2006年 No.5 火山の概況 (平成18年1月27日 〜 平成18年2月2日)

【噴火が観測された火山】

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
噴火がほほ連日観測され、2月1日には爆発的噴火が7回観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
30日以降火山性地震が増加し、火山ガスの放出もやや多い状態が続いている。30〜31日に微弱な火映が観測された。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
霧島山(新燃岳) [静穏な状況(レベル1)→やや活発な状況(レベル2)
2月1日に振幅のやや大きな火山性微動が観測された。レベルを1から2に引き上げた。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
比較的静穏な噴火活動が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

【静穏な状態であるが、観測データに変化のあった火山】

伊豆東部火山群 [静穏な状況]
25日(前期間)〜27日未明に伊豆半島東方沖の川奈崎付近で地震がやや増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にある火山
 ◇:静穏な状態にあるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は1月中旬頃からやや多い状態が続いていたが、30日未明からさらに増加し、30日に日回数が168回に達するなど多い状態が続いた(地震の日回数が100回を上回ったのは2005年10月10日以来)。これら地震の増加に際し、傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。また、火山性微動は観測されなかった。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が、30〜31日に観測された(微弱な火映が観測されたのは2005年11月26日以来)。
 30日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,600〜2,800トン(前回1月16日900〜2,000トン)とやや増加し、やや多い状態であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


◇ 伊豆東部火山群  [静穏な状況]

 伊豆半島東方沖の川奈崎付近、深さ約10kmを震源とする微小な地震が25日20時頃(前期間)から27日未明までやや増加したが、その後はほぼ収まった。
 地震の増加に前後して、東伊豆町に設置している体積歪(ひずみ)計や伊東市に設置されている防災科学技術研究所の傾斜計にもわずかな変化がみられたが、地震活動に合わせてそれらの変化も鈍化し収まっている。火山性微動及び低周波地震は観測されなかった。
 この付近では過去にもしばしば地震活動が活発化しているが、今回の活動は規模の小さなものであった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね400mで推移した。
 27日及び30日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,300〜2,200トン(27日)及び2,200〜4,300トン(30日)と依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回1月24日2,300〜3,300トン)。
 2月2日に上空から行った観測2)では、火口内の最高温度は約130℃(赤外熱映像装置3)による)と依然として高温状態が続いている(前回1月20日約130℃)。
 火山性地震は少ない状態が続いており、火山性微動は観測されなかった。

2) 海上自衛隊の協力による。

3) 赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 霧島山(新燃岳)  [静穏な状況(レベル1)→やや活発な状況(レベル2)

 2月1日に継続時間4分の振幅のやや大きな火山性微動が観測された。また、微動の発生直後に、傾斜計(火口の北北東約1kmに設置)でわずかな変化が観測された。以上のことから霧島山(新燃岳)の火山活動はやや活発になっていると判断し、レベルを1(静穏な状況)から2(やや活発な状況)に引き上げた。
 新燃岳付近で振幅のやや大きな火山性微動が観測されたのは2001年10月以来である。火山性微動は2月2日にもやや小さいものが4回観測された。
 地震活動は20日(前期間)から28日までやや多い状態が続いていたが、29日以降は減少している。
 2月2日に行った調査観測では火口付近に降灰等は認められず、噴気等の状況も前回(1月26日)と特段の変化はなかった。なお、期間中、監視カメラ(火口の南約7kmに設置)による観測では火口縁を超える噴気は観測されなかった(27〜31日は悪天のため不明)。

● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口では火口縁を超える噴気が時折観測されるなど、火山活動はやや活発な状態が続いている。27〜28日に火口縁上50〜200mの高さの噴気が観測された。
 火山性微動は時々観測され期間中の回数は5回であったが、いずれも振幅の小さな継続時間の短いものであった。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 比較的静穏な噴火活動が続いているが、今期間、噴火は観測されなかった(前期間は爆発的噴火を1回観測)。
 前期間の24日から続いていたB型地震4)のやや多い状態は31日まで続き、28日には日回数が132回に達した。火山性微動は少ない状態であった。地殻変動には特段の変化はなかった。

4) 火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波、S波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、位相が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震は少なく、火山性微動は観測されなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間36回、前期間55回)。火山性微動は観測されなかった。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 期間中、小規模な噴火がほぼ連日観測され、爆発的噴火が29日に1回、2月1日に7回観測された。
 監視カメラ(御岳の北北東約25kmの中之島に設置)で、28日及び31日にそれぞれ火口縁上800m及び500mまで上がる灰白色の噴煙が観測された。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、27〜28日、30日及び2月1日に火山灰を含む噴煙が200〜1,000mまで上がっているのが確認された。また、2月1日には集落(御岳の南南西約4km)で「ゴーッ」という鳴動5)が聞こえた。
 火山性微動が期間を通して断続的に観測され、時々振幅のやや大きなものが観測された。

5) 火山活動に伴って聞こえる音のことで、「ゴー」という低い音で聞こえることが多く、噴火や活発な噴煙活動などが原因と考えられている。地震動に伴う音響は一般に地鳴りと呼ばれているが、火山周辺ではこれも鳴動と呼ばれることがある。爆発的噴火に伴って聞こえる爆発音は鳴動と区別される。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第4号 27日16:00 1月20日〜1月27日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第27〜33号
(1日1回発表)
27日〜2日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。
霧 島 山 火山観測情報第1号 1日11:50 新燃岳付近で火山性微動が発生、わずかな傾斜変化を観測。新燃岳のレベルを1から2に引き上げた。御鉢のレベルは2。
火山観測情報第2号 2日13:55 やや活発な火山活動が継続。2日に行った調査観測結果。新燃岳のレベルは2。御鉢のレベルも2。


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