。火山性微動は21日に4回観測された。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 地震活動は、3月10日(前期間)に126回発生した微小なやや低周波地震はこの日をピークに減少傾向にあるが、今期間も1日あたり11〜50回とやや多い状態が続いている。22日02時から04時頃にかけて一時的に地震が増加し、03時15分には空振を伴う低周波地震が発生した1)。地震発生時の噴煙の状況及びその他の観測データに特段の変化はなかった。期間中、火山性微動は観測されなかった。
 火山性地震は前期間の8日以降やや多い状態が続いており、10日に126回と多発した。火山性微動は観測されなかった。

1) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。


● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]

 3月15日(前期間)に海上保安庁が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場から西方へ延びる長さ約6,000m、幅約500mの火山活動によるとみられる青白色変色水が確認された。


● 霧島山(新燃岳)  [やや活発な状況 (レベル2)

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間50回、前期間94回)。火山性微動は観測されなかった。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。21日に火口縁上100mまで上がる噴気が観測された。
 火山性微動は、振幅が小さく継続時間の短いものが17日に2回、20日及び22日に各1回観測された。火山性地震は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等2)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等2)はなし)。噴火で観測された噴煙の最高は20日の火口縁上500m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった。
 火山性地震はB型地震3)がやや多い状態で経過した(今期間481回、前期間320回)。火山性微動は少ない状態で経過した。GPSによる地殻変動観測でも特段の変化はなかった。

2) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
3) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波やS波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、P波やS波が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。



● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 22日14時15分頃、振幅のやや大きな火山性微動が観測された。継続時間は1分未満と短いものであった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では、天候不良のため微動発生前後の山頂の状況は不明であった。上屋久町役場口永良部島出張所によると、火山の状況に特段の変化はなかった。振幅のやや大きな火山性微動が観測されたのは平成15年8月11日以来である。
 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間96回、前期間75回)。火山性微動は、上記の他、少ない状態で経過した。期間中、監視カメラによる観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 火山活動は活発な状態にあり、噴火の発生頻度も高い状態が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 臨時火山情報第1号 21日06:43 06時28分頃から火山性微動を観測。
火山観測情報第5号 21日07:05 火山性微動が継続。上空の風予想及び降灰の可能性。
火山観測情報第6号 21日08:50 ごく小規模な噴火が発生した可能性あり(08時10分頃、灰色の噴煙を観測)。火山性微動は継続中。
火山観測情報第7号 21日10:50 南東山麓で微量の降灰を確認。
火山観測情報第8号 21日12:20 噴火の発生場所は山頂の北西側斜面。降灰調査結果。火山性微動は10時30分頃終了。
火山観測情報第9号 21日16:10 上空からの観測結果(噴火地点、小規模な泥流の確認)。
火山観測情報第10号 22日10:10 21日から22日10時までの活動状況。北大による降灰分析結果。
火山観測情報第11号 22日16:30 上空からの観測結果(泥流の状況、赤沼火口の状況)。降灰調査結果。21日から22日16時までの活動状況。
火山観測情報第12号 23日16:00 22日16時30分から23日15時までの活動状況。
浅 間 山 火山観測情報第11号 17日16:00 3月10日〜3月17日15時の活動状況。15日の火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第76〜82号
(1日1回発表)
17日〜23日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。
口永良部島 火山観測情報第1号 22日16:10 振幅のやや大きな火山性微動が発生した。レベルは2。


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